創造と環境

コピーライター西尾忠久の1960年代を中心としたアメリカ広告のアーカイブ

(569)「お金をケチっちゃ、良いものは創れない」

例によって、ぼんやりと『DDBニュース』1974年6月号(創業25周年号)をめくっていて、「あ。ブイトーニ・スパゲティのテレビ・コマーシャル(カラー)は、ピコーロ氏とアン・ファイン女史の作品だったんだ!」と膝を打ちました。
フィルムはどっかへ行っちまって手元にありません。でも、シーンは強烈におぼえています。


イタリアの伯爵家らしい優雅な部屋。
ブイトーニ伯爵家が経営するスパゲティ工場の主任があらわれ、伯爵に新製品をみせる。
「伯爵。すばらしいスパゲティができました」
「ふむ」
ポキンと折って折れ口の輝きをたしかめる。
「ダイヤモンドのように輝いていないと、歯ごたえがよくない」
「輸入のデューラム小麦の最高品質のものばかり使いましたから、コトスが倍かかりました」
「いいものは、お金をケチってちゃ、創れない」

ピコーロ氏のコメント---

イタリア系移民の子である私には、ブイトーニは心の故里(ふるさと)みたいなものでした。ですから、あのスパゲティのコマーシャルにはとても愛着を感じています。
コピーライターのキャロル・アン・ファインとのコンビで、スパゲティ、冷凍ヒザ、ソースを担当しましたが、スパゲティにはもっとも手こずりました。
一般市販品の倍の値段だったからです。
それで、伯爵のスパゲティということで押しとおすことにしたんです。
伯爵のモデルと優雅な部屋がニューヨークでは見つからなかったので、イタリアへ飛びました。
ふさわしいタレントは見つかったのですが、英語がぜんぜんだったのです。
450回も試し撮りして、やっと「Good,Good.」と「Fantastic!」だけがO.K.
「コストをケチっては、ブイトーニのような良さはだせない」はスーパーで入れました。


町中、イタリア語なまりの「Good,Good,Fantastic!」が流行し、スパゲテイもよく売れました。私たちは勝ったのです。


質問どこに「折れ口がダイヤのように輝いていないと---」とか「デューラム小麦100パーセントのセリフがあるの?」
えーと、chuukyuuが、ブイトーニ仕入れた知識でして---。つまり、それほど、コマーシャルに入れあげたってわけ。


1シーンだけの写真ですが、これで、30秒CMを想像なさってください。あなたなら、どう創ります?

キャロル・アン・ファインさんとの和気藹藹のインタビュー