創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(38)フィリス・ロビンソン夫人とのインタヴュー(4)「コピーライターを育てるには…」

            Mrs. Phyllis Robinson

DDBの創業時からコピー・チーフとして13年間、数多くの一流コピーライターを育ててきたロビンソン夫人が、名伯楽ぶりを語る。

コピーライターを育てるには…

chuukyuu「コピーライターの教育はどうなさいましたか?」
ロビンソン夫人「まず、練習させることを第一としました。できるだけたくさん書かせました。きびしく教育しました。
私たちの効果的なアイデアは、もちろん、アートディレクターとペアで仕事をさせることでした。こうすれば、2人の間でアイデアの交換が行われからです。
この代理店ができたばかりのころ、かなりきびしくスーパバイザー・プログラムを組んでいましたので、彼(彼女)らは早く一人前になり、できるだけたくさん書けるようになりなさいと励まされましたが、常に注意深く見つめられていたのです。
そして、もはや私が指導しなくても立派にやっていけるほどに成長した時、より未熟なライターのめんどうを見るサブ・スーパバイザーになってもらいました。
私が用いた養成の仕方で良かったと思うのは、みんなに、自分のイディオム(語法)を自分流の考え方を持つように厳しくいったことです。
私は『こんなやり方はダメ、こうしなくては…』と教えたことは一度もありませんでした。それをやったら、私のスタイルを押し売りすることになるからです。
『こうすると面白くなるわよ』とか、『ここがポイントなのよ』とか、『これでは全然通じないわ』とかが、私のやり方です。
また、こうもいいました。『もう一度、しっかり核心をつかんでいらっしゃい』、『もっとカラフルなアイデアが出せると思うけど』、『ちゃんと調べた?』つまり誘導尋問を発し、進むべき道を切り開いていくのですが、これは決して私の考えを他人に押しつけるというのではなく、その人の立場に立って出発しようとするものです。
こういったやり方が、さらに私たち自身をも創造的にしていったのではないかと思います。
今、ともに働く優秀な人びとを育てあげるかわりに、流れ作業のように小バーンバックを育ててもしょうがありませんでしょう」

DDBスタイルは求めなかった

別のインタヴュー(前出のアド・エイジ誌)で、ロビンソン夫人はこんなふうにも答えています。
問いDDBのコピー・チーフだったころ、スタイルとか訓練について、どんなふうに感じていらっしゃいましたか? 特別のDDBらしさといつたものを求めましたか?
答え「仕事がフレッシュで、きっかりしていて、ポイントを突いていて、それで売れるということ以外に、私はDDBスタイルなんてものは求めませんでしたよ。
考えてみれば、私自身のスタイルは、すごく会話的だというだけで、これだってほかの人から学んだものかもしれませんし、私が自慢できたといえば、ほかの人からいちばん良いものを抽き出すことができた、ということでしょう。
私たちのコピーをそっくり真似させようなんて、思いませんでした。こうしてはいれない…とか、わたしのようにしなさい、なんて命令するのは致命的ですものね。
しかし、ある人には、これこれの理由で、これは正しくないと思うわ、もう一度自分の席へ持ち帰ってよく考えてごらんなさい。そして答えを見つけなさいっていうのは、その人を成長させ、よりよい仕事をする方向に導くわね。
彼(彼女)自身で、回答をさがし出せるように助けてあげる…このやり方で、彼(彼女)らを伸ばし、彼(彼女)自身で回答をさがし出すように助けてあげる…このやり方で、彼(彼女)らを伸ばし、彼(彼女)らのスタイルが生まれるのです」
問い「あなたはタフなコピー・チーフでしたか?」
答え「タフでしたよ。そうね、たとえていえば、ピロードの手袋をはめた鉄拳…ってとこかしら。私は、つねにコピーライターとおだやかな関係を保つように心がけ、またそうできたのですが、
タフでしたよ。ほんとうに正しいコピーだと思わなければOKを出しませんでしたし、20回も書き直しを命じました」
この2つのインタヴューからわかることは、DDBは、ただ単に自由放任主義をとっているのではなく、質の悪いものは決して外に出さないだけのきびしい規律を守っているということです。
そして、この教育法は、日本の伝統芸術の師弟関係に見られるきびしさ、自発性すらうかがえます。もちろん、日本のそれは、相手の個性を伸ばすことよりも、一定の方を守らせることを実施しすぎたきらいはありましたが。((5)へ

DDBのみごとなコピーライターたちとの単独インタヴュー(既掲出分)
デビッド・ライダー氏とのインタヴュー
(1)(2) 
ロバート・レブンソン氏とのインタヴュー
(1)(2) (3)(追補)
ロン・ローゼンフェルド氏とのインタビュー
(1)(2)(3)(4)(5)(了)