創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(27)リヴィ・パンの広告(4)

  Mr. William Taubin

この掲載作品は、ビル・トウビン氏が、1981年にニューヨーク・アートディレクターズ・クラブから[名誉の殿堂]入りを贈られた年の同クラブの年鑑から転載した(オリジナルは多色刷り)。
代表作品としは、すでにご存知の大西洋の写真を破ったELALイスラエル航空の広告や、アメリカン航空、フランス政府観光局、オリンなどの作品にまじってこれもあった。


「リヴィのパンを好きになるのに、ユダヤ人にならなきゃ…なんて法はありません」

ニューヨークのアップステイツ……ハドソン河流域に豪邸をかまえている富豪の子……って想定だろあか。もちろん、ユダヤ系ではない。アングロ・サクソン、カトリック系? 執事なんかもいたりして。

kooさんから、コピー部の責任者のレブンソン氏のコメントとして「バーンバックさんが社名を「Levy’s Real Rye」から「Levy’s Real Jewish Rye」に変えたというエピソードがコメントされました。
ジュウイッシュであることを、堂々と告知することでアイデンティティをはっきり示し、それを商品価値に転化していくのも、すごいアイデアですね。

ぼくの米国におけるジュウイッシュにたいする認識は、戦後すぐに書かれた、ノーマン・メイラーの、ガダルカナル島の血闘に想をえた『裸者と死者』(新潮文庫 山西英一訳 1952.2.10)のユダヤ系兵士ゴールドスタインに対するほかの兵士たちの侮蔑的扱いに影響されています。
それが、戦後、10年足らずで、米国社会は、ユダヤ系米国人に門戸を開き始めたのですね。その潮流を、バーンバックさんはすばやくつかんだといえましょう。