創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(167)ジュディ・プロタス女史とのインタヴュー(4)

          DDB 副社長兼コピー・スーパバイザー

人種偏見に挑戦したリヴィ・パンのポスター

chuukyuu「これまでにあなたがなさった仕事の中で,もっとも気に入っていらっしゃる作品を2つばかりあげてくださいますか? そしてできればその理由と、制作に関するエピソードもお話しください」


プロタス「オーバックスをおりてしまった今、また新たな気持で過去をふりかえってみますと、他の作品にも私の気に入っているものがあります。
ひとつは、アートディレクターのビル・トービンさんといっしょにつくった、リヴィのパンのユダヤ人の真のライ麦パンのキャンペーンです。『ユダヤ人でなくっても---』というシリーズです。
ニューヨークという特定地域の商品でしかなく、ほんの数百平方マイル内でしか知られていなかったパンなのに、国際的なあだ名になってしまいました。


リヴィのパンを好きになるのに、
ユダヤ人にならなきゃ---なんて法はありませんよ。


私がとくに誇りに思っていますのは、異教徒といいますか、信心深いグループにたいしてああいった公然たるアプローチを私たちが行なった当初は、受けいれられませんでしたが、(ユダヤ人であるということを言うことすら大きなショックだったのです)、今ではひろく受け入れられている---そしてそれに大きな貢献をしたのがこのキャンペーンなのだということです。
どこへいっても、『なにをしていらっしゃいますか?』と聞かれて『オーバックスの広告を書いてきました。そして今は、リヴィのコピーライターです』と答えますと、皆、私にとって喜ばしい反応を示してくれます。


【参考】ユダヤ人でなくっても---』シリーズのポスターをもっと見るには、[DDBの広告] (1)(3)(4)

オーバックスの広告で私が好きなのは, とても気むずかしい少年が部屋のすみに坐っているもので、ヘッドライン(見出し)が『遺憾ながら、オーバックスに学用品が揃いました』となっているのです。



遺憾ながら、オーパックスに学校用品のすべてが揃ったことをお知らせします。


恐らくあなたはいい感じで聞けないでしょうね。でも、事実は事実ですからね。スラックスだって、 ジーパンだって必要でしょう、ラグビー・シャツ、 トリミングつきの半コート、それにイタリー製のモへアのセーターもお望みでしょう。
もしあなたに姉妹がおありなら、彼女はAラインのコートや人工毛皮のものとか、麦わら帽、さらに冬のスキールックもね。
オーバックスには、そのすべてが美しい仕上げで豊富に揃っています。しかも安く。今学期が終わるまでに必要なもの全部をオーバックスでまかなうことができるのです。どうぞオーバックスにいらしてゆっくり選んでください。私たちはあなたを幸せにすることはできないかもしれませんが、こういった衣類で、あなたがカッコよく見えるようお助けすることはできます。


あの広告がとても好きで、気に入っていますの。
もう一つ気に入っているのは、ボブ・ゲイジとやったクラッカー・ジャックのコマーシャルです」
chuukyuu「クラッカー・ジャックのテレビ・コマーシャルとおっしゃいましたね」
プロタス「そうです。最初の5年間はボブ・ゲイジと組んで担当しました。まず試みたのはジングルを書くことで、有名なジングルになりました。私はもう長い間あのコマーシャルは見ていませんけれども子どもたちが私のところへやってきて言いますのよ。『クラッカー・ジャックのレディーだ』って。


「クラッカー・ジャック」それが、クラッカー・ジャックの箱の中に入っているものなんだ。
君は何か食べる物がほしくって、それが甘いもので、たくさんなくてはならなくて、しかも手には10セント硬貨1枚きり持ってない時、何をほしいと思う?
何がほしい?
したなめずりを誘い、カリポリと鳴り---そう、 すごい音なんだ---そのくせ、 ロに入れ
るとまどろむようでいて、とってもすごい音をたてるもの。 クラッカージャッキングす
るもの。そう、その答は、クラッカー・ジャック!
さあ、君は、そのふたを開け、中をのぞいて、 舌なめずりして、その箱をひっくり返してみて、ほうり出す時、何を手にしているの?
舌なめずりを誘い、カリポリと音を立てるもの、クラッカージャッキングするもの、
そう、その答は、クラッカー・ジャック!
キャンディでおおわれたポップコーンとピ-ナッツ、それと、当たりくじ。


>>(了)

An interview with Miss Judy Protas (4)

Doyle Dane Bernbach inc. Vice-president, Copy Supervisor

chuukyuu Out of the work you've done so far, name two ads you like best and tell us why you like them. Any episodes concerning the creative, work of the two ads?
Protas Now tnat I'm off Ohrbach's, I look back over the years with a new perspective and I realize there are other things I'm happy with.
One is the campaign for Levy's real Jewish rye bread which I did with art director Bill Taubin.
"You don't have to be Jewish" took a regional product, a bread known only within a few hundred miles, and made it an international by-word. One of the things I'm proud of is the fact that when we first did it, the overt approach to an ethnic or religious group was quite a shock.


That it is accepted nowadays, I think is in large part because of this campaign. No matter where I go, if I'm asked. "What do you do?" and I say "I've worked on Ohrbach's and I work. on Levy's", the reaction is a delight to my ego.
These days as I look. back at Ohrbach's, my favorite ad is the one with the little boy sitting in the corner, very grumpy; the headline reads, "We regret to inform. you your school stuff is ready at Ohrbach's". I love that one.


We regret to inform you your school stuff is ready at Ohrback's.


As I love the Crackerjack commercials, on which I worked with Bob Gage.
chuukyuu You worked on Crackerjack TV commercials, did you say?
Protas Yes. For the first five years the agency had the account, I was the copywriter with Bob Gage. The firt thing that we decided to do was to write a jingle, and it caght on. I haven't seen the jinglespots for a while, but I can tell you my very small friends still come up to me and say, "You're the Crackerjack lady!" And if you think I don't it---.


Crackerjack TV commercial


>>(5)