創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(546)Some Favorite Ads, till 1969 (4)


下のコンテンツとは関係のない、1974年6月号『DDB NEWS』の表紙です。しいていうと、下のコンテンツはDDB創業20周年のときのもの、上の表紙は25周年記念号、左の額からドイル氏、デーン氏、バーンバック氏。

下のコンテンツではほとんど創業時にいたプロタス女史、パーカー夫人、そしてグリーン夫人の女性トリオ。この上に、ロビンソン夫人とメリー・ウェルズ夫人がいたのですが、メリーさんは早々に退社したあとのことは、彼女の項で。


Mis Judy Protas


長年やっていたクライアントのオーバックスから離れて、これまでの仕事を客観視することができるようになりました。
子どもものをやるときには、オーバックスの基本姿勢にユーモアをつけくわえたようにおもいます。
もちろん、オーバックスの広告といえば、猫がホルダーでタバコを吸っているのが有名ですが、私は、アートディレクターのチャーリー・ピッキリーロと組んで創ったこれを、DDB在勤19年における自選作としました。
ほんとうのところをいうと、「リヴィのライ麦パンを好きになるのに。ユダヤ教徒にならなきゃって法はありません」と、どっちにしようかと悩みましたが、けっきょく、不機嫌な顔をした子どもの、こっちに決めました。


遺憾ながら、オーバックスに学校用晶のすべてが揃ったことをお知らせします。


恐らくあなたはいい感じで開けないでしょうね。 でも、事実は事実ですからね。スラックスだって、 ジーパンだって必要でしょう。 ラグビー・シャツ、 トリミングつきの反コート、それにイタリー製のモへアのセーターもお望みでしょう。
もしあなたに姉妹がおありなら、彼女はAラインのコートや人工毛皮のものとか、むぎわら帽、それから冬のスキールックも必要でしょう。オーバックには、そのすべてが、美しい仕上げで豊富に揃っています。しかも安く、今学期が終わるまでに必要なもの全部をオーバックスでまかなうことができるのです。
どうぞオーバックスにいらしてくださいゆっくり選んでください。
私たちはあなたを幸せにすることはできないかもしれませんが、こういった洋服であなたがカッコよく見えるようお助けできます。


A/dのピッキリーロ氏も、数年後の自選作にこの作品を自選し、ただ情報を伝えるだけの広告が多い中、プロタスさんは読み手と感情を共有するようなコピーを心がけていたと言い、これは、新学期が始まることへの恐れと、新しい装いでクラスメートに再会できる期待感をうまく表現しており、これを創れたことは幸せだったと。


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Mrs.Lore Parker


DDB創業2年目、最初につくった作品です。
アートディレクターは、訊いて腰をぬかさないでね---あの、ヘルムート・クローンさん。
新聞1コラム分のスペースでした。
2ブロックの、「そうじゃなくって?」基本コピー。
ところが、バートン担当のアカウントマンですごく切れる若者がいたの。名前? ニール・シュレッキンジャーっていったわね。
彼は、これはすばらしい広告だから、もっと大きいスペースでうつべきだってかんがえて、クライアントを説得して、1ページ広告にしてしまったんです。ブランデー漬けチョコの箱を新聞一面いっぱいに置いたんですから、それは迫力がありました。しかも、反復掲載し、基本形にしてしまったってわけ。
まあ、いまでは、お義理にも、革命的とはいえませんね。それだけ自分が、クリエイターとして成長してるってことだとおもいます。


A/D Helmut Krone


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Mrs. Paula Green


この広告はあやうく、ボツになるところだったんですよ。
クライアント側も、DDB社内でも、反対されました。
鋭いトゲがあるんですものね。
かわいげもないでしょ。
自社の恥部をわざわざ広告で世間に告げる、ってのも変なものですよね。
調査でもいい結果はでませんでした。
でも、バーンパックさんは、クライアントを説得してくださいました。
クライアントも、最後には受け入れる勇気をしるしました。
結果として、DDBの歴史の1ページをかざりましたよね。
まあ、もし、ボツになっていたら、自選作なんてお声は、
私にはかからなかっただろうってことだけははっきりしています。


エイビスは、業界で2位のレンタカーです。
それなのに、お使いいただきたい、
その理由(わけ)は?


私たちは一所懸命にやります。
(だれでも、最高でないときはそうすべきでしょう)。
私たちは、汚れたままの灰皿をがまんできないのです。
満タンにしてない燃料タンクも、いかれたワイパーも、洗車してない車も、
山欠けタイヤも、調整できないシート、ヒートしないヒーター、霜がとれないデフロスタ…
そんな車はお渡しできません。
はっきりいって、私たちが一所懸命にやっているのは、すばらしくなるためです。(省略)
この次、私たちの車をお使いください。
すいていることでもありますし、ね。


A/D Helmut Krone