[効果的なコピー作法](11-了)
これで、40数年前に書いた『効果的なコピー作法』のすべての章をアップしました。[第12章 銘柄の区別]は、いま流行りの気どり語でいうと「ブランディング」でしょうか。
デレビ・コマーシャルは、ほかの人のほうが、かゆいところに、手がとどくとおもっていました。DDBのコマーシャルを集めたのは、4年ほどあとでした。
で、このあと、ぼくがやったことは、10年ほどかけて、世界中の良質な銘柄製品をつくっている工房と店と責任者を120社ばかり直接取材することでした。さらに7年かけて英王室御用達の170ばかりの銘柄を現地取材してまわりましたが、そのリポートは、本タイトルのブログとはあまり関係がないので、別の機会にでも。
第11章コピーの信頼(了)
(このカラー版は、khalki さんにお手配いただきました。感謝)
年々食べさせなければならない口がふえる。
そのための食糧増産にひと役買っているのは、だれか?
人類のほとんどは今なお貧しく、世界は食糧を増産するのよりも早く人間のほうを増やしています。1970年までに、世界人口はもう5億人も増えていることでしょう。
大地は、その役割りを果たすために助けが必要です。
大地は、より多く生産することを知りつつあります。
ひとつの理由は、15年前の思いきった運動です。第2次大戦のあいだ、米国政府は、化学工業界に食糧増産のために効果の高い化学肥料を開発するよう要請しました。
しかし、そこにはひとつの障害があったのです。農民たちは自己流のやり方に目がありませんでした。どうやったら彼らに化学肥料を買うように説得できたでしょう?
オリンの化学事業部がその仕事にあたったのです。
オリは、新型の化学肥料を開発しただけではありません(普通の肥料の半分のカサで、ずっと施肥しやすい、配達保証つきの粒状燐酸アンモニアです)。
農民たちにその偏見を捨てるように説得をつづけました。
やがて、この新製品アンモーフォスは、彼らが考えていたよりもずっと多くの小麦やトウモロコシや豆の増収に役立つようになりました。
今日においては、オリンは、自由世界のあらゆる国の農民たちに化学肥料とそして事実を売っているのです。
アンモーフォスは手でも、機械でも、飛行機からでも(たとえば水がいっぱいの水田でも)撒かれています。そのあとには増収があります。
そして、お腹を空かした人びとが少なくなるのです。オリンの化学事業部からの---もうひとつのクリエイティブな問題解決です。
(chuukyuu 子どもたちと民族衣装を調達したDDBのスタイリスト部の『アド・エイジ』誌の記事は、明日にでも)
More mouths to feed every year.
Who'll help grow the food to feed them?
Most of the human raCe is still poorly fed, and the world is producing people much faster than food. By 1970, worldpopulation will have zoomed another half billion.
The earth must be helped to do its share.
The earth is learning to produce more, partly because of a bold move fifteen years ago.
During World War II, the U.S. Government urged the chemicals industry to develop a high analysis fertilizer to boost our farm yield.
But there was One hitch. Our farmers were pretty ~sot" in their ways; how could they be persuaded to buy the stuff?
The Chemicals Division of Olin took on the job.
Olin not only developed the new-type fertilizer. (Ammonium Phosphate in a pellet form that practically guaranteed even distribution.
Half the bulk of ordinary fertilizers. Much easier to apply.)
They hit the road to coax the farmers out of their prejudices.
Soon this new Ammo-Phos~ was helping the U.S.
farmer produce more wheat, more corn, more beans per acre than he'd ever thought possible.
Today, Olin is selling the fertilizer--- and the facts--- to farmers almost everywhere in the free world. Ammo-Phos is being applied by hand, by machine, even by airplane (over flooded rice fields, for instance).
Wherever it goes, more food grows. And fewer people go hungry.
Another creative solution to a problem...from the Chemicals Division of Olin.
■ コピーと絵(11-4)
上に掲げておいた、オリンの広告を読んでください。
私は、このコピーを改めて読み返してみて、この章の冒領のシュワプ氏が引いていた詩(?)を思い出したのです。
なぜなのか、考えてみました。
オリンの化学肥料工場というのは、たぷん、大きいハズです。
パイプ類が縦横に設置された工場内を、何本ものレールが走り、長い荷台車が原料や製品を積みこんでは、あわただしく出入りしているハズです。
けれども、コピーでは、そんなことにはまったくふれません。書かれているかぎりでは、お腹をすかした人類が、すこしでも減るようにやっているということと、農民たちの頑迷さとの戦いの結果です。
これが日本のコピーだと、「当社の最近化学設備は全人類に豊かな食卓をお約束するために、日夜休みなく運転をつづけているのです」とくるところでしょう。(笑)
ところが、ロビンソン夫人はそうは書いてはいないのです。
彼女が書いているのほ、アンモ・フオスという燐酸アンモニア系の化学肥料の効きめのよさです。
どれだけ効くかについても説明してはいません。が、読んだかぎりでは、すごく効くように信じてしまいます。
そして、私たちは、書かれていないオリンの化学肥料工場の大きさを想像してしまうのです。
これはいったい、どういうことでしょう?
つまり、信頼してしまうと、人間というものは好意的に、好意的に類推してしまうという傾向をもっているからです。
広告主のなかには、一つの広告のなかに、なにもかも盛りこもうとする人もいます。書かれてあれば安心してしまうのです。
しかし、書かれてあることと、信療されることとは別ものなのです。
全部を記述するよりも、共感されることを書くほうがより大切です。
この章では、私は、企業広告と信顔を扱うようにしました。
もっとも信頼されることを必要とする広告の大きな分野は企業広告ですから、そういったのです。
けれども、考えてみれば、広告というものは、わずかの例外をのぞいて、もともと信頼されることを主目的とはしないまでも、目的のなかにもっているものです。
わずかの例外というのは、印象広告と呼ばれている種類のものです。
コピーライターのエネルギーの大半は、いかにすれば読者に信頼されるコピーが書けるかに注がれているといってもいいでしょう。
「信ジテ下サイ」などと哀願しないで、一読、即座に「ナルホド」と思わす技術です。
そうしたコピーが書けたとしたら、次はアー卜ディレクターとの最後の、つめです。
もう一度、 きょうのオリンの広告を見てください。
「年々食べさせなければならない口がふえる」・・・・世界各国の民族衣裳を身つけた少年少女がズラリと並んでいますね。
たしかに、インドも食糧不足で困っています、アフリカのどこかの国、英国もそうかもしれません。
「ナルホド」です。
イラストレイションが、ただ注意をひき、興味を呼ぶだけで、そこに意味するものがなかったら---あるいはたんにグラフィカルに完ぺきで美しいだけで、そこになんの意味も伝えるものがなかったら---、コピーライターがどんなに「ナルホド」式のコピーを書いても、信頼は増しませんからね。
【資料】
ロジャー・バートンの『広告管理』によると、ニューヨークで最大のある代理店のコピー・ディレクターは、コピーライターとして成功するするための必要な条件を、つぎのように列挙しています。
想像力
思考力
洞察力
文才
論理的分析力
強い販売本能
健全な判断力
抑え難い好奇心
つねに疑問をもつ態度
人間愛
視覚化能力
広い感情の流れ
ユーモアのセンス
広い心
(博報堂出版課訳より)
(chuukyuuのつぶやき---完璧な人間なんて、いやしない。 "Nobody's perfect.")
【オマケもしくは個性の違い】
オリンのクリエイティブ・チームがボブ・ゲイジ氏とフィリス・ロビンソン夫人から、ADがチャーリー・ピッキリーロ、コピーはチャック・コルイ氏に替った時の、同じ事業部を扱った広告。
10億人が飢えるかも知れない1976年---
---白人、黒人、黄色人、褐色人は、それぞれどれほどの数?
統計学者は 10年間で10億、---100万人じゃなく---10億もの人が飢餓で死ぬかもしれないと言っています。
まあ、経験的にいって、食料不足は有色人種の間で起きると盲目的に信じられいます。 しかしですね、それは結局、私たちのすべてに影響することでもあります。
将来、何が来るかを知っていれば、私たちはそれを防ぐためにできるのです。
ほとんどの専門家は、その第一歩は化学肥料を増産することと、それを使う知識を広めることに同意しています。
納得できます。 、第2次世界大戦中、農場生産性を上げる必要があり、オリンは〔アンモ・フォス〕と名づけられた農薬リン酸アンモニウムを開発、小麦、よとうもろこし、大豆など、1エーカーあたりの収穫量を信じられないほど飛躍的に増やすことに成功しまた。
今日の世界規模のより大きな必要性のために、わが社の農事事業部は、〔アンモ・フォス〕と他の高い化学肥料を増産するために、最近、4,500万ドルの拡大計画を完了しました。
もちろん、これが、食糧危機に対処する唯一の方法というものではありません。 しかし、事実はたった今オリンの肥料が、米国の農地1エーカーあたりの生産性を4倍、いやそれ以に高めるのを助けているということです。 さらに、荒地を農地化することも可能なのです。
結局、全世界の平和が危機にひんしているというのに、世界的な飢饉の脅威を無視するのは愚か者のやることでしょう。 そして、いたるところで空腹を満たさなければならない必要があるとき、私たちは、国家的見地から、それを解決しなければならないでしょう。手遅れにならないうちに?
Of the
billion people
who may starve
in 1976,
how many will be White? Black?
Yeliow? Brown?
The statisticians say't at in ten years over a billion not a million, but a billion---people may be dying of hunger.
And judging from experience, Famine will be color-blind a true believer inequality. In one way or another, it will affect every single one of us.
Since we know what's coming, is there anything we can do to prevent it?
Most experts agree that the first step is to greatly increase the production offertilizers and our knowledge of how to use them.
It makes sense. When our farm yield needed boosting during World War Ⅱ, Olin was able to develop an ammonium phosphate fertilizercalled Ammo-Phos ---that helped produce more wheat, more corn and more beans per acre than was ever thought possible.
Because of an even greater need today, we've recently completed a-$45,0O0,000 expansion program in our Agricultural Division to increase our production of Ammo-Phos and other high analysis fertilizers.
Ofcourse, this isn't the only way to deal with famine. But the fact is that right now Olin fertilizers are helping one acre of American farmland do the work of four and more acres. And there's no reason why this can't be done for farmlands everywhere.
After all, with the peace of the entire world at stake, only the foolish would ignore a threat of international famine. And although we, as a nation, may try to feed the hungry everywhere, the day will come when we just can't.
So doesn't it make much more sense to help the hungry learn to feed themselves now, before it's too late?