創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(225)チャールズ・モス氏とのインタヴュー(了)

Mr. Charles Moss
Wells Rich Greene 社 副社長兼クリエイティブ・ディレクター(当時)


メリー・ウェルズさんは、チャールズ・モス氏の人柄を語って「チャーリーは私にすごく影響を与えた人です。彼は非常にユニークな人間です。私見では、彼は今日の私たちの業界におけるただ一人の最も才能あるクリエイティブな人です。私は心からこのことを信じています」また、「彼はまったく非戦闘的な人間です。たとえば、クリエイティブ・ディレクターとしての彼は、自分ならこうできるという観点から問題や他人の仕事を決して眺めません。彼はすべての人が自力で問題を解決できるかぎり自分の方法でやってくれることを心から望んでいます」 このことは、きょうのモス氏の発言と附合しますね。

すぐれたライターも悪い代理店ではつぶされる。


chuukyuu 「あなたは、DDB、ジャック・ティンカー社、ウェルズ・リッチ・グリーンのような、良い代理店で仕事をしていらっしゃったのはとてもラッキーだとおもいますが、代理店によっては、コピーライターが力量を発揮できないこともあるとお考えですか?」


モス 「良い代理店で仕事をするのは、確かに有利だと思います。なぜなら、あなたがどんなに力量のある人間だったとしても、自分の作品が通らなかつたり、一ベつもされなかったり、クライアントのところまで持っていかれなかったり、広告代理店内に理解されなかったりしたら、あなたはとてもガッカリして、もう何もやりたくなくなってしまうでしょう?
私は、いわゆる大代理店にいて、あまり良い仕事をしていないライタ-やアートディレクターをたくさん見たり聞いたりしています。
そして、カール・アリー社やジャック・ティンカー杜やDDBのような代理店に移ったとたんに突然花が開き、すばらしい仕事をした人をたくさん知っています。ですから、すぐれたライターが悪い代理店でつぶされてしまうということはあると思います。
でも、悪いライターは良い代理店によっても救われないと思いますが(笑)。


chuukyuu 「良いコピーライターは、良いコピーの書き方を他の人に教えられるとお考えですか?」


モス 「そうは思いません。最も優秀なコピーライターの何人かは、教えるほうはまったくダメです。レブンソン氏はすばらしい教師ですが---。
でも私は、便秀なコピーライターで、教えるのはニガ手だという人は多いと思っています。
そのわけは、こういう仕事、すなわち創造的な分野の仕事をしている人は自分のスタイルや仕事のやり方を他人に見せたがらない傾向をもっているからです。私はこれが第一の大きなミステイクだと思っていますが---。
仕事をするのにいちばんいいやり方は、離れていることだと思います。みんなを監督下におきながら、しかも押さえつけないことです」


chuukyuu 「良いコピー・ライティングに関するあなたの哲学をお聞かせください」


モス 「良いアイデア以外にはないと思います。アイデアが強力でなければ、コピーなんか書けっこありませんよ。逆にいえば、強力なアイデアさえあれば、どんな人からも最高の広告を引き出します。なぜって、書くってことはそうむずかしいことじゃあありませんからね。
ですから、あなたがタイプライターの前に坐った時には、自分がしようとしていることを信じること以外に、私にはコピーライティング哲学などありそうもありません。必要なのは、信じすぎるほど信じることです。実際、製品について過信するほどまでに自分に自己催眠をかけることができた時のほうが、懐疑的に見ている時よりもずっと良いものが出てくるようです」


chuukyuu「あなたは、アメリカにおける広告の将来をどうご覧になりますか?」


モス 「テレビがもっともっとクライアントにとって重要になってくるにつれて、大衆に対して、聴き、見る価値のあるものを提供する。しかも、表現しようとするものは、商品のアイデアから引き出したものであるという、そういう考え方になっていくと思います。大衆が見て楽しく、同時にメッセージを強力に伝えるようでなければなりません。
これからこの世界にはいってくる若い人は、いま私たちが米国でやろうとしているフィルムのルネッサンスを経験しなければならないだろうと思います。大衆はフィルムにすごく興味をもっており、それが新しくはいってくる若いライターやアートディレクターにも影響しているのです。彼らは、 このメディアについてのより十分な感覚と、より十分な知識をもつべきであり、その利用法を心得ておくべきでしょう」


chuukyuuのつぶやき】40年後のいまなら、これに、インターネット広告を加えたほうがよさそう。


空中ストリップ第2景


ブラニフ航空が「空中ストリップ第1景をご紹介したとき、直感的な理解力のある方々は、 これこそ長距離飛行の退屈しのぎの名案とお認めくださいました。
私たちの路線はどんどん伸びており、グリーンランドサイゴンほど気候が違う土地へ飛んでいることに気づきました。
ということは、私たちのモデルは、もっと脱ぐ必要があったというわけ---。
そこで私たちは、エミリオ・プッチを再訪して、いままでにないものをつくってほしいと依頼しました。
彼はうまくやりました.
「空中ストリップ第2景」には、おなじみのお気に入りのと一緒に、最新のもの登場します。毛皮のコート、プリントの下着、タイツ、そしてダービー帽。
「第1景」がお好きだった方なら、 これもお気に召しますよ。


上記広告から作られたポストカード

【chuukyuuのお断り】オリジナルはカラー雑誌広告ですが、出版社に貸したまま、返却されていないらしいので、モノクロで掲示します。タイツやダービー帽は、TV-CM[老婦人]で観てください。
>>お気に入りのコマーシャルは「老婦人」と「小僧っ子」
→上掲のポストカードのカラー写真は、Glyph.の柳本氏にご協力いただき「BRANIFF AIRLINE EXPO VISUAL BOOK」より転載させていただきました。ありがとうございます。


【新聞広告】



マチュ・ピッチュの呪い


マチュピチュでは、あなたは招かれざる客です。
インカ族が、未婚女性のかくれ家としてこの町をつくりました。 (これは、原始的なプレイボーイ・クラブのようなものです)。しかも訪問客を寄せつけないように、未知の世界のまっただ中につくったのです。
7,120フィート登ったところに、呪いがあるのです。まず、ジェット機(できれば当社の)でペルーのリマへ飛び,、乗り換えてクスコへ。ここで汽車に乗り、ガタゴトゆられて幾つもの山を越え、廃嘘のふもとにたどりつきます。
こんどはバス。デコボコ道を走るとホテル。
そこから残る数千フィートは歩いて登ります。頂上まで。
ここは、息もつけないほどの場所です。ここは世の中で最も壮観な場所の一つなのです。しかも魅惑的な---。
これで、なぜたくさんの人びとがここにくるかがおわかりになったでしょう。呪いがあるにもかかわらず。

【雑誌広告】



食欲との戦い


ブラニフをご利用いただくお客さまのために、世界的に有名な5人のコックが召集されました。彼らは、果てしなく続いているふやけたトースト戦争に宣戦布告しました。
それから、こげたステーキと冷えたオードブル戦争にも。(これらは、長いこと飛行機のコックを悩せてきたものの幾つかです)。
数ヶ月前から私たちは、最終的な試みとして、機内に彼らの鍋やフライパンを持ち込むことにしました。
「君たちがいた一流のレストランで出していたのと同じくらいおいしい機内食を用意しなさい」と申しつけました。
もちろん、彼らはいいつけどおりにおいしいものをつくりました。




Our battle for men's stomachs.


Five world famous chefs are enlisted in a glorious cause in behalf of Braniff passengers everywhere.
They have declared unlimited War on Soggy Toast.
Also on overdone steak, and cold hors d'oeuvres.
(These are few of the problems that have plagued airline chef for years.)
Months ago we put their pots and pans to the ultimate test.
"Prepare airline food," we said, "that will taste as goog as the food you serve in your own celebrated restaurants."
Not being airline chefs, they didn't know that it couldn't be done.
So, of course, they did.


The Braniff Board of
International Chefs.