創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(628)[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・シリーズ(20)


エイビスの愉快な悪だくみ


エイビスは、巧妙にハーツをNo.1主義の会社に仕立ててしまいました。
けれども、ハーツが業界の1位である事実と、No.1主義をとっているかどうかということとは、別の次元に属することです。


いろいろ調べてみましたが、ハーツがNo.1主義におちいっている証拠をあげることはできませんでした。


そうわかってから、改めてエイビスの広告を読みかえしてみると、いちどとして、ハーツの名を具体的に明示して攻撃してはいないのです。
やっていることといったら、エイビスがNo.2である事実と人びとの常識を利用して、「エイビスは業界で2位のレンタカーにすぎません」といい、2位があれば1位があることをほのめかしているだけなのです。


ハーツが業界で1位であることも事実であり常識なのですから、「エイビルは2位にすぎません。だから一所懸命にやります」といえば、「ハーツは1位だからのんびりやるんだな」と読者は勝手に想像するわけです。


なんという愉快な悪だくみでしょう。



エイビスは、いまなお、
アメリカン・ドリームを
信じています。


アメリカン・ドリームへの機会は、過去のことではありません。
この10年間で、およそ5,000人の新百万長者が、高額納税者リストに記入されました。
そう、成功することはできるのです。もっと一所懸命に働くことを厭いさえしなければ。
エイビスのこの考え方は、いささか時代遅れに聞こえるでしょうか。
最近では、もっと一所懸命に働くことでビジネスを成功させようとしている人は、堅物と呼ばれかねません。
なるほど。しかし、私たちは富んだ堅物になるつもりです。
ですからエイビスのお客さまは、電磁式ドア・ロック、ウォッシャー液やスペアタイヤの空気もしっかりと入ったプリマスを借りられます。おまけに車体はぴっかぴかに磨かれています。
世間は、私たちが一気に成り上がろうとしていると言うかもしれませんね。


C/W 
A/D ヘルムート・クローン Helmut Krone
"The NEWYORKER" 1965.05.15


(訳:原田 剛志 & chuukyuu)