創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(619)[ニューヨーカー・アーカイブ]を基にエイビス・シリーズ(11)


楽屋ばなし】ここまで、いかにも順調にキャンペーンが進行したみたいに記述してきましたが、あらためて集めた資料で楽屋を覗いてみると、グリーン夫人の交代もふくめて、いろいろ挫折があったようです。


まず、「エイビスは業界で2位にすぎません」というスローガンの消費者調査の結果は、さんさんたるものであったらしいのです。
「2位なんかとはビジネスしたくない」の反応が多かったと。
バーンバックさんは、その調査報告書のお倉入りを命じ、門外不出にさせたと『ニューヨーク・タイムス』にスッぱぬかれました。


タウンゼント社長も好きではなかったことはすでに書きました。
バーンバックさんも好きとは言っていません。
しかし、エイビス側へ提示したときには、「これ以上のものがあるかもしれません。しかし、DDBとしては、これがベストなんです」
エイビス側は、モロー営業部長が「これで行っていい」と合意したので、やることになったという記録も、いま、手元にあります。



 


エイビスがたるんでいたら、
こうしてください。

 


でも、私たちだってそのままにはしておきませんよ。私たちは、またあなたに来ていただくよう、反省します。
エイビスはレンタカー業界では2位にすぎません。余分なお客さまなんか持ってません。
私たちはあなたのチャージ・カード(月末払い特典つき)が1枚だけですむようにと、すでに汗を流して働いています。
私たちの車は、可能なかぎり、上乗のコンディションを保っています。けれども、近いうちに、私たちの車の走行上限を36,000kmと決めることになるでしょう。軽快なフォードのスーパー・トルクでもね。
この業界には、そんなセッカチ屋はいないのですが---。
もちろん、私たちにも、たるんでいるところとがないわけではありません。で、もし、あなたが、そんな点をお見つけになってしまって、私たちの車をお使いになるのを止めておしまいになったとしても、私たちはあなたを責めるわけにはまいりません。
そんなときには、どうぞ、おっしゃってくださいますよう。
ご遠慮なく。
私たちは、きっと、ちょっぴり泣きはしますが、その後は前にもましてしっかりやると思います。


(写真キャプション:「私たちにお慈悲を垂れ給うな」)

C/W エド・ヴァレンティ Ed Valenti
A/D ヘルムート・クローン Helmut Krone
"The NEWYORKER" 1964.05.09

(訳:金丸 哲 & chuukyuu)