創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(196)[ビートルの広告](98)


ビートル広告の「レギュラー・レイアウト」というのか「オーソドックス・スタイル」と呼ぶのか、見慣れた上2/3がイラストレイション(写真や絵)、下1/3にヘッドラインとボディコピー---へ戻ります。ヘッドラインの訳は、素直にいくなら「珍しい写真」ですが、ちょっと気張って「滅多な写真」としました。文法的に正しいのかどうか---記憶に残るフレイズのほうがいいとおもったもので。だって、写真が気張っているんですから。 動いているはずの牽引車とビートを停めて、ビルなんかの町並みを流しているんです。こういう写真を「時差ボケ・フォト」と呼ぶんだと、最近、写真集『時差ボケ東京』の著者・村田賢比古さんに教わりました。キャンペーンの場合、あくまでもビートルが主役---主役のほかは、レイアウト---lay-out の out のほうを実現するのが鉄則。しかし、舞台は街中でなければリアリティがありません。そこで、町並みを out する代わりに町並みの時差ボケ。やっぱり、ビートル広告制作チームの考えは深い。



滅多な写真。


こんな写真は滅多に見られるものではありません。私たち自身は一度もこんな写真を撮ったことがないからです。
過去23年間、ほとんどの自動車メーカーが人びとの感触を探りながら、それに対応して車の外観を変えていっているのに、私たちはあなたが頻繁になおさなくてもすむようにと、私たちの小さな車の中味ばかりに手を尽くしてきました。
その結果が、今日の姿---'71年型フォルクスワーゲンには一度も改良されなかった部品は一つとしてありません。
先日、ある自動車会社のトップレベルの重役さんが私たちの代りに私たちの姿勢を要約してくれました。
「今日の消費者は、以前よりも高品質、安い維持費、耐久性に重きを置いていて、スタイリング、パワー、性能には興味を失いつつある」
これがトップレベルの考えること?
こんなことくらい、私たちのトップレベルは1949年から考えてきましたよ。


copywriter:John Noble
art director:BOB kuperman

『U.S. ニューズ&ワールド・リポート』誌 1971年1月14日号
chuukyuuアナウンス】コピー・ブロックに汚れがあったので、クルマの広告へ収録しませんでした。




A rare photo.


You don't see too many pictures like this because we eally never pictured ourselves this way.
For the past 23 years, while just about every other car company has been feeling the pulse of the nation and changing the looks of their carsaccordingly, we've been fixing the insid of our little car just so you wouldn't have to have it fixed so often.
The result is that today, there's not one single part on a '71 Volkswagen that hasn't been improved at least once.
Recently, a top level executive from a big automotive firm summed up our position on the subject for us:
"Consumers today are more interested in quality, low cost of operation and durability, and less interested in styling, power and performance."
That's top level thinkmg?
Our top level thinker have been thinking that way since 1949.


copywriter:John Noble
art director:BOB kuperman


US News and World Report, January 14, 1971