創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法 ( 3-3)


このブログは、昨年1月下旬に立ち上げて、ある週を除いて1日も休まずにつづけてきています。積み重ねると、その情報量は、単行本20冊を越えるでしょう。自分でもよく続いたと、あきれています。78歳の老眼・老骨なので、アップに要する時間は1日4〜5時間で、その630日分。最近にアクセスなさった方は、あまりの分量にゲンナリなさっているとおもいますが、計画的に、ゆっくりとさらえてください。逃げませんから。

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J.ユナイタスが、ポールをスコットのエキスパンダ・クラフト紙に蹴りつけました。
紙は、はねかえしました。


ユナイタスの19回のパスを、スコットのエキスパンダ・クラフト紙はねかえしました。ですから、たいていのノックや衝撃も、この紙にはほとんど通じません。
エキスパンダ・クラフト紙は、衝撃を受けるとのぴます。そしてまた、元へもどります。
エキスパンダ・クラフト紙の封筒に入れると、重い物や堅い物も送れます。型くずれなく届きます。
実際、エキスパンダ・クラフト紙はより丈夫な、綱やテープもかけやすい薄い包装用紙になります。たいていの場合なら、エキスパンダ・クラフト紙は、箱やカゴの代用にもなります。
普通のクラフト紙とエキスパンダ・クラフト紙とをくらべてみましょうか? 普通のクラフト紙は、J. ユナイタスのボールの一撃で破れてしまいました。
スコットの考えはこうです、製品の品質は、家庭用・業務用の別なく、優秀であるべきだ---と。そうでなければ、あなたがお求めになるハズがありません。




Johnny Unitas tried to fire this through Scott Expanda-Kraft paper.It bounced back.


Altogether, nineteen Unitas passes bounced off Scott Expanda·Krafte. And for the very same reason most knocks and bumps have little effect on this paper.
Expanda·Kraft stretches with shock. Then recovers.
In Expanda-Kraft bags or envelopes you can ship heavy materials and hard objects. They arrive in shape.
As a matter of fact, Expanda·Kraft makes tougher liners, tape, laminations, wrapping paper. In many cases, Expanda·Kraft replaces the box and the crate.
How does regular kraft compare with Expanda·Kraft paper? Against regular kraft Johnny Unitas knifed the ball through on the first try.
At Scott, we feel this way. Whether our paper is for the home or for industry its quality must be the same: superior. If it isn't, you can't buy it.

Scott Paper Co., Hollingsworth & Whitney Division, Philadelphia 13. Pennsylvania.

テーマの展開

第1章の「ヘッドライン」の中で、私は、こう書いています。


[[ヘッドラインで、その広告テーマをすべて述べてしまうと、読者はそこで了解して、ボディ・コピーを読まないでページをくってしまいます。これは、簡単なようで、そのじつ、非常にやっかいなテクニックなのです。テーマは、その広告のヘッドラインとメイン・イラストレーション、ボディ・コピーの第1節と最終節にくっきりと表わしておかなければ、読者に明確に伝わらないという原理があります。


この文では、中心テーマという用語を使わないで、ただたんに「テーマ」と書いていますが、すでにこれが、今問題にしている「中心テーマ」を指していることは、おわかりいただけたと思います。

では、ここで、具体的に、いかにして中心テーマを広告全体にゆきわたらせ、コピーのはしはしにそれを匂わせるかな検討しましょう。
スコットの(例---一昨日の引用分)を見てください。


新しいスコットの封筒用紙だと、消印まで美しく見えます。


このヘッドラインを読んですぐに感じることは、消印を美しく見せるために、封筒を選ぶ人はあるまい---ということです。
わかりきったことですが、封筒というものは、中の手紙を保護し、内容のヒミツを保ち、しかも差出し人の人柄を表わすような材質・形状・デザインであるべきものです。
したがって、この広告の中心テーマは、「消印が美しく見える」封筒用紙ではないことは、すぐわかります。
「すべての印刷インクがうまくのる」というのが、製品の特質に関係し、かつ、消費者の利益にも結びつく中心テーマです。
「消印が美しく見える」というのは、この中心テーマから導かれる1つの現象です。もちろん、中心テーマに深くかかわる現象ですが---そう思ってこのコピーを読むと、


(1) ヘッドラインでは、中心テーマから導かれた「消印が美しく見える」と訴求して、中心テ-マを暗示すると同時に、読者の注意をひく。
(2) メイン・イラストレーションでは、「消印」が美しく、しかも、あて名の文字も美しい開封したばかりの封筒を出してヘッドラインの訴求と統一させている.
(3) ボディ・コピーの第1節では、ヘッドラインを受けて「消印が糞しく見える」新しいスコットの封筒用紙が、ホワイトウープとゴールデン・クラフトと呼ばれると説明をすすめる。
ここで、「消印」の事象を、カッコに入れて、(消印がハッキリ読みとれる)としている点にご注意ください。早くも、この事象は、中心テーマ「すべての印刷インクがうまくのる」に引き継がれるために、弱められています。
(4) 第2節、第3節では、いよいよ中心テーマがすっかりその姿を現わしてくる。


こうして説明しますと長たらしくなりますが、原文の方では、ほんの6〜7行です。

この例のような集中と排除、これは、明らかにコピー・テクニック上の問題でしょう。
排除というのは、中心テーマに関係のない事象をできるだけ少なくするという意味です。
もちろん、すべての広告が中心テーマだけで構成される例は非常に少ないのです。それは、 コピーライターの責任とは無関係の要素、たとえば、スローガン slogan とかロゴタイプ logo-type とか、価格とか、アドレスとかもあれば、広告主の意向として入りこんでくるものがあるからです。
しかし、私たちとしては、そうしたものをできるだけ排除して、コピーを中心テーマに集中するようにしなければなりません。
ここで、誤解のないように特記しておきますが、排除といっても、スペース上から消してしまうというのではありません。メイン・ストーリーから外して、読者の目の流れの邪魔にならないところへ移すという意味です。
とにかく、中心テーマの展開というのは、反復のテクニックだと考えていただいてもよいでしょう。第1節で---第2節で<最終パラグラフで---(それは、シンフォニーのテーマが、繰り返し、繰り返し現われてくるようにです)。


明日は、[テーマの発見]です
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