Great art director Mr.George Lois
たぶん、1960年代の『アイデア』誌の切り抜きと思われる紙片が手元に残っていた。ロイス氏からもらった4本のTVCFを紹介している。
当時のロイス氏の主張は以下のコメントどおりに実践してみせた貴重な例で、当時ぼくは、広告制作プロダクションを起業、アートディレクターたちになんとかTVCF(コマーシャル・フィルム---当時はそう呼んだ)もあわせて作らせたいと念じていた時期だったので、ロイス氏のTVCFに感動して紹介したものだった。
【ジョージ・ロイス氏のエッセイ(8)】
テレビ広告
(ART Direction誌 1962年10月号)
PKLにおける予算の65%はテレビジョンである。わが社のクリエイティブ・スタッフはかなりの時間をテレビ広告のために使っている。ここにはテレビ・アートディレクターやテレビ・ライターというものはいない。
一つのアカウントの仕事をするアートディレクターやライターは、その媒体が印刷だろうとテレビだろうと,、ラジオだろうと、それに関するあらゆる仕事をすべきだと私たちは考えている。
すぐれた印刷広告をつくることのできるアートディレクターは、きっとすぐれたテレビ広告がつくれる。テレビのほうがずっと表現しやすいからである。動きを使うことができるし、声、音、音楽、その他も使うことができ、適切なポイントをつくる時間も持てる。あなたの販売アイデアを表現し、人びとの注意をひくのは二次元の平面のほうがむずかしい。しかし制作するのはテレビのほうがむずかしい。なぜならそれを仕上げるのに働く非常に多くの人を統制しなければならないからである。
アートディレタ-にとって、必要な技術知識はすぐに覚えられる。また、ナイーブな本能が、今までに試みられたことのないような解決を与えてくれることもたびたびである。
たいていの代理店のテレビ・プロダクションのスタッフは、強い発言権をもったアートディレクターを使わないでコマーシャルを制作しようと主張するときなど、聞いたこともないようなやり方でなんとかごまかしている。
すぐれた印刷キャンペーンはそのまますぐれたテレビ・キャンペーンに直すことができる。またその逆も可能である。テレビと印刷の両方のことを頭においてキャンペーンをつくっているアートディレクターがその可能性を実証している。とくにテレビや24シート・ポスターなど多くの分野における「エキスパート」たちは、ルールや法則や伝統をかさにきている。大部分のテレビ・コマーシャル(それに24シート)を見ても、彼らはあまりよい仕事をしているとはいえない。才能のあるアートディレクターならもっとよい仕事をするはずである。
【ロイス氏の主張を裏づけた、印刷媒体広告とテレビCFの連携】
アレレストの[くしゃみする瓶]
黒バックにアレレストの瓶。
アナ:「猫でくしゃみがでますか?」
瓶:ふるえて「ハックシュン!」
アナ:「アレレストをお飲みなさい」(アナの問いかけのたびに、瓶はくしゃみと震えで答える)
アナ:「花粉でくしゃみがでますか?」
瓶:おおきくふるえて「ハックシュン!」
アナ:「アレレストをお飲みなさい」
アナ:「埃でくしゃみがでますか?」
瓶:飛び上がって「ハ、ハ、ハークシュン!」
アナ:「アレレストをお飲みなさい」
アナ:「枯草熱でくしゃみがでますか?」
瓶:転がるほどふるえて「ハークシュン!」
アナ:「アレレストをお飲みなさい」
アナ:「新しいアレレストは、
アレルギー性の咳、
くしゃみ、
涙目、
ぐずぐず鼻、
くしゃくしゃ目を
鎮めます。
アレルギーのための、
アレルギー専用に
つくられた薬です。
風邪薬でこういうふうに効くものはありません。
瓶:びびったように「ハークシュン!」
アナ:「アレレストをお飲みなさい」
暗い寝室の向こうから、子どもの咳。
妻「あなた、咳をしてるの、
ビリーじゃ、なくって?」
夫「お前、起きてって、
コルデーンを
飲ませてやりな」詳細は、大もの---ジョージ・ロイス氏(3)
『アド・エイジ』誌(1961年2月13日)は、コルデーンのこの10秒CFに「100億万ドルの広告産業が1年間に創りだす数少ないすぐれた広告の中でも、よりすぐれたものの一つ」との賞賛を送っている。