創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(116)ハワード・ゴーセイジ氏とのインタヴュー(了 )

(Mr. Howard Gossage President, Freeman & Gossage inc. Advertising

ニューヨークの高名ではあるが忙しすぎるコピーライターたちが、ゴーセイジ氏のことを、瞳をかがやかせて語るわけは---。


ハワード・ゴーセイジ氏とのインタヴュー (1) (2) (3) (4) (5)

郵便配達人は11,342回もベルを鳴らしつづけた


だからといって、ゴーセイジ氏を頑固な独善者と見るのはあたりません。
「ぼくは、広告の仕事が好きです。本気で言っているんですよ。もととも、円熟した大人のる仕事ではありませんがね。ぼくにとって、広告は、きれいに掃除しなければならいオージン王子の牛小舎のようにすてきなところです。だから好きなのです」


オージン王子の牛小舎とは、20年間掃除されないままになっていたのを、ヘラクレスが水を引いて1日できれいにしてしまったというギリシャ神話にでてくる物語です。つまり、ゴーセイジ氏は、広告界を浄化しようとして、自身をヘラクレスにたとえているのでしょう。
(まあ、オージン王子の牛小舎は地球上---人が集団をつくっているところなら、いたるところにあります。ホワイト・ハウス、永田町、マジソン街、そのほか---)。
たしかに氏は、せっせと掃除をしています。「ぼくは、ぼくのクライアントの商品と、あの清らかな聖なる水とを同じものとは決して考えない」と言いきってクライアントを不安がらせたりしながら。


実をいうと、この原稿を書くまで、ぼくもゴーセイジ氏を少し敬遠していました。けれども氏が送ってくれた3冊目の本、ジェイムス・M・ケインの犯罪小説の題名をもじった『郵便配達人は11,342もベルを鳴らしつづけた』を読んで、いっぺんに氏を身近に感じてしまいました


この本は、彼がイーグル・シャツのために創った『ニューヨーカー』誌への広告「これはあなたのシャツですか? そうだったら、ミス・アフラーバックがあなたにイーグルの襟マークをお送りしますよ」とのヘッドラインに、ボタンダウンの縞シャツの写真を掲示しているだけの広告をめぐって交換された、読者とミス・アフラーバックとの往復書簡を並べた200ページの本です。
それらの手紙の一通一通を走り読みしていて、ぼくの心に浮かんだのは、ゴーセイジ氏の次の言葉でした。


「オーディエンスの反応は、企業そのものを形づくる。広告主は、人びととの接触感がない。だから彼らが話していること、聞いていること、読んでいることを知ることで、広告主の不安は解消される」


それにしても、なんという図々しさ、新鮮さ、型やぶりな本であることか。いまだかつて、一つの広告がまき起こした反応のドキュメントを、このような形で確認したことはありませんでした。
ニューヨークの高名ではあるが忙しすぎるコピーライターたちが、ゴーセイジ氏のことを、瞳をかがやかせて語るわけも、これで合点がいきました。

紙飛行機募集の締め切り延期


[Entry Deadline Extended to Valentinee's Day]
"IF WE KNEW WHAT IT WAS WE WORLD LEARN, IT JUST WOULDNT BE RESARCH, WOULD IT?"

告示;複雑きわまる折り方の人、船便で送ってくるであろう海外からの参加者の熱望に応えて、『サイエンティフィック・アメリカン』誌は、第1回紙飛行機国際試合の参加受付最終日を、2月14日のバレンタイン・デーまで延期(ただし、審査の際、郵送中についたシワに対する情状酌量は、一切なし)(以下略)