創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(1069)ベスト・セレクション(264)ジャマイカ(1)

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ジャマイカ観光委員会の広告シリーズ(1)


『アド・エイジ』誌1964年2月10日号で、常連寄稿家のひとりであるビル・タイラー氏は「今日の
広告の世界において、もっともすぐれた文章は、たぶん旅の分野におけるそれであろう」と前置きし、
好例としてジャマイカのキャンペーンをあげ、


 「これは非常にすばらしいフォーマットを用いている。ジャマイカというとてつもなくに大きな字が
 誌面の上部に置かれている。これは単に《プランドの明記》であるばかりでなく、アートディレクタ
 ーのボブ・ゲイジのレイアウトにドラマチックな衝撃力を加える。
 ロン・ローゼンフェルドのコピーは、よく練られたもので、市場の願望を非常に鋭く反映している」


アメリカにおける旅行・観光市場に対する一般的な解説は、フランス政府観光局のシリーズの項にゆずるとして、ここでは、DDBのクリエイティブ・チームが具体的にどのように取材をしたかを紹介します。
ぼくはニューヨークで、このキャンペーンのコピーライターであるロンに、いくつかの質問を試みました。ロンはジャマイカの広告をつくるためにボブ・ゲイジ氏、写真家のアーウィット氏とともに3回、独りで1回この島を訪ね、それぞれ2週間ぐらいずつ滞在したといいます。そして政府の関係者に一般旅行者が行かないようなところを案内してもらい、それでいろいろ貴重な情報を得ることができたと語ってくれました。またジャマイカの記者、小説家、医者といったいろんな職業の人に旅行者としてではなく、友人として会い、これによっても有益な知識を得たといいます。


(明日アップの)ジャマイカ美人をどうして発見したかという問いには、「ボブだ。3人で歩いていたと
き、シルクを売っている店でボブが見つけた」と答えてくれました。
ロンが一般旅行者がふつうは行かないようなところへ足を伸ばしたからといって、けっして驚くことはあ
りません。DDBのチームはジャマイカを売り出すにあたって、海や日光を売ろうとは考えなかったから
です。そいつはナッソウ、バーミューダにまかせておこうと考えていたからです。DDBチームは、よそ
の土地にはなくてジャマイカだけにあるものを、DDBのいつものやり方で求め、そしてそれを強調した
のです。その結果、1965年には対前年比伸び率が39.6%と世界一の数字を示しました。
1966年には38万5,000人のアメリカ人を誘致する予定で、フランスや英国のそれが50万人前後である
のに比べると、小さな島にしては出色の成績でしょう。
(拙著『繁栄を確約する広告代理店DDB』ブレーン別冊 1966.10.01)




闇に乗じて、
町の独り寝の独身男が
丘上にひっそりと建っている
ブルー・マウンテン旅籠へ
忍びこんだものでした。
夕餉を摂るためではありませんよ。


ブルーマウンテン旅籠は不正な、まさに不当な営業をしていたのです。
何年ものあいだ、女将はキングストンの売春宿の女王でした。
優美で退廃の情景を想像できますか。巨木のあいだのかすんだような登り道には、水晶の
ように清らかな水が流れ、その周辺にはシダが茂り、極彩色の野鳥の絶えない合唱にあわ
せて、熱帯蝶が華麗な羽を自慢するみたいに舞っていたのでした。
女性の館が上品な旅亭へ衣替えした時、ここの住民の一部にぶつぶつと不満声があがった
のも故なしといえましょう(改修に彼女たちの反対はありませんでした。ジャマイカの町
の人たちはいまでもそこに登っています。ありようは晩餐のためにですが)。
かつてのこの大邸宅では、懐が許せばシャトーブリアンやムートン・ロスチャイルド'47年
を注文できます。もっとも朝食つきの1泊だと10ドルであがります。
キングストンの周辺の別の山小屋旅籠(カーサ・モンテ)は、イタリア=ジャマイカ新様式と
いうことで人気の建築物です。6.50ドルですばらしい景色があなたの目をたのしませます。
ですから、夢見る派の旅行者は、ジャマイカラム酒以上だと喜んでいます --- 全くその
とおり、いいところ衝いてますね。(略)
以前には不正な旅館もあったので現地の情報入手のためにも、信用のおける旅行代理店か
ジャマイカ観光委員会へのお問い合わせをおすすめします。2A 五番街 630、N.Y.C.


C/W ロナルド(ロン)・ローゼンフェルド Ronald(Ron) Rosenfeld
A/D ロバート(ボブ)・ゲイジ Robert(Bob) Gage
Foto エリオット・アーウィット Elliott Erwitt
"The New Yorker" 1963.11.02




Under cover of darkness,
the town's lonely bachelors
climbed to secluded inn on Blue Mountain.
And it wasn't for dinner.


Blue Mountain Inn has led a wicked, wicked life. For years, she was the queen of Kingston's bordellos. Can you imagine a more beautiful location? A thousand feet up a mist-touched mouutain, on the banks of a crystal stream, surrounded by giant tree ferns, climbing vines and gorgeously plumed tropical birds.
No wonder there were mumblings of discontent among certain segments of th e population when the lady was rehabilitated into all elegant inn. (Even reformed, she's lost none of her appeal. Jamaicans still climb there. But, now, for dinner.)
In this once-scandalous stone and timber great house. you can now order Chateaubriand and Mouton Roth-schild, '47. These days, a plump bed costs yuu $10, including breakfast. On another mountain near Kingston, is Casa Monte, of all architectural style best described as neo-Italian-Jamaican. $6.50 buys you a room with a view so fantastic visitors have been known to cap their bottles of Jamaican rum --- just so they wouldn't miss anything.
At the othe r extreme of the island is a hotel room (if yuo can call something that's 50' x 35' a "room") that's at the other extreme of price. It's the Honeymoon Suite at the Jamaica Inn in Ocho Rios. $100 a day for two, including your own private swimming pool . At that price, you may want to leave here under cover of darkness.
For information about formerly wicked inns, $6.50 views and $100 a day suites, see your travel agent orJamaica Tourist Board, Dept. 2A, 630 Fifth Ave., N.Y.C.




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