創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(643)[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・シリーズ(番外4)


エイビス側の経営母体が代り、広告戦略が一変すると、ハーツ側も訴求内容を一変し、不慣れな旅行先でのインフォメイション・サービスに切り替えました。
ただ、不愉快なシーンの写真を掲げたので、効果のほどは知りません。





人生を楽しむために旅をするはずなのに、それどころでは・・・。
(人生のための旅は生きることにつながらない)



旅は経験を広げるといわれています。
でも、その旅があなたを疲労困憊にしてしまうことは、あまりいわれていません。
切符売場やレンタカーのカウンターの長い行列などがどれほど多くの気苦労の種になっているか、数えきれないほどです。
レインコートなしで雨にあったのがもとで重症の風邪を引くかもしれません。
避けなければならないレストランを知っていさえすれば避けられた消化不良がどんなに多いことか。
グランド・インペリアル・クラウン・ホテルなる名前が誇張であることに気づけば、どれほどに頭痛をくいとめることができたかも、あまり知られていません。
正確な数字は必要ないでしょう、アメリカ医学協会じゃないんですから。
大切なのは、多くの人が辛い旅行をしているということです。同胞として、私たち
は、少しでもお手伝いしたいと思っているのです。
ですから、これからあなたがどの都市のハーツのカウンターの前にお立ちになっても、車以外のことについてもどしどしお訊きになってください。
もしあなたが、
アメリカの主要28都市のうちのどの都市ででも、不案内とお感じでしたら、その町で生き残れる方法を示した完璧な案内をお教えしてさしあげます。
その案内は、食べるところや泊まる所だけでなく、髪を刈ってくれる所、時計を質に入れられる所、その町の夜を楽しめる所までお教えします。
行き先がわかっていても、そこまで道筋がおわかりにならないときは、その地域の地図と時間表をさしあげます。
お金が足りなくなっても、ハーツのチャージ・カードをおもちなら、IOUで現金10ドルをさしあげ、それをあなたのレンタルに組み込みます。
もし、ホテルの時間に間に合わないことがわかっていらっしゃるときは、私たちが先に電話し、あなたをキャンセル扱いにしないように伝えておきます。
天気予報がお天気でしょうといったから雨具をお家においていらしたのに雨が降っていたら、レインコートをさしあげます。
飛行機に間に合うようにお急ぎでしたら、返却時チェック・カウンターに行列させたりなどいたしません。レンタル用の封筒にキイを入れ裏にあなたの走行距離を記入、それをカウンターに置いてお発ちになればよろしい。
あなたが休暇でお出かけなら、いちばん面白いところと、そこに行く途中の見るべきものを載せた旅行地図をさしあげます。
私たちが上記したこと以外にお困りのことがおありでしたら、それもなんとか解決するように全力をつくしましょう。
こんなことをいっても、もちろん、私たちはレンタカー・ビジネスのことを忘れているのではありません。何よりもまず、私たちの仕事はあなたにフォードや他の優秀な車(あなたのトラブルをふやさないような)をお貸しすることです。そして私たちは、ほかのどんなレンタカー会社よりも多くの車と多くの営業所をもっています。
その上で、地図やレインコー卜をさしあげられているのですから、大いにあなたのお役に立ってることになるでしょうし、とにかく、私たちへいらっしゃっていただかなければ、何もしてあげられないのです。

旅がらすセールスマンの死


《あなたは、年間雨量わずか175mmという町に着いたばかりとします、だが、着く日に問題が起きることだってありえます》


《ワシントン通り659の会議に出ようとしています。そこは、独立戦争記念塔の真向いにあり、だれでも知っているところです。あなた以外は・・・》


《うっかり、スーツケースに鍵をかけてしまい、その錠をゼムピンで開けようと格闘したところが、今度はゼムピンが錠穴に詰まってしまいました。さて、そのゼムビンをのける錠前屋はどこに行ったらあるのでしょう?》


《書いた報告書は調査と名案の宝石箱で、名文でさえあります。でも、コピー屋がみつからなければ、それを読むただ一人の人はあなたになるでしょう》


《所持金を足りなくしてしまいました。靴みがきの少年はクレジット・カードは受けつけません》


《借りた車を返すのに長蛇の列に加わりました。前の人たちは5分以内に搭乗しなくてもいいのです》


ビジネス旅行はしばしば、小さなトラブルの連続です。それがつもり
つもって、旅がらすの足をうつ状態にしてしまうのです。
でも、引きこもり屋になる前に、ちょっとハーツのカウンターをのぞいてみてください。
私たちは、同胞として、あなたのために何かできることをしなくっちゃ---という責任を感じているのです。
アメリカとカナダの主要都市では、どこでも、私たちはあなた車をお貸しする以上のことをしています。たとえば、あなたがこれから行こうとしている場所への道筋がおわかりにならないのなら、私たちはその付近の地図をさし上げ、行路を図解してさし上げます。
あなたが、手ごろなホテルに部屋をとりたい、歯医者にも行きたいとおっしゃるなら、どこへ行けばそれが見つかるかを書いた生き残り便利帳をさし上げます(これは都市に用意してあります)。
所持金が足りなくなったら、現金で10ドルお貸しします(あなたのチャージ・カードをお見せくださるだけでよいのです。私たちはそれをあなたのレンタルに組み入れます)。
あなたが、飛行機に乗らなければならず、その前に車を返さなければならないのなら、並んでお待ちいただくなんてことはいたしません。わが社の急行チェック・インがお役に立ちます。
また、天候があなたを裏切ってレインコートなしで雨に降られたときでも、私たちがレインコートをさし上げます。
また、これらのどの方法もあなたの難問を解くことができなくても、私たちはできるかぎり努力してみます。少なくともあなたがお泣きになるのに肩を貸してさし上げます。
もちろん、私たちは、みなさんがなぜハーツにいらっしゃるのか、その理由を忘れてはいません。私たちは常にフォードや他の車を整備し、ほかの何があなたの旅をそこなおうとも、少なくとも私たちの車だけはそんなことのないように心がけています。