[アンチ・マジソン街の広告代理店PKL](2)
40年以上も前のリポートです。このプロファイル項目を日本式に改変して、日本で第4位の某広告代理店の営業部に渡し、できるだけ欄を埋めてからクリエイティブ部へさげるシステムを実施しようとしたことがありました。
得意先担当にもよりましたが、たいていのプロファイルは、いつまでも空欄のままでした。
第4章 アカウントマンにも、コピー教育を (4−2)
■ PKLの作業手順
1966年の初冬、2度目のニューヨーク旅行の際にも、私はPKLのレブンソン氏を訪ねました。
このとき、レブンソン氏の肩書きは、ゼネラル・マネジャーに変わっていましたが、オフィスも秘書も同じでしたので、私はあえて、呼称の変更については質問しませんでした。
chuukyuu「PKLが新しいクラアントを引き受けたとき、最初の広告が出るまでに、どれぐらいの日数がかかりますか?」
私はあいさつもそこそこに、要件にはいっていきました。
ただし、このとき私は、ニューヨークの友人のアパートで盗難にあい、テープレコーダを失っていて、彼の言葉を録音することができなかったので、だいたいのところをご紹介すると、次のようになります。
米国の広告界の習慣としては、90日間の準備期間が与えられます。
これは、新しい広告代理店がスタートするときと同じですが、クライアントの希望によってはもっと早くすることもあります。
PKLの例でいえば、ナショナル航空の場合、1週間目にテレビ・コマーシャルを放送したこともありました。
この準備期間の90日は、PKLでは3段階に分けて使われます。
最初の第1段階は、アカウントマンがインフォメーションを集めるための4週間です。
これは、次項に掲げた「マーケティング・プロファイル」を基にして進められ、その方法は、クライアント側から提供されたり、代理店側で新しいものをつけ加えたり、両者のくい違いがあった場合には、代理店側で市場における状態での製品テストからやり直すこともあります。
第2段階は、アカウント・スーパバイザーの仕事で、「マーケティング・プロファイル」を基にして「製品ファクト・ブック」を作成します。
この「ファクト・ブック」は、媒体グループ用とクリエイティブ・グルーブ用の2種類に分かれています。
「ファクト・ブック」作成の段階で、クリエイティブ関係の人との接触が始まります。
第3段階は、いよいよクリエイティブ作業です。
まず、コピー・スーパバイザーとアートディレクターが基本的なアイデアについて、パパート氏かケーニグ氏かロイス氏のうちの一人と打合せをします。
このとき、P、K、Lのどれかからビッグ・アイデアの指示があることもあるそうです。
また、この打合せには、アカウントマンも媒体部からも参加しますが、彼らはインフォメーションを与えると、さっさと部屋を出ていきます。
クリエイティブなアイデアは、早ければ1日、長くても2週間でできたアイデアについて、アカウントマンに諮問されます。調査部も裏づけ資料をつけます。法律的な点、倫理的な問題についても検討されます。
そして、この段階には4週間が与えられています。
できると、P、K、Lのうちの一人と、アカウント・マネジャー、媒体マネジャーの3人がクライアントに説明に行くことになっているそうです。
クライアント側が完全なインフォメーションを提供してくれた場合には、この段階が1週間ですむこともあります。
■ マーケティング・プロファイル
PKLで使っている『マーケティング・プロファイル』の全項目をご紹介しましす。
(原文のほうは、それぞれの項目ごとに2〜3行ずつ記入余白がとってありますが省略).
レブンソン氏は、私にこのプロファイルを示しながら適当に解説を加えてくれました。
それは 項目のすぐ下欄に(※)のマークを入れて合わせてご紹介します。
マーケテイング・プロファイル
●概要
1. 製品
a) 製造
b) 研究
2. マーケット
a) 消費者
b) 製品
3. 販売および流通
4. 広告
5. 販売促進
6. 財政の詳細
I 製品(またはサービス)
(個々の製品またはサービス別に記入すること)
●名称
●種類(なんであるか?)
A)目的(消費者に対してなにをするのか- 消費者の基本的要求のなにを満たすか?)
(※石けんを例にとると、ただ「洗う」だけではいけない。香水入り、
防臭剤入り、肌をやわらかくするローション入り・・・とか記入)
B)価格(消費者に対しての)
(※プレミアム価格、一般価格、低価格)
C)包装(サイズ、量)
D)特徴(具体的な特徴を記すこと)
E)性能(どんなふうに働くか- 消費者が使ってどんな結果が得られるか?)
F)競争品との比較(量的,質的)
価格 包装 特色 性能
銘柄A
銘柄B
銘柄C
銘柄D
銘柄E
A 生産
1. 製造工程(製造の工程を簡単に述べること。特有の工程を強調すること)
(※実際に工場に行ったり,技術者,研究者に会う)
2. 材料(成分,仕入先,品質)
3. 製造場所
4. 製造期間(新しい製品が工場で製造されてから市場に出るまでの期間)
B 研究および開発
1. 研究および開発の施設(自社の研究室、社外の施設、デザイナー)
2, 試験方法(専門パネル、消費者テスト、研究室テスト)
3. 試験結果(上記の結果、マーケテイングや広告に使用できるもの)
(※他の商品との比較、アスピリンより50%強力というように)
4. 販売と市場調査(ニールセン、MRCA、販売店調査、自社セルス・リポートの分析)
II 市場
A)消費者(可能な場合は,購買者,使用者を%で表わすこと)
1. 性別(男、女、両方)
2. 年齢(0-5, 6-12, 13-20, 21-30, 31-40, 41-50, 51-60, 61以上)
3. 社会的経験的状態
a) 収入(高, 中, 低)
b) 職業(もし該当するものがあれば)
4. 地理的条件
a) 全国, 地域, 州
b) 田舎, 都市
5. 購買
a) だれが買うか(早, 女, 子ども)
(※女性が買って男性が使う場合,男性が買って使うのは女性
・例一香水などがあるから注意)
b) 頻度(1年ごと、 1ヶ月ごと、 1週ごと)
(※ 自動串は3年ごと、コーヒーは1週ごと,
タバコは毎日など)
c) 購買の型(考えないで,熟考の上)
(※考えないで買うものには、タバコやクッキーがある.
女性生理用晶は?との私の質問に、レブンソン氏は後者と答えた)
d) 購入場所(店の種類を%で)
(※デパート食料品店,雑貨店など)
6. 使用
a) だれが使うか(家族のだれか)
b) 頻度
C) どういうふうに(いろいろな使用方法があるか)
d) 多く使う使用者、普通量の使用者、少量しか使わない使用者の%
7・消費者市場の規模
a) 免柄別(家庭%、男性%、女性%、子ども%)
b) カテゴリ一別(家庭%、男性%、女性%、子ども%)
B)製品
1. カテゴリー
a) サイズ
1. ユニット
2. 金額
b) 傾向(過去3年,長期) (
2. 銘柄
a) サイズ
1. ユニット
2. 金額
b) 傾向(過去3年,長期)
C) 占有率とその傾向- 競争商品の占有率とその傾声
3. 地理的
a) 全国,地域,州
b) 田舎,都市
4. 季節
a) 月単位の売行き
b) 季節による売行き
(※夏によく売れる,冬によく売れるというふうに)
5. 店のタイプ別による売上げ(それぞれの店のタイプによる売上げの%)
(※雑貨店で%というように)
III 販売および流通
A ) 製造者が直接販売する対象
1 . 種類( 店、ー卸店、ディーラー)
2 . 数
3 . 分布
B ) 流通の経路( たとえば, 卸売店から小売店に行くというように)
1 . 仲買人
2 . 卸し店
3 . ディストリビューター
4 . ディーラー
C) 小売( どこで消費者に売られるか?)
1 . 店あるいはディーラーのタイプ
2 . 分布( 地理的: 全国、 地域、州、田舎、都市)
3 . 大きさ( 大きな店、 中位の店も小さな店)
D)販売力
1 . 数、
( ※ セールスマンの)
2 . 分布
3 . 地域
4 . 販売期間(1回まわるのにどれぐらいかかるか、
年に何回まわか?)
E)販売管理の組織
1 . 訓練(自社で、実地に--- プログラムはあるか)
2 . 監督(地方マネジャー、地域マネジャー)
3 . コミュニケーション(電話、手紙、会合)
4 . 報酬(サラリー、ボーナス、コミッション)
IV 広告情報
A)広告目的(どんな結果が広告から得られると思われるか)
(※ この項はアカウントマンの能力によって特に開きができる)
B)広告戦略
1 . コピー戦略(広告は何を言い,何を見せるか)
2 . 媒体戦略(いつ、どこにうつか)
3 . 競争品とのコピーの比較(主なものについて)
C)広告計画
1 . 予算
2 . 基本的な媒体計画(印刷---雑誌、新開、テレビ--- スポット、番組、ラジオ、屋外、その他)
3. 主な競争品との比較
V 販売促進
A)取引
1. 取引の刺激
a) ディスプレイ・アロアンス
b) 購買アロアンス
c) 無料商品
d) 広告アロアンス
2. 商売の慣行
a) ディスカウント
b) ブラケット価格
c) 特別価格
d) 小売店頭で,製造者がコントロールできる度合
(POP)
B)消費者向け促進
1 . サンプルをつける
2 . クーボンをつける
3 . 値引き
4 . コンテスト
5 . プレミアム
a) 郵送
b) 箱入れ
C) 容器入れ
d) 箱につけて
VI 財政の詳細(秘)
A)売上げ総額
B)原価(製造原価,販売原価)
C)マージン総額
D)投入可能のマーケティング予算額
1) 広告費として投入できる額
2) 販売促進費として投入できる額
3) 合計
E)税引き前利蛋
F)製品単価と利潤構成
・製造原価
・製造側利益
・卸し店渡し価額
・卸し段階での利益
・小売店,ディーラー渡し価格
・小売店の利益
・消費者価格
−−−−以上の各項目が、どの程度に書かれるかは別にして、広告代理店に仕事をまかす場合には、まあ、この程度の情報を渡さないと、よい広告計画がプランできないと考えている米国の商習慣は見習うべきでしょう。
明日は、このプロファイルの記載からビックアップして、クリエイティブと媒体担当へ、それぞれわたされる、PKLの[マーケティング計画書]を紹介。