(84)フォルクスワーゲン・ステーション・ワゴンの広告(10)
奥方は、なぜ、このワゴンを買うこと承知なさらないのですか?
「まるで、バスみたいじゃない」
「あんまり魅力ないわJ
こんな言葉をよく耳にないますか?
お宅の奥方だけじゃないんです。ステーション・ワゴンがどんなにすばらしい車であるかをご理解いただくのに、手間のかかるご婦人もなかにはいらっしゃいます。
たとえば、そのズングリしたスタイルが、この車の収容力を、普通のワゴンの最も大型のものよりも、うんと大きくしているのです。(しかも全長が4フィートはゆうに短く、そのため、駐車時のイライラもずっと少ないのです)。
奥方は、ラクに荷物が積めるといい、とおっしゃるでしょう。サイド・ドアは約16平方フィートあり、スーパー・マーケットの大きな袋や乳母車、その他がラクに入れられます。
フォルクスワーゲンのステーション・ワゴンは、どんなものでも横積みにしないで運びます。アンチークのタンスを立てたまま、お家まで運ぶこともできます。苗床から木に傷をつけないでもってくることもできます。(幅のあるものだって大丈夫。プレイペンも開いたままで入るでしょう)。
8人以上のボーイ・スカウト団員を、野営道具といっしょにラクラク乗せてやることもできます。
海岸への道すがら、家族に陽光を特別配給することもできます。 (ほかのステーション・ワゴンにサン・ルーフがないのが不思議です)。
暑い日の交通地獄の中でも、ラジェーターが沸騰する心配はぜんぜんありません。ラジエーターもないし、水もないからです。 (フォルクスワーゲンのエンジンは空冷式です)。
奥方が、VWステーション・ワゴンを運転している他のご婦人に会ったとき、会釈をおかわしになるのもいいもんですよ。(ご婦人方は、一種の秘密クラブをおつくりになっいます)。
奥方は、自分が今どこを走っているかを知りたくなるはずです。(VWワゴンは道やカーブで、驚くほど視界が広いのです)。
ここまでお話しても、まだ奥方が納得なさらなかったら、おとなしくあきらめることですね。
(ともかく、ことしはね)。
Why won't your wife let you buy this wagon?
"It looks like bus."
"I wouldn't be caught dead in it."
Do these sound familiar? Your wife is not alone. It is hard to convince some women what sense the VW Station Wagon makes.
Its chunky shape, for instance, allows it to hold more than the biggest conventional wagon. (Yet it is a good four feet shorter, and a lot less exasperating to park.)
She might like the easy way it loads. The side doors give for almost 16 sq ft. for big supermarket bags, a baby carriage, etc.
The Volkswagen Station Wagon does not have to tale anything lying down. She can cart home an antique chest, standing up. Or delicate tree from the nursery. (Wide things, too. It will hold an open playpen.)
She can comfortably pack in eight or more Scouts, with all their cook-out a mystery.)
Even if the traffic is bumper to bumper on hot days, she will not have to worry about the radiator boiling over. There is no condition, no water.(The Volkswagen engine is air cooled.)
She may get a kick out of beeping to the other women who drive VW Station Wagons. (They have a kind of private club.)
Or maybe she likes to see where she is going. (The VW wagon has incredible visibility on hills and curves.)
It these facts don't convince her, why not give up gracefully.
(For this year, anyway.)
【chuukyuu注】この広告が完成するまでの経緯について、C. Challis『Helmut Krone. The Book. Graphic Design and Art Direction (concept, from ans meaning) after advertising's Creative Revolution. 』は、こんなエピソードをバラしている。
アートディレクターのクローン氏とコピー・チーフのレブンソン氏は、このごろの細君族の傾向について話しあっていた。「あなたの奥方は真っ当にやってますか?」ということで、「自分でパンを焼いていますか?」とか、「亭主どのの就業時間が終わるまで会社への電話を控えているか?」等々---といった幾項目かを並べた案をだした。
ところが、VW担当のアカウント・マネジャーのマクネイリー氏が「これはクライアントに示すわけにいいかない」と強固に反対した。
折り合いがつかない場合の常として、3人はバーンバック社長(=当時)の裁決を仰ぐことに。バーンバック社長は、いつものごとく「ともかく、クライアントの見せるんだね」
VWアメリカ社から返ってきた原稿に付された付箋には、「フォルクスワーゲンのことをお忘れなく。どこかで触れられて、オチはVWになるんでしょうね?」
それで書き直されたのがここに掲示した原稿である。
DDBといえどもクリエイティブ・チームとアカウント担当者、クライアントのあいだでは、いつも平和裡にことがすすんでいるわけではない。