創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法](12-3)


2年以上、1日も休まずに、つづけています。資料はあるのですが、ネットにあげる技法に未熟で、多くの方に教わりながらつづけてきました。atsushi さん、fuku33 さん、einen さん---。
たとえば、きょうの、ツイストやオリーブのセリフにも色をつけたいのですが、そうする前に、文字組みがそろいません。ロイス氏やケーニグ氏に申しわけないことです。
つぎの仕事が待っているので、このままにして出かけます。


>>[効果的なコピー作法]目次


第12章 銘柄の区別(3)



       
  (「そう言われるだけのことはあるさ。おれの味は、いかすんだから」)
       
       
ウルフシュミッツ。
あなたのオニオンを
ご存じでしょ。
2人でやりましょ。
今宵、
ギブソンを呼んで---
ネェ、ネェ、ネェ、ネェ
ツイストしましょ。
ウルフシュミッツ。
あんたは、その辺の
ウォッカとは違うわ。
いかしてるその味。
2人して
すてきなマティニィをつくらないこと?」
もう、手遅れよ。
みんな。
ウルフシュミッツは、
あのトマトと、
行ってしまったわよ
 


ウルフシュミッツ・ウォッカは、純正でよき時代のウォッカ特有の微妙な味わいを持っています。だから、すてきなギブソンブラディ・マリーなどがつくれるのです。おいしくって---それから---。



       
    ("I've got to admit it. I do have taste.")
       
       
"Wolfschmidt,
you know
your onions,
Let's got together.
Call
Gibson Oh,
Oh,Oh,Oh,Ohh
tonight."
"Let's twist,
Wolfschmidt.
You're not
like those
other vodokas.
You've got taste.
We'll make
beautiful
Martinis
together."
"Don't
look now,
girls.
but Wolfschmidt
just took off
with that
tomato."
 


Wolfschmidt Vodka has the touch of taste that marks genuine old world vodka. For the reason it makes better Gibsons, Bloody Marys, Etc.Delicious Etcetera.

14のテクニック(12-3)

M・デボーは、銘柄間に心理的差異をつけるテクニックを、次の14に分類しています。


(1) 推論的な広告を用いる
(2) 証言を利用する
(3) 共通の製品利点を先に活用する
(4) 製品特質に改めて名をつける
(5) 消費者の悩みに新しい名を創案する
(6) 利点を組みにして独自に主張する
(7) シンボルを用いる
(8) トレード・キャラクターを創造する
(9) 製品を擬人化する
(10) 有益な知識を与える
(l1) 反復を用いる
(12)際立って異なった広告をつくる
(13) パッケージに照明をあてる
(14) ディーラーのサービスを強調する



またしても、ウルフシュミッツになりますが、ケーニグ氏とロイス氏が、この14のテクニックのうちの、(1)と(4)、(9)、(10)、(12)、(13)を用いていることにお気づきでしょうか?
では、その一つ一つを解説しましょう。
(1)の推論的な広告というのは、その広告のなかで、何もかも表現してしまわないで、読者に考えさせ、推論させ、結論をださせる広告のことです。
このウルフシュミッツの例では、ウォッカのことば「ぼくは、その辺の連中とは達うんだからね」、 トマトのことば「あなたって味がいかすんだもの」がそうです。
この、2つのことばは、明瞭ではありません。何かを暗示さすようなことばです。もっともはじめにも書きましたように, ウルフシュミッツのコピーは二重の意味をもっていて、とりようによってはワイセツにもとれるところがありますから、全体的に推論的コピーだともいえます。
このやり方の広告のよさは、完全に表現されていないので、読者が自分の想像力によって、その意味を完成さすところにあります、つまり、読者に広告への参加を求めるわけです。読者を能動的にするわけです。信じさせる力が強くなるといいます。


(4)の製品特質に改めて名をつけるテクニックでは、ウルフシュミッツは、taste(味)ということばをつくり出しています。ふつうは、製品の特色、特長、固有性、製法の特殊成分に学名とは別の新しい名をつけるやり方です。


(9)の擬人化については、一連のウルフシュミッツの広告を見ていただけば、容易におわかりいただけましょうか。
とくに昨日の広告にご注意ください。トマト、オレンジ、オニオンに口説かれたウオツカが、「レモンと約束がある」といって、そっぽを向いていますね。完全な擬人化といえましょう。
しかも、擬人化といっても、ロイス氏は、よくある、製品に手足、目鼻をつける、あの、陳腐なやり方を用いないで、じつにスッキリと擬人化していますね。
いまの流行語でいえは「擬人化のアングラフィック」ということになりましょう。
ところで、この広告が出てからというもの、無生物にピリッとした気のきいたことをいわせる類似広告が続出していますが、どうかと思います。


(12)の特異な広告というテクニックが、擬人化に関連して用いられていますね。


(10)の有益な知識を与えるという点では、一つ一つの広告で、カクテルのつくり方を説明し、この条件を満足させています。


(13)のパッケージに照明をあてることも、このウルフシュミッツの場合は、説明の必要がないでしょう。


こうしてみてきますと、コピーライターの責任範囲でないようなテクニックもあるようにお考えでしょうが、
じつは、コピーライターがコピーだけを書いて、それで終わりということは少なくなっているのです。
もちろん、コピーを書くことはコピーライターの第一のつとめですが、今では、広告のもとになるメッセージ・アイデアをつくることも、またときには視覚面のアイデアを出すことも役目になりつつあります。
ですから、いろいろなテクニックを知っておかなければならないのです。


ただ、誤解のないように申し添えておきますが、コピーライターが視覚面のアイデアを出すといっても、あなたが主導権をにぎるということではありません。主導権はあくまで、アート・ディレクターがもっています。が、メッセージ・アイデアを、その絵が正確に、わかりやすく、新鮮に伝えるかどうかについては、コピーライターにも責任の一半があるのです。要するに、コピーライターとアートディレクターは、互いに協力しあって、アートとコピーを結婚させるものなのです。
ケーニグ氏とロイス氏のようにです。


>>12-4「創造性が解決」に続く

ジョージ・ロイス氏のインタビュー


ジョージ・ロイス氏、
『エスカイヤ(エスクァイア)』誌の表紙を語る(上)(下)


from "1978 Annual of Art Directors Club of New York"
ジョージ・ロイスへの道(123456)


ロイス氏のエッセイ
  >「ぼくは、コンプスに信を置かない」
  >「あなたはマッズォズをおつくりなさい。広告はぼくがつくります。」
  >「すばらしいコピーライターといっしょに働くことができるなら、ぼくだって良い広告がつくれるさ」
  >ぼくの建物コンプレックス
  >マーケティング志向
  >良い広告のための8章
  >セールスのためのアートと---
  >テレビ広告

>>ジョージ・ロイス氏からのメッセージ


>>12-4「創造性が解決」に続く