創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(408)バーンバックさん、25周年を語る(2)


バーンバックさん(写真)の発言で、胸を衝かれるのは、DDBにとってトラブルの多いクライアントは断るしかない、というひと言です。この発言を支えているのは、DDBが成長するにともない、広告予算の引き受け水準も上がるが、まだ小さい時に引き受けたクライアントも、よほどのトラブルがないかぎり、DDB側から断ったことはない---という実績です。

クリエイティブという仕事は、単なるビジネスではない---という信念のもとに、トラブルで心が傷つきやすいクリエイターを護っているのです。もちろん、クリエイターにも非を認める謙虚さがあっての上のことだとおもいますが。



バーンバックさんが引退なさったら、DDBのその雰囲気が違ったものになるとはお思いになりませんか?


バーンバック:そうは思いません。私が思うに、クリエイティブ部門は、才能豊かなボブ・レブンソン、マーヴィン・ホーニング、マイク・マンガーノ、ジョン・ノブルといった人材に引きつがれています。こんなに人材がそろっている広告代理店がほかにありましょうか。さらに言えば、ボブ・ゲイジ、フィリス・ロビンソンからも学べるのですよ。
デイブ・ライダー、ヘルムート・クローン、レスター・フェルドマン、ジャック・ディロン、バート・スタインハウザー---多士済々、つきることなくいるではないですか。


:バーンパックさんは、若くて、すぐれた才能にめぐまれた人たちが、将来ともに、DDBの名声を慕って途絶えることなく集まってくるし、彼らを教える人にもこと欠かないとお考えなんですね。


バーンバック:はい、DDBはそれに応えられると思っています。というのも、私たちは、新鮮なやり方を求めることを奨励していますし、彼らの才能が拡散しなで、正しく発揮されるようとの注意も怠ってはいません。
「何を言うかがわかったら、次はいかによりよく言うかを考ええよ」と言ったのは、たしか、バーナード・ショーでしたよね。
これにつけくわえると、何を言うかが決まったら、私たちは、それをどう表現するかを探求するということです。
私は、品のない表現はとりません。感度が高くセンスのいい表現は、広告の効果を高めます。もちろん、品がよくないのに効果のある広告も存在することは否定しませんがね。
しかしです---あなたが創った広告が生々としていて、製品を売る力があって、しかもハイセンスでもあるなら、あなたは達成感につつまれますよね。さらに人びととはその会社が好きになります。
つまり、すぐれたセンスは、製品を買う気にさせ、会社のパブリック・リレイションにも資するでしょう。 そんなすばらいし機会を逃がしてはいけません。
その広告は、まわりのクリエイターにもよい影響をおよぼしますし、クリエイター自身は、周囲の称賛と、仲間内や業界で賞も与えられます。受賞は、クリエイターに自信と誇りが増えますから、私は、そういった機会にすすんで参加するようにすすめています。


:お考えに合わないものって、ありますか?


バーンバック:時として、ここで仕事をしていても、仕事を通じて成長していなくて、また受け持っている仕事も彼に合っていないように見える人がいることがあります。人間としては、いい人なんですがねえ。 それでも、しばらくは観察するんですが、結局、別の会社で活躍したほうが彼のためにはいい、と判断せざるをえないときですね。そんな決定をしなければならないときには、気が重くなります。

もう一つは、これはぜったいにDDBにとっては正しくないとわかるようになってきた大口のクライアント---しょっちゅうトラプリ、先方と考えが一致しないことがあまり重なってきたとしませんか。これは、もう、アカウントを辞退するしかクリエイターを守ることができないと判断をくだす時ですね。 まあ、それで扱い高が減少し、社としては、何人かに辞めてもらわざるをえません。これって、経営者しとては責任重大です。私が避けたいとおもっていることの2つ目ものがこれです。


>>(了)




【参照】お時間があったら、週末の好個の読みもの---文字または数字をクリック


ボブ・レブンソン氏とのインタビュー
(123追補)


ジョン・ノブル氏とのインタビュー
(1234了)


フィリス・ロビンソン夫人とのインタビュー
(12345678了)
「世界中の女性コピーライターへ」
"Advertising Age" 1968年7月15日号
インタビュアー:John Revett
「コピーライター栄誉の殿堂」入りを、コピーチーフで1968年に初めて受賞したときの一問一答です。


ジャック・ディロン氏とのインタビュー
(1234567了)


デビッド・ライダー氏とのインタビュー
(12)





ロバート(ボブ)・ゲイジ氏「私は、広告が好きだ」


ヘルムート・クローン氏とのインタビュー
「レイアウトを語る」(123)

>>1963年のニューヨーク・アートディレクターズ・クラブでのスピーチ


ビル・トウビン氏のスピーチ
「あまりにも無秩序な」(1234了)


>>(了)