創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(127)『コピーライターの歴史』(5)

昨日、ケープルスがつくった歴史的名作広告---「「私がピアノの前に座ったとき、みんなが笑いました。しかし私が弾き始めると!」のオリジナル図版を志のある方から「ほら。これだろう?」と差し出していただけるだろう---と書いておいたら、早速、atsushiさんが、「それはここにあるよ」 http://www.passaicparc.com/killer/caples.html と、あり場所をURLを教えてくださった。ボティ・コピーまでテキスト化してくださっている奇篤な方が米国にもいるんですね。こんどは、英語に堪能な日本人(コピーライターにかぎらない)の方が、こんな内容で、こんなふうなうまいい言い回しをしている---と訳して書き込んでくださるのを期待。このブログは、自慢するわけではないけど、きわめてハイ・レベルのブログの一つのつもりなんです。今日のこの章の入力もコピーライター・赤星さんのお力を借りています。赤星さんに感謝>。(ブック・カヴァーは、左:DDBのウィリアム・バーンバックさん、右:Y&Rのジョージ・グリビンさん)


『コピーライターの歴史』(5)
ハロルド・J・ルドルフの注意と興味の研究


ルドルフは、いわゆるコピーライターとはいえないかもしれません。
けれども私は、前にもライターとはいえないスターチ博士を紹介しました。
いま、おなじ理由でルドルフに言及したいと思います。
つまり彼は、私たちにコピー原則の探求に関するもっとも科学的な貢献を2つもたらしてくれたと米国でいわれているからです。
彼は最初、質問クーポンのデータを研究して、その結果を「雑誌広告による400万の問い合わせ Four million Inquiries form Magazine Advertising」と題して発表したことです。
しかも彼は、たんなるコピーテストの調査結果にはけっして満足しないで、つねに原則をさがしもとめました。
「発見すなわち原則とはいえない。発見は、他の独立した調査によって、何回となく、くりかえされた確証の後、はじめて確立された原則になるのである」
と彼自身でいっています。
リーダーシップの調査結果が役に立てうるようになった後、彼はそれらを参考にして、以前やったクーポン調査で確立された原則の確認にとりかかり、それを「広告における注意と興味要素 Attention and Interest Factors in Advertising」にまとめて1947年に発表しました。
後者は、スタリーチのリーダーシップ・データを用いながら、1935年から1939年の5年間に、ポスト誌に掲載された半ページ以上の大きさの2,500の広告を研究したものです。そして、クーポン調査とリーダーシップ・データの間には「驚くほど近似した一致」があり、とくに色刷印刷の色彩に関して、イラストレーション(さし絵と写真)の大きさ、広告の大きさ、ヘッドラインの長さ等に関しての類似点が目立ったといっています。
つまり、ルドルフが私たちコピーライターにくれた2つの遺産というのは「注意と興味」です。
しかし、広告は「注意と興味」だけで成り立っているわけではありません。他の要素、たとえば「確信あるいは信頼」とか「行動」なども大きな部分を占めています。
これらが相補いあって、一つの広告効果となるわけです。
ルドルフは社会学者でしたが、ニューヨークのJ・スターリング・ゲッチェル代理店のコピーと商品調査のディレクターをした経験もあり、また、スタンダード・ブランドとコルゲート歯みがきの市場調査ディレクターをしたこともあった人です。


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