創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(677)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるソニーのシリーズ(3)

繁栄を確約する広告代理店DDB』(誠文堂新光社 ブレーン別冊 1966.10.01)より。



ソニー=DDBの広告(上)


DDBではソニーのためにチームを編成しました。
盛田=バーンバック会談で、盛田氏が「フォルクスワーゲンのような
広告を---」と望んだので、フォルクスワーゲンのチームのほとんど
が当てられました。


アカウント・スーパバイザー (取引責任者)にラッセル(Edward Russet)
副社長、アカウント・エグゼクティブ(取引担当者AE)にルーイン
(Charles Lewin)氏。
コピーはレブンソン(Robert Levenson)副社長(のちにローゼンフェルド
(Ron Rosenfeld)副社長に代わる)。
アートディレクターにはシローイッツ(Leonard Sirowitz)副社長といっ
たところです。


ラッセル氏のことは、特に「俊才」と盛田副社長がその名の頭に形容詞を
つけて紹介したほどの手腕家ですし、レブンソン コピー・スーパパイザ
ーは、フォルクスワーゲンの広告で十分に才能を認められている人です。
シローイッツ氏にいたっては、DDBのアート部門の中でも「秘蔵っ子」
という人すらあるくらい才能豊かな若手アート・スーパバイザーです。
これほどのタレントをそろえ、しかも「フォルクスワーゲンのような広
告を---」という要望が与えられたのです。
できてくる広告は容易に想像がつきます。


ソニーテレビについての広告方針が決められました。
たぶん、それは 「見たいときにはちゃんと見える大きさで、見たくない
ときには無視できる小ささのテレビ」といったところだろうと思います。
あるいは「テレビに支配されない限度ギリギリの大きさのテレビ受像機」
だったかも知れません。
そして何点かの広告がつくられました。
これらの広告をみてぼくは、「DDBらしいな」と思ったものです。
多分に逆説的で、十分に新鮮なものでした。


コマーシャルを小さくします。


ソニーテレビを実際にご覧になるまでは、コマーシャルをどれぐらい自由に
扱えるかは、お分かりにはならないでしょう。
扱いやすい5インチ大に切り落としてあります。
見るにはちょうどいい大きさで、つまらないときには無視するのにちょうど
いい小ささです。
もちろん、コマーシャル以外の番組を見るときでも同じことが言えます。
ソニーは大きくないので、部屋の向こう側に置いてあなたは椅子にくぎづけ
・・・というようなことは起こりません。
知らんぷりして、テレビなんかないようなふりをしていればいいのです。
大型テレビとちがい、ソニーがあなたの見たい番組を決めてしまうことはあ
りません。
あなたが決めるのです。
どこで見るかもあなたがお決めになれます。
室内のAC電源だけでなく、戸外に出て自動車の中でも、ボート乗ってでも
見られます。
あなたの居あわせるところ、どこでも大丈夫です。充電可能なバッテリーで
も見られるので見たい番組を見のがす・・・というようなことは、けっして起
こりません。
このソニーは、サイズが10倍の大きさだとしても見のがすことのできない
テレビです。画面は鮮明でブレません (大型の受像機だとあなは不幸ですよ。
断言できます)。
人びとが手もとに置いておきやすく、そして無視したいときには無視できる
ようなテレビを求めるころだって予感がしたものですから、ソニーは小さく
したのです。
このくらいの大きさのテレビ受像機が申し分ないと言えるんでしたら、
もっと小さくすればもっと申し分ないでしょう。
私たちが、これでもう満足してしまったなんて考えないでください。



C/W ボブ・レブンソン Bob Levenson
A/D レン・シローイッツ Len Sirowitz
Photographer: Mike Cuesta
"The NEWYORKER" 1964.06.20



It makes
the commercials
smaller.


You just don't know how tame a commercial can be
until you've seen one on a Sony television set.
It gets hacked down to a nice, manageable 5 inches.
Big enough to see. small enough to ignore if it's dull.
Of course, this same advantage catries over when you
watch the programs, too.
A Sony isn't so big that it reaches out across the room
and pins you into your chair
You can look away and pretend it isn't there.
So. unlike big television sets, the Sony doesn't decide
what you're going to watch. You decide.
You also decide where. Because a Sony not only plays
indoors on AC, but outdoors in your car or on your boat.

Or anywhere else you happen to be: it plays on its own
rechargeable battery so you never have to miss the
things you really want to see
The Sony would be extraordinary even if it were 10
times the size. The picture is painfully sharp and rock
steady. (It will make you unhappy with your big set, we
promise)
The Sony isn't big because we have a hunch that
people are ready for TV that s easy to keep at hand. And
easy to put out of sight.
If a TV set this small is good, maybe a smaller one
would be even better.
Don't think we aren't trying.


C/W: Bob Levenson
A/D: Len Sirowitz
Photographer: Mike Cuesta


"The NEWYORKER" 1964.06.20

この広告に限っていうと、DDBの知的な説得法に対し、ストレートな訴求をしていてDDBの対極のような広告哲学をもっていたデド・ベイツ社のロッサー・リーブス氏による医薬品のCMをからかっているようにもおもえます。当時、DDBは広告界のアテネ、ベイツ社はスパルタといわれていました。それほど社風がはっきりしていたのです。




[ニューヨーカー・アーカイブ]によるソニーTV・シリーズ総索引)←クリック[ニューヨーカー・アーカイブ]によるフランス政府観光局シリーズ総索引)←クリック
[ニューヨーカー・アーカイブ]によるシーヴァス・リーガル・シリーズ総索引)←クリック
[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・レンタカー・シリーズ総索引)←クリック
[ニョーヨーカー・アーカイブ]によるVWビートル・シリーズ総索引) ←クリック


Ads Series for Sony TV on [New Yorker's Archives](An index) ←clickAds Series for Chivas Regal on [New Yorker's Archives](An index) ←click
Ads Series for Avis Rent a car on [New Yorker's Archives](An index)←click
Ads Series for VW beetle on[New Yorker's Archives](An index)←click