創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(731)クロード・ホプキンズ『科学的広告法』こだわり(21)


坂本 登さん訳『科学的広告法』(1966.10.05 誠文堂新光社)より


クロード・ホプキンズの名言(14)


第17章 個  性――から


「人に印象を与えたいと思ったら、なんらかの方法で大衆からぬきん出
る必要がある。それも、好感をそこなわぬようにである。常軌を逸した
り、アブノーマルでは人に好かれないが、普通の人とは違った方法で賞
賛に値することをやるのは大いに結構である」


「セールスマンも、広告も、そのとおりである。ユニークさにも人の不
興を買うものと、好感を高めるものとがある。好感を高めるユニークさ
は胸がすくようで、われわれはこれを歓迎し、また忘れない。こういう
好感を生まれながらに持っているセールスマンは幸せである」


「どの広告主に対してもそれぞれにふさわしいスタイルを作ってやるよ
うにしている。その広告主を特色あるものにしてやるわけなのだが。も
ちろんその外見だけでなく、マナーや格調もである。いってみれば、広
告主に個性を――つまり彼が呼びかける消費者層に一番よく適した個性
を付与するわけである」


「率直さを身上とする業種では、いかにも率直らしく見え、また好感を
身上とする業種では、いかにもお人好しに見え、また業種によっては、
いかにも権威のあるような印象で引き立つものもある」


「婦人衣料品の販売で、個性づくりの一方法として女性の担当者を置き、
広告面から支払いの相談までのいっさいを担当させて成功した例はすで
に紹介した。この女性は広告に写真入りで登場し、コピーには彼女の署
名を入れた」


「この成功例にならって、署名入りの広告をときどき出しては、その広
告に権威をもたせるようにした。社会的な地位・名声ともにりっぱな人
物に登場してもらい、いわゆる、通りいっぺんのあいさつではなくて、
親愛の情をこめてその広告で語ってもらうのである。有名人を使えば広
告製品までが有名になっている。製品の改良点を公表するときは、改良
に貢献した人の名をあげて効果を高めている」


「いったん消費者にアピールして成功した個性は変えてはならぬという
ことである。その製品の広告を新しくする以前に、コピーを書いた人は
広告主がこれまでに採用してきた広告精神、あるいは販売精神を十分に
理解した上で書いたからである。役者が原作中の人物になりきって演技
するのと同じことなのである」


「成功した広告では、ひとたび築かれた格調は絶対に変えないように細
心の注意を払っている。多数の人の賛成で決まったものは、他の人びと
の賛同を得る最善の方法だからなのかもしれない」


「目にふれるたびに外見が変わっていたのでは、信頼を得ることはとう
ていできっこない」


「人びとにわがセールスマンシップはあつらえ品だという見方をしても
らいたくないのである。われわれがやるアピールは研究され、努力の末
に生まれた。"作り物"だというふうに取られたくないのである。これは
われわれの心底から生まれたもの、方針の違いから全面的変更を余儀な
くされた場合は別として、いつも変わらぬ同じ心から発したものだと見
てもらいたい。また、そう見えるようなものにしなくてはならないので
ある」


「人間はもちろん、広告にも、ほれぼれするような個性があるものだ。
こういう個性を持つ人の言うことには喜んで耳を貸そうという気になる
が、聞くのもウンザリという人がいる。非常にさわやかなものもいれば、
月並みなものもいる。信頼感をいだかせるものもいれば、警戒心をいだ
かせるものもいる」


「正しい個性を創り出すことは最高の目的完遂といえる。そういう個性
が広告主に付与できれば名声はいよいよ高まって、失墜することのない
威光にまで発展することだろう」


この章、完