創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(510)Best 10 ads of VW beetle that chuukyuu chose (2)

蛇足的なお問い合わせ1963年6月15日---chuukyuu 33歳になったばかりのとき---フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』(美術出版社を処女上梓しました。
この本のユニークさをいち早く認めてくださった吉行淳之介さんが、当時、発行部数70万部を超すといわれていた『週刊朝日』に連載中の小説で、2週にわたり、内容をえんえんと解説してくださいました。
その小説は、とうぜん、文庫になっているはずです。罰あたりにも怠慢してい、題名を記録していません。吉行ファンの方、ご存じでしたらお教えください。


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アメリカ産の新種植物


U.S.A.に来て27年(と、600万台近くのVW)たった私たち。とても居心地がよくて、ここに居を構えたくなりました。
そこで、できるかぎり、速く、うまく、VWラビットを作ろうと、ペンシルベヴェイニア州ウエストモーランドに工場を設けました。
これまで私たちはご承知のように、すぐれた車をつくってきました。
これからは、よき企業市民になろうと思います。
ずっと昔のこと、誰かがこんなことをいいました。「輸入車なんか欲しくない。欲しいのはフォルクスワーゲンだ」
それが現実になろうとは---。

A/D ヘルムート・クローン
C/W ボブ・レブンンソン 




A new American plant.


After 27 years (and nearly 6 million VWs) in the U.S.A we feel enough at home here to make a home here.
So we've opened a factory in Westmoreland, Pennsylvania, to make VW Rabbits as fast and as well as we know how.
Over the past years, you've found that we make good products. Over the coming years, you'll find that we make good corporate citizens, too.
Long ago, someone said," I don't want an imported car, I want a Volkswagen."
How wunderbar that it turned out to be true.


A/D Helmut Krone
C/W Robert Levenson


新車を見る前に、古い車をごらんください。


新車を買う時期に、水をさすようなことを言いたくはありませんが。
とにかく、ご家族と連れだって新車を見に行く---セールスマンの立て板に水の弁舌を聞く--−ただの風船を貰う---いい気分なものです。
そうしたにぎやかな雰囲気の中で、ふと、新車を求める気持ちが失われることがあります。
それは、全国各地の廃車捨場が、きのうまでショールームのスターだった自動車で繁盛しているという不愉快な事実を思うときに起こる現象です。
ですから、私たちは、自宅の玄関先に新車を置く前に廃車捨場を見よ、といいたいのです。
VWがどれだけ長持ちするものかはお約束はできませんが、現在1,300万台のVWが走っていることは事実です。
また、寿命が来たからといってなにも積み重ねて捨てることもありません。老朽化したVWは飾っておくだけでも風格があります。
ともあれ、私たちには24年の経験があります。私たちは車の外観より、性能の改善に多くの時間を費やしてきました。
だから、今日までたいしたトラブルもなくこれたのです。


A/D ボブ・クーパーマン
C/W ジョン・ノブル




Before you look at their new ones, look at their old ones.


Now that new car time is upon us, gosh knows, we hate to be the ones to spoil all the fun.
After all, what's more exciting than taking the family down to see the shiny new models or to hear the fast-talking salesmen, or maybe even to pick up a free balloon?
It's just that during all that hoopla and razzle-dazzle, you may not want to pick up one of those exciting new cars.
For the unpleasant fact of the matter is that junkyards throughout the country are doing a thriving business on automobiles that seemingly just yesterday were showroom stars.
Which is why we suggest a trip to the iunkyard before you decide to put a new cor in your own yard.
And why we suggest that that new cor be a Volkswagen.
For while we can't promise you how long one will last, we can tell you that over 13 million Volkswogens are still on the rood.
And when one drops out, even then it's not always destined to be dropped in a pile. For old Volkswagens have a habit of becoming other things: like new dune buggys.
All in all, we owe it all to a decision we made 24 years ago:
To spend very little time making our little car look better. And a great deal of time making it work better.
So far, that one decision has kept us out of a lot of trouble.


A/D Bob Kuperman
C/W John Noble


私たちは、これを変えます。

さあ、私たちが最も力を入れて改良したところを、見てお確かめください。じっと。
あなたの眼のととくかぎりのすべての箇所(そして、とどかないところもすべて)が、くり返し、くり返し、くり返し改良されています。
けれども、私たちは、理由もなしにはフォルクスワーゲンを変えません。そして、その理由というのは、ワーゲンをよりよくすることだけです。
改良するときには、新しい部品が古い年式のものにも使えるように心がけています。
ですから、VWのたくさんの部品は、ある年式のものが別の年式のものにも流用できる、ということがわかっていただけるでしょう。
このことが、VWのほうが、多くの国産車よりも部品が入手しやすいヒミツなのです。
そしてまた、VWのサービスがご存じのとおりによい理由も、そこです。


私たちは、これを変えません。


かぶと虫型についても、同じ原理があてはまります。
私たちは、ある年に、リアのウインドウを大きくして、後ろからくる車がよく見えるようにしました。昨年はテール・ライトを大きくして、後の車にあなたがよく見えるようにしました。
けれど、思いきった変更は何もなし。そして、どのフォルクスワーゲンのボディでも、いままでに売れらたどのVWにも合います。
そして、もしかしてお気づきではないのではないかと思って申し上げるのですが、どのVWも、ほかのVWとよく似ているんです。
これは、車に関することの中では,最もすばらしいことであるかもしれません。ある年には流行って、ほかの年はダメということがないのですから。


A/D ヘルムート・クローン
C/W ボブ・レブンソン





This we change.


Now you can see for yourself where we make most of our changes. Way down deep.
Every part you can see land every port you can't see) has been changed again and again and again.
But we never change the Volkswagen without a reason.
And the only reason is to make it even better.
When we do make a changel we try to make the new port fit older models, too.
So you'll find that many VW parts are interchangeable from one year to the next.
Which is why it's actually easier to get parts for a VW than for ma ny domestic cars.


This we don't.


And why VW service is as good as it is.
The same principle holds good for the beetle shape.
We made the rear window bigger one year so you could see other people better. We made. the tail lights bigger last year so other people could see you better.
But nothing drastic. Any Volkswagen hood still fits any VW ever made. So does any fender.
And, in case you hadn't noticed, every VW still looks like every other VW.
Which may turn out to be the nicest thing of all about the car.
It doesn't go in one year and out the other.


A/D Helmut Krone
C/W Robert Levenson

1960年、カタログ類の担当だったコピーライターのレブンソン氏が、マス・メディア担当に引き上げられて、クローン氏と初めて組んでつくった雑誌広告。




明らかに、フォルクスワーゲンです。


フォルクスワーゲンだとの目星は、すぐつきます。
たとえ、そのかぶと虫スタイルが雪ですっぽり隠れていても。
動きつづけているのが、フォルクスワーゲンなんですよ。
フォルクスワーゲンは、リア・エンジンなので、ほかの車が行きえない氷の丘でも登りきります。フロント・エンジンのものよりも、後車輪にぐっと力がはいるからなんです。
でも、それだけでは問題の半分しか解決しません。
エンジンは後部にあるだけでは十分とはいえません。作動しなければ無意味です。
そこで、私たちはVWに水冷式ではなくて、空冷式エンジンを採用しているのです。不凍液も不要ですし、ラジエータがヒビ割れすることもありません(夏に沸騰する心配もありません)。
冷却水をぬく手間も不要なら、洗浄や錆止めも不要です。
VWは零下の戸外にも駐車でき、雪だまりから這い出ることもできます。実際、あなたがエンジン・キイをまわした瞬間、動きはじめるのです。
もし、あなたが氷や雪の問題など無関係な土地で生活していらっしゃるとしても、VWの尋常でない能力の判定ができる機会はふんだんにあります。
砂地やぬかるみでお試しの程を。




A Volkswagen, obviously.

 
It's easy to spot a Volkswagen.
Even with enough snow on it to hide the beetle shape.
It's the one that keeps moving.
A Volkswagen will even go up icy hills when other cars won't go at all because we put the engine in the back. It gives the rear wheels much better traction.
That's half the problem.
But the engine can't just be there. It has to keep working.
So we cool the VW engine with air, not water. There's no need for anti-freeze, no chance of the block cracking. (No possi. bility of boiling over in summer, either.) And there's no draining. No flushing. No rust.
You can park a VW outdoors in sub-zero weather or dig it out of a snowbank; it's ready to roll as soon as you turn the key.
If you happen to live where ice and snow are no problem, don't think you can't judge the VW's extraordinary abilities.
Just try it in sand or mud.

TV-CM(モノクロ60秒)(1964) 「雪の朝」
ニューヨークADCとカンヌで金賞 




アナ除雪車を運転する人は、雪の中をどうやって除雪車の置場まで
たどりつくのが驚異に満ちた気持ちで考えたことはありませんか?


この人はフォルクスワーゲンを運転しています。


もう驚異ではなくなったでしょう?




10数年後にドイツ語圏のDDBがリメイクしたもの(60秒)



【訳文】
イケメンじゃないけど、性能は非凡。


(または)
不恰好ですが、運んでってくれますよね。


A/D Helmut Krone
C/W Robert Levenson


私たちがかぶと虫を殺すことがあるでしょうか?


とんでもない。
どうしてそんなことができます?
フォルクスワーゲンを世に出したのは、ほかならぬ私たちなのです。何年も何年も育てあげてきたのです。
そのスタイルが世間の物笑いの種になった時も、世界中の人と仲よできるように---と助けてきたのです。そして今や800万の人と友だちになっています。
私たちは、この車は決して流行遅れにならない(ましてやこの世から消えるなんてことは、決してない)と、この人たちに約束しました。
もちろん、かぶと虫が年々変わってきたことは否定しません。でも、ほとんど気づかれないほどの変化です。
1949年以来、私たちはVWに5,000ヶ所に及ぶ改良をほどこしてきましたが、それらはすべて、車の性能の向上と長持ちにつながるものばかりでした。
少数の潔癖家は、私たちが改良のたびにかぶと虫を殺しているって感じているようですが、やむをえなかったのです。
それが必要な時には、かぶと虫を殺さなければならないのです。`これこそが、かぶと虫が死に絶えるのを防ぐ唯一の、そして確実な方法なのですから。


1965年8月6日 『ライフ』


A/D レン・シローイッツ
C/W ボブ・レブンソン




Will we ever kill the bug?


Never.
How could we?
We brought the Volkswagen into theworld, and gave it the best years of our life.
When people laughed at its looks, we helped it make friends allover the world. 8million of them.
And we promised them that this was one car that would never go out of style (much less out of sight).
We won't deny that the bug's been changed. But not so you'd notice.
The 5,OOO-odd changes we've made since 1948 don't do a thing to the VW except make it work better and longer.
A few purists feel we kill the bug each time we improve it. But we have no choice.
We've got to keep killing the bug every chance we get.
That's the only sure way to keep it from dying.


A/D Len Sirowitz
C/W Robert Levenson


20世紀に創られた広告の中で、「最高」との栄誉を与えられている”Think small." のボディ・コピーのバリエイションを5種類、収集しています。別に意図して集めたわけではなく、調べているうちに自然に集まってきたのです。関心を抱きつづけていれば、情報は自然と集まってくる例の一つでしょう。
バリエイションができた驚天動地の経緯は、2009年1月26日クリックにすっぱ抜きました。


今日は、5種類ある”Think small"の中で、『ライフ』誌に掲載されて志ある米国人の心を打ったものを例示します。


小さいことが理想。


私たちの小さな車は、最近では、さほど物珍しくなくなりました。
12人以上もの大学生が押しあいへし、つめこみ競争をすることもなくなりました。
給油所のパート・タイマーがガソリンの注入口を訊いてうろうろすることもなくなりました。
車の外形に目を丸くされることも---ね。
じっさいのところ、私たちの小さな車はリッターあたり13.5km走るなんてことを信じない人も---。
そう、オイルも5クォートじゃなくて5パイントです。
ええ、不凍液もいりません。
タイヤも64,000kmはもちます。
てすから、私たちのエコノミィカーになされば、こういったもろもろは思案の外になるのです。
あ、駐車スペースは狭くてもいけるし、車の保険更新料も少くてすむんです。修理代も安いんです。車を下取りに出して新車になさるときもお得です。
考えどころですよね。


1967年8月6日号 『ライフ』

A/D ヘルムート・クローン
C/W ボブ・レブンソン & ジュリアン・ケーニグ




Think small.


Our little car isn't so much of a novelty any more.
A couple of dozen college kids don't try to squeeze inside it.
The guy at the gas station doesn't ask where the gas goes.
Nobody even stares at our shape.
In fact, some people who drive our little flivver don't even think 32 miles to the gallon is going any great guns.
Or using five pints of oil instead of five quarts.
Or never needing anti-freeze.
Or racking up 40,000 miles on a set of tires.
That's because once you get used to some of our economies, you don't even think about them any more.
Except when you squeeze into a small parking spot. Or renew your small insurance.
Or pay a small repair bill. Or trade in your old VW for a new one.
Think it over.


"Life" August 6th, 1967


A/D Helmut Krone
C/W Robert Levenson


↓このCMに「アッ」と冷や汗がでるほど驚かなかったら、感性検査をおすすめするとか、広告クリエイターをおやめになって別の道へお進みなさいと忠告してあげたいくらい。(言わでもがなの冗談を言ってゴメンナサイ。

TV-CM(30秒) Think small. (クレジット未詳)


アナウンス? あなたなら、どんな台詞をつけますか?




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鑑賞したクリエイターと、見る機会を逸したクリエイターとでは、先へ行ってアイデア起爆剤の貯蔵庫に間違いなく大差がついているはず。


惜しげもなく秘蔵資料を公開してはいますが、DDBからも惜しげもなく教示してもらったからです。(もっともぼくは、いちいち、必ず、丁寧にお礼をし、その方々が来日したときには饗応を欠かさなかったけど---


ベスト10選シリーズは、とりあえず、了。

明日からは、ジェリー・デラ・フェミナ氏『広告界の殺し屋たち』の第8章[頭痛と戦う三つの方法]。


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chuukyuuより】この[10選]は、11月20日のTCC(東京コピーライターズクラブ)でのchuukyuuのスピーチで資料として映写されるものです。スピーチのあと、その会場でCDとして販売されます。1000円前後の実費です。というのはスピーチへの参加は、TCCの会員にかぎられているため、会員以外の社内のクリエイターの方々にもスピーチの概要を知っていただくとともに、クライアントとの歓談のたたき台としていただけると、いささかでも貢献するのでは---と思いついた結果です。


CDは、事前に予約されたご希望者の数しか持参しません。

ご希望の方は、このブログのコメント欄に、その旨、お書き込みください。ハンドル名で結構です。

きょうが締め切るつもりだったのですが、なんと、TCC側が11月20日日のミーティングをアナウンスしていなかったことがわかりました。11月2日ごろアナウンス予定とか。そういうことなら、2日以降に、再度、受付しなおします。すでにお申し込みの方は、再度なさる必要はありません。


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TCCのミーティングに不参加の方、およびTCC会員以外の方で、CDをご希望の向きは、
こちらのページをご覧ください。