創造と環境

コピーライター西尾忠久の1960年代を中心としたアメリカ広告のアーカイブ

(133)レオン・メドウ氏とのインタヴュー(1)


Mr. Leon Meadow
Vice-President, Administrator Copy Dept. DDB


この人がコピー部のアドミニストレイターとして人望が高いわけは、会ってみるとすくにわかる。年齢と経験の深さからくる温和な雰囲気が、相手をなごやかにするのである。しかし、ユーモラスな口調の端々から鋭い観察力が匂う。いまのところ、日本にはいないタイプのコピーライターである。

コピーライターと小説を書く時の違い


DDBの副社長であり、コピー部の管理部長であるメドウ氏の話を聞くのは、これが3回目です。
最初は、1966年の春にDDBを訪問した時に偶然、2回目はその年の秋にパーカーさんのお宅でのパーティでメドウ夫人と一緒の時でした。その後、ニコンの広角レンズを頼まれたりして、何回かの文通がありました。
ぼくは、メドウ氏が作家からコピーライターになったという点に興味を覚えました。コピーライターから作家になったという例は日本にも幾つかあったのです。
その逆の例は、東京コピーライターズクラブの初代会長・上野壮夫(たけお)さんしか、身近には知りませんでしたから。


chuukyuuDDBにお入りになった時のことを話してください。いつだったのですか?」


メドウ「1956年でした。創業6年目でした」


chuukyuu「当時のDDBの規模は?」


メドウ「年の扱い高が2,000万ドル。ですから、その当時から見ると10年後のいまは10倍以上に発展しといます」


chuukyuu「1956年当時、コピーライターは何人ぐらいいましたか?」


メドウ「私が入った時には、ライターは10人ぐらい---10人以上はいなかったですね」


chuukyuu「作家をやめて、そのままDDBへお入りになったのですか?それとも、他の広告代理店を経験されましたか?」


メドウ「ええ、その前にいろいろな代理店を渡って歩きました、と同時に、いわゆるストーリー・ライティングということもいろいろやっていたんです。『ニューヨーカー』誌にいくつもの短いストーリーを書きましたし、それから、ラジオ・テレビにいろんな短いスクリプトを書いていました」


chuukyuuDDBをお選びになったの理由は?」


メドウ「もちろん、なぜ私がDDBに入ったかという理由は大いにありましたよ。というのは、DDBはその当時、独立から満5年---足かけでいうともうちょっと経っていたかもしれませんが、すでに非常な名声をかち得ていました。たいへんに進歩的な、新しい考え方を持った広告会社だという---。
当時においては---いや、今日でもそうですけれども、この会社のコピーのスタッフの1人になるということは、非常に名誉だったのです」


chuukyuu「作家時代と比べて、DDBでコピーライターとしての生活は、どう違いますか? どちらも書くという仕事ですが---」


メドウ「そうですね、いまこのインタヴューではちょっとお話しがそれることになりますので、普通のストーリー・ライターと、コピー・ライティングとの比較の細かい点にまではここでは触れないことにしますが、しかし、ストーリー・ライティング、スクリプト・ライティング、それからコピー・ライティングなど、すべてのプロフェショナルなライティングというものが一様に要求する事柄は、ともかく自己の能力と、それから規律ということです。とくにそこに要求される技術に対する自信と規律、ということではみな同じですね」


chuukyuu「一人で書く作家時代と、アートディレクターと話し合うコピーライターの書き方とか、自由さの違いについてはいかがですか?」


メドウ「もちろん、ご質問のように、一人で書く作家と他の人の協力を必要とする共同作業であるコピーライティングとは、明らかにいささか違いがあります。
しかし、たとえばラジオの場合、テレビのも、クリエイティブなプロセスではまったく独自の段階だだされるのですが、結果的にはディレクターなどとの協力があって完成されるんですから、やはりそれも共同作業ということになりますね。
それからコピーライティングの場合、そのテキストを書く段階ではやっぱり一人の仕事です。そうして結局そのあとに共同作業ということになります。やはり、そこにはコンセプトが必要であり、広告のコンセプトに基づいてつくるのですが、ここDDBでは、やっぱりチーム・ワークが必要になってきて、必ずチームとしてやるシステムになっているんです」

メドウ氏が担当したベター・ヴィジョン協会のキャンペーンの広告の1例


【1ページの紙面の中央に、細かな文字組みで】
この広告を手に、腕いっぱいに離して読んでくてください。ハッキリ読めましたか?
読めたとしても安心してしまわないで。細かい字が読めることと視力が完全だという
ことは別問題なのです。あなたの周囲にはひろびろとした世界がひろがっています。
ただ、資格のある検眼士だけが、あなたの視力は完全だと断言できます。
いますぐ、検眼をなさってください。


Hold this at arm's length. Dose it appear blurred? Even if you can readit clearly, don't jump to anyconclusions. There's far more to good vision than reading the fine print. There's the big wide world around you. Only a qualified eye-care practitioner can make sure you're seeing it all as well as you should be. So see him soon. Better Vision Institute


(つづく)


【参考】
ベター・ヴィジョン協会の広告 Advertisemenrts for Better Vision Institute
(1) (追補)