創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法 ( 3-5)

まず、最初にお断りしておきます。きょうの引例広告は、46年前のものです。〔スコッティ〕などというティッシュ・ペーパーが、米国で出回りはじめた時期だったということを頭に置いてからお読みください。50歳以下のお若い方には、想像もつかないでしょう。ご両親でもムリかも。都会育ちのご祖父母なら---。当時、紳士淑女はハンカチへ洟(はな)をかみ、洗たくして遣い続けたものでした。〔スコッティ〕がスウェーデンに売り込みをかけたとき、紙で洟をかんで使い捨てにするなんて---との「もったいない」気分の市民反撃にあい、スコット社は、ティッシュの縁(ふち)をハンカチ状の凹凸をつけて、やっと市場を確保したといわれています。貧しい田舎育ちのぼくなんかも、抵抗があって、箱入りティッシュを身辺に置いたのは30年ほど前からかなあ。




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いまや、すっかりスコット製品ですが、それまでは、
いろんなゼイタクな品々が提供されていたものです。


スコット・ソフト・ウイブとスコッティーズがセットになりました。
Shelburneホテルに滞在した客たちは、満足してAtlantic市から引きあげていきす。このホテルは、完全なサービスとゼイタクな楽しみを客に与えることをモットーにしています。だから客用にスコット・ソフト・ウイブやスコッティーズ紙ハンカチを出すのです。
スコット・ウイブやスコッティーズは、すごく柔かくて吸湿性がすぐれています。ほとんどの客は、家庭でスコット製品を愛用しているので、Shelburneホテルは、家庭を離れたときでも、スコット製品が使えるということを客に知らせます。
これと同じことが、従業員を大切にする企業にも見られます。従業員はとくに意識しているわけではありませんが、よいものと悪いものは識別できます。彼らは、スコット製品のよさを感じています。
スコットの考えはこうです。製品の品質は、家庭用・業務用の別なく、優秀であるべきだ---とそうでなければ、あなたがお求めになるハズがありません。




They offered almost every luxury until they bought Scott products.
Now, they've got them all.


Scott Soft-Weve and Scotties completed the package.
People who stay at the Shelburne Hotel leave Atlantic City feeling they've been coddled. And they have. The Shelburne's dedication is to perfect service and luxurious comfort. That's why all their guests get Scott Soft-Weve luxury service roll and Scotties facial tissues.
Soft-Weve and Scotties happen to be the softest and most absorbent tissue, you could ask for. And since most people prefer Scott, products at home, the Shel burne makes sure those same Scott products are available, away from home. _
This same philosophy holds true in the many companies who understand the value of important, inexpensive, employee benefits. Employees are never demonstrative about tissue. But they know what's good and what isn't.
They appreciate Scott products. It's only because Scott does everything it can to make the world's best paper.
At Scott, we feel this way. Whether our paper is for the home odor industry its quality must be the same: superior. If it isn't, you can't buy it. Scott Paper Company, Philadelphia 13, Pa.

シリーズのテーマ


広告をシリーズで出す場合のテーマと、単独の広告のテーマとは、その扱い方が同じではありません。というのは、こちらがシリーズで出しても、読者が、そのすべての広告をみるとは限らないからです。
たとえは、本章で引用したスコット・ペーパの広告は、1962年に入ってから『ニューヨーカー』誌に載った7点のうちのお点ですが、もしかすると7点よりもっと多くの広告が出稿されているかもしれないのです。私は、かなり熱心な読者のハズですが---。
とにかく、シリーズ広告が統一的印象を与える要素には、媒体使用計画--- 平たくいえば、出稿量と期間という外的要因が大きく影昏するので、単独原稿の場合と同じには扱えないのです。
そうはいっても、制作部門に関する問題が皆無というわけではありません。ビジュアル面での統一感、もその1つですし、コピーの面での、テーマの扱い方のテクニックもあります。
この場合、中心テーマを何にするかが問題になってきます。というのは、スコット・ペーパーの例で、6点の広告に共通しているのは、そのいずれもが「新製品」であるという点と、 「客の悩みを解決した」という事実でしょう。こういった場合、シリーズのテーマとしては、共通する「客の悩みを解決した」というのをすえるべきでしょう。
そういった点から、このスコットの広告を再構成すると、さらに強い印象を与えることになると思います。
ほかにも「スコットの考えはこうです---云々」が共通しているではないかとおっしゃる方があるかもしれません。何回もいいますように、この文句は、どちらかといえばスローガンのようなものです。スローガンというのは、セールズ・フレーズです。いわゆる「売り手のことば」です。ときには、スローガンがテーマとなることもありますが、 「売りことば」という性格上、どうしても訴求力が弱くなりがちで、りっぱな中心テ-マとしては、弱点をもっています。スコットの場合、この文句が、広告全体を支配しているとはみとめられません。ですから、これを中心テーマとは見なせないのです。
しかし、シリーズ広告とはいっても、各個の広告が独力でも十分に力を発揮しなければならないことは、いうまでもありません。

この章、終わり明日からは、DDBの創業者---ビル・バーンバックさんの4A(全米広告代理店協会)での1971年の、すばらしいスピーチをご紹介。

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