創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(637)[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・シリーズ(29)


ついに、やりました。
いつかは、やるテーマでしたものね。


日本スタッフの訳は、「私たちはもっと頑張ります」
政党家が集会をしめる最後は「頑張ろう!」、
スポーツマンが咄嗟のインタヴューに応じ、「頑張ります」
きまり言葉です。


どこを、どう、頑張るのか、具体性のまったくない、無責任な言葉で、わかったつもりになっています。


エイビスは、貸し出す前に100ヶ所にもおよぶ点検項目を印刷した赤いカードでチェックしています。印刷されていないのは、笑顔とキビキビした態度だけ。


このシリーズで選んだ訳語は、かつて武士たちが土地を守るために命をかけた言葉・・・
「一所懸命」



私たちは、世界中で
一所懸命にやっています。


この広告で、レンタカー業界における私たちの負け犬のイメージはこわれてしまうかもしれません。
でもエイビスは38ヵ国で経営している・・・ということを秘密にしておけなかったのです。
私たちは依然として2位です。そしてやっぱり1位は私たちに勝っています。ということは、つまり、私たちがニースでお貸しするシムカは、ニューアークでお貸ししているブリマスと同じぐらいきちんとしているということ。
たしかに、エイビスのバッチを各国語に翻訳するときは大ごとでした。「私たちはもっと一所懸命やります」という意味に最も近いドイツ語は、「自然に頑張ってしまいます」となります。イタリア語では、「もっとたくさん、召してもっとよくやってみせます」
いずれも、いずれも。外国におけるエイビスの扱い店を忙しくたちまわらすのに十分な訳にはなっています。自分にもっと働くよう強いる(スペイン語の意味)と書いたバッチをつけていれば、自然と自分からそうしなければならない気分になってくるものです。
この中のどれかお気に召したのがおありでしたら、エイビスにいらしてください。
車にご用はなくっても。


C/W ジャック・ディロン Jack Dillon
A/D ヘルムート・クローン Helmut krone
"The NEWYORKER" 1966.02.19 1966.06.11