創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(645)[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・シリーズ(番外6)


1971年の「ライフ」に載ったDDBの自社広告です。この段階でエイビスがDDBのプレステイジ・アカウントになっていたことがわかります。


プレステイジ・アカウントとは、そのキャンペーンにより、次々と新しいクライアントが向こうからやってくる得意先のことです。


プレステイジ・アカウントの数の多さで、その広告代理店の質が評価されます。



「私にはすばらしい秘密兵器がある---
真実を告げるという---」
N.M.オーバック


ドイル・デーン・バーンバックは22年前、最初のクライアントからこの助言をいただき、現在も服膺しています。
それは夢のような利点をもった秘密兵器です。

まず第一に、うしろめたさがなくなります。
第二には、従ってラルフ・ネイダーも手が出ません。
第三には、生命をもっている製品なら、真実を告げることが最上の広告手段です。

無論、真実を告げることは必ずしも容易ではありません。DDBが扱ったクライアント問題のいくつかは、容易そうに見えました。それでも事実を告げるためには、多大の勇気を必要としました。
当社が現在広告をつくっている車を例にとりましょう。
この車は、当初から、デトロイトに馴れた目には、奇妙な小さな生きものに見えたようです。
実際、かぶと虫のように見えました。
そこで、かぶと虫と呼びました。
当社は車を売りました。
また私どもが「ナンバー2」と自称しているレンタ・カー会社。これもまことに非アメリカ的でした。
消費者に強く印象づけるには、たいてい、最大の---最高の--- といった形容詞を使わなければ不可と思われていました。何かそういうものを---。
私どもは真実を告げることにチャンスを求めました。
当社は車を貸しました。
ローン利用の宣伝をしてはどうかと助言してくれた銀行家もいます。
しかし低利率ローンを宣伝する代わりに、当社は、1400語、2400行の広告をつくり、ローンだと、払い切れなかったとき、どんなことになるか、その不利な点をはっきり書いたのです。
といっても、だれも読んでくれなければ三枚目のコピーでした。ですよね?
しかし訴える力のあるコピーは読まれるものです。
これを読んでくれた人びとは、銀行ローンをおびやかしただけでなく、ウワサはウワサを呼び、このコピーを求める人は10万人にも及びました。
情報も真実の言葉になります。
潜在的消費者に情報を提供することは、宣伝の第一歩といえるでしょう。これは依然として最も重要な仕事にはいります。
信じてもらう、銘記してもらう、時には楽しんでもらう---これが大事です。
それゆえ、ドイル・デーン・バーンバックでは(この広告も含め)広告宣伝には大いに力を入れています。
広告は「ホット」でも「クール」でもなく、誠実一筋を旨としています。頁の上では、ありのままの姿をごらんいただいています。
あなたの製品であり、広告なのです。
たいていの方は、宣伝・広告といえば一抹の疑惑の目をもって見るのがふつうですが、それだけに真実を訴えるのはむずかしいといえるでしょう。
事実、広告は長い間にはイメージ・ダウンさえもたらしうるのです。
私どもも正直いいまして、楽園で商売しているとは夢々考えていません。
世間の目は抜けません。
だから真実を申すのです。


この22年間、当社はこの秘密兵器によって勝利に浴してきました


"LIFE" 1971.11.19


参照2009.04.18『マッドメン』のネタ本---デラ・フェミナ[広告界の殺し屋たち ()←番号クリック



明日は、女性の衣裳哲学を一変させたマリー・クァントが語る。