創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(217) 新しい生活様式を提案したカーペット

団塊の世代」という。第2次大戦後のベビーブームをつくった世代である。なにも日本だけの現象ではなかった。米国でも、英国でも、ドイツでも生まれた人口の波だった。彼らが家庭を持つころ、新しい生活様式を考案した。カーペットもその一つであった。エリザベス大伯母さんの時代の部屋の中央への置き敷きから、壁から壁へぴっちり敷き詰める方式に変わった。彼らが容易に買える値段で、しかも、ホコリ汚れ日光湿気に強い性能を持っていた。


モンサント・キューメロフト・カーペット
MONSANTO CUMULOFT NYLON FABRIC
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(アナウンス)新家庭を築こうというあの甘い感激は二度と味わえるものではありません。どうやって家の中を整えたらいいかというあの喜び。どれを先に揃え、どれを後まわしにしようかというとまどい。でも、キューメロフト・ナイロン・カーペットを待つことはないのです。これから家庭を築こうという若いカップルにぴったりのお値段です。


過去に生きてるんですか? それとも---


エリザベス大おばさんは、テーブルにドイリーを敷いていました。椅子には背おおいをビンでとめていました。そしてじゅうたんの上にもう1枚じゅうたんを敷いていました。
昔の流行のスタイルだからではありません。彼女の家にあるものはすべて保護の必要があったのです。特に上等のウールのじゅうたんはそうでした。
そのじゅうたんはエレガントでした。美しくて豪華でした。でも掃除するのはやっかいでした。すぐしみがついてしまいました。 とれないしみがいっぱいありました。ですからこうやっておおっているのは当然のことでした。すり切れないように居間をしめきっていました。
エリザベス大おばさんは、拘束の時代に生きていたのです。ウールのじゅうたんは、ぜいたく品でした。いろいろ欠点はありましたが、そのころではウールが最高のものでした。それ以上にいいものはなかったのです。
でも、あなたはエリザベス大おばさんのような生活をしたいのですか? アクリランのアクリリック繊維で織られたパイルのカーペットで生きた方が幸せではないでしょうか? ケムストランドのアクリランです。あなたに、すっきりした、室内に戸外をとり入れ、日光に親しむ生活を満喫していただくためにこの繊維はつくられたのです。
アクリランを玄関まで敷きつめてください。後悔の念などみじんだに感じないはずです。アクリランが日々のよごれに耐えるさまに目をみはるばかり。だれかが何かをこぼしても気になさる必要もありません。
ーそしてアクリランはどのカーペット繊維よりも弾力があり、その鮮明な色はいつまでもあせません。同じときに生まれた他のカーペットが新品に見えなくなったころでも、このカーペットなら依然として新品同様です。
それじゃあ、その代わりにあきらめなくちゃならないことがあるんだ----なんて考えないでください。柄だって、色だって、美しさだってあきらめることなどありません。アクリラン製のカーペットはどこをとってもウールのようにエレガントで豪華です。一度足を踏みいれてみてください。
どうして過去に生きるんです? 大きな赤いAのついたアクリラン・カーペットをおさがしください!
そしてリジーおばさんにさようならしましょう。

【chuukyuu付言】ケムストランド社のアクリラン繊維のアカウントがDDBにきた1952年は、わずか100万ドルの広告予算であったが、9年後には傘下の2次製品メーカーを含めて1,000万ドル--DDB最大のアカウントになっていると、このブランド・グループのアート・スーパバイザーのディック・ロウ副社長は語った。(1961年当時)