創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(432)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(13)

逆手訴求は、DDBが得意としているものの一つです。もちろん、アメリカの広告史の中でも、さして珍しいアプローチではありません。


DDBは、この伝統的な奇法をユーモアで包んだから、広告に飽き飽きしていたアメリカ人の中層以上の知的オーディエンスの心をつかんだのです。


不恰好---"homely" "ugly"の違いは知りませんが、自らすすんでそう名乗ることで、不恰好さを、まっとうな姿に逆転しまうという、奇術を成功させました。



フォルクスワーゲンは不恰好でしょうか?


フォルクスワーゲンは内側からデザインを始めました。
どの線も機能が生みだした「結果」です。ししっ鼻は風の抵抗を少なくしてくれています。車内も内部の活動を考えてつくられています。出っ張るものも何もない。
ある英国人はフォルクスワーゲンのことをこういいました。「驚くべき簡素なデザイン」
米国のオーナーで、また違ったことをいう人もあります。「どうも、だんだん印象が変わってくるんですよ。はじめは、いままで見たこともない、ぶざまな奴だと思う。だがすぐ、その形が好きになる。しばらくたつと、ほかの車がみんなおかしく見えてくる」
VWは古さなんて気にしません。1950年と'61年のがっちり型、どちらがどうかを見分けるのはちょっと無理でしょう。これを変えるということは、オーナーに対して異端の罪を犯すことになります(だれも卵の完全な形を変えようとはしないでしょう?)
でも、私たちは目に見えないところでだんだん変えています。たとえばアンチ・スエイ・バーはカーブでの揺れをなくしました。1959年以来、こんな改良は無数にあります。でも、基本的デザインには一切なし。
VWは不恰好でしょうか? あなたの見方しだいです(それから乗ってる期間にも)。


C/W ボブ・セルダン
A/D ヘルムート・クローン
"The NEWYORKER" 1960.11.05




Do you think the Volkswagen is homely?


The Volkswagen was designed from the inside out.
Every line is a result of function. The snub nose cuts down wind resistance. The body lines hug the interior workings. Nothing protrudes.
One Briton called the Volkswagen "a marvelous economy of design."
An American owner put it differently. lilt's funny," he said, "how she grows on you. At first you think she's the homeliest thing you ever saw. But pretty soon you get to love her shope. And after awhile, no other carlooks right."
The VW defies obsolescence. You can hardly tell the doughty shope of a 1950 model from a '61. To suggest altering it is heresy to owners. (Would you change the perfect form of on egg?)
But we are continually making changes you cannot see. Example: a new anti-sway bar eliminates sway on curves.
Over a hundred such changes since 1950, but never in the basic design.
Is the Volkswagen homely? If depends on how you look at it land how long).


C/W Bob Seldan
A/D Helmut Krone

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