創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(53)ジョン・ノブル氏とのインタヴュー(2)

    Mr. John Noble
    Vice-President, Copy supervisor DDB Inc.
    (DDB 副社長兼コピースーパバイザー)

西ドイツでのVW工場の印象---すばらしいの一語

chuukyuuVWの広告のクリエイティブ・チームに入ってから、あなたのクリエイティブ活動に役立つように、西ドイツのVW工場のどれかを見学しましたか?」
ノブル「もちろん行きましたよ。それは、ぼくがしなければならない、いちばん最初の仕事でした。とても感動しました。
ぼくは、デトロイトで働いていたときに、米国車がいかにしてつくられるかを目のあたりにしていたので、その印象は格別でした。
ぼくがよく知っている自動車づくりに比べて、VWはそれらがいかに細心の注意がはらわれているかを目のあたりに見てきたのですから。
そしてぼくはそのことだけを、何度も何通りもの方法で、多くの広告で言ってきました」
chuukyuu「ところで、あなたが担当なさる前につくられたVWの広告を、全部お読みになりましたか?」
ノブル「読みましたよ。当然のこと、絶対に必要なことです。もし読んでいなかったら、いつもひどい広告を書いていることになります。つまり、それが前に書かれたものかどうか疑問に思いながらも書いていて、その結果、ほんとうは、その広告は前に書かれたことがあるものだが、ということに気がつくということになるわけです。
その点、テレビ・コマーシャルのほうが楽でしたね。なぜかというと、ぼくがこの仕事を始めた時には、テレビのほうはあまりやっていなかったものですから。今ではもう、予算の半分以上もがテレビに使われていますけれど。
テレビで、印刷媒体広告が得たのと同じくらい愛好者を得たという点で、ぼくはテレビを誇るべきものの一つと考えています。愛されるってことはいいものですよ。そうおもいませんか?」

VWの広告は、その一つ一つが挑戦だった

chuukyuuVWの広告の型に関しては選択する自由があったんですか? そのフォーマットを変えたいと思ってことは?」
ノブル「ええ、選択権はあったとおもいますよ。それで、ぼくは、そのレイアウトを選ばなかったように思います。いつもNo.1というレイアウトに決めてしまっていて、それを雑誌の中で、あらゆるカテゴリーに使っている場合は、そのレイアウトを変えるということについて、再度考えることになるのです」
chuukyuu「スタイルについては?」
ノブル「スタイル?」
chuukyuu「そうです、文体です」
ノブル「ぼくたちのスタイルは、1対1の話し合いの文体をとっています。100万人いるかもしれないライフ誌の読者のことをとくに考慮に入れてコピーを書くということをぼくはしません。
ぼくは隣の人に話しかけている自分を想定して書いているのです。人間に向けて書いているのであって、物にたいして書いているのではありませんからね。
ぼくはほとんどの人間はとても心の暖かいものだということを信じているので、ぼくが書くVWの広告コピーは、とても人間的な暖かいものです。読者を全体としてみて、一人ひとりの独立した人格とみなさないようないまいましいコピーはいやですからね」


ジョン・ノブル氏とのインタビュー
(1)(2)(3)(4)(了)


DDBのみごとなコピーライターたちとの単独インタヴュー(既掲出分)
デビッド・ライダー氏とのインタヴュー
(1)(2) 
ロバート・レブンソン氏とのインタヴュー
(1)(2) (3)(追補)
ロン・ローゼンフェルド氏とのインタビュー
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フィリス・ロビンソン夫人とのインタヴュー
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