創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(372)[ニューヨーカー・アーカイブ]によるビートル・シリーズ(69)


エンジンのパワーを3馬力増やした---だから、エンジンを取りはずして右に置いた。もっとも今回の主眼は3馬力ではない。3馬力はロー・ギアでの効果だから目に見えるものではない。
本来ならリアのフードを開き、エンジン・ルームを覗かせる。
が、閉めたまま。"Volkswagen"のネイム・プレートがついたからだ。
ビートル・ファンにとって誇らしいのは、こっちなのだ。でも、つつましく---。


車をより速く走るようにしました。
            でも、エンジンはよりゆっくり回転するようにしました。


フォルクスワーゲンの最高時速が3マイル向上しました。
それはたいした数字じゃない---と思われるのでしたら、そのとおりなのです。そういう意図ではなかったからです。馬力アップ(50馬力からから53馬力)したのは、低速ギアのほうなのです。だから山登りはより楽になりました。加速もより速くなりました。
でも、エンジンを犠牲にして、こんなことをしたのではありません。 事実、エンジンは今までよりもゆっくり回転するようにしました。だからより長持ちします。
このスピーディーな新しいフォルクスワーゲンに標準装備としてデュアル・プレーキがついていることをお知りになったら、幸せな気分になられることでしょう。万が一、前輪のブレーキがきかなくなるようなことがあっても、後輪のブレーキが止めてくれます。その逆も、しかりです。
巻き込み式シート・ベルト、埋め込み式ドア把手、後退灯など、目に見える改良もしました。これらも標準装備です。
また、エンジン・カバーのところにつけた「フォルクスワーゲン」の文字も、しかり、です。
新しいかぶと虫が目の前を通り過ぎても、それとわかります。
新しい、よりゆっくり回転するエンジンをつけた、それと。


C/W ジョン・ノブル
A/D ロイ・グレイス

"The NEWYORKER" 1966.10.08
"LIFE" 1966.10.15




We made the car         And the engine
go faster.              go slower.


We've oddcd 0 full 3m.p.h. 10 the top speed of the Volkswagen.
If that doesn't sound like a lot to you, it's because it isn't. And wasn't meant to be.
We put most the the power increaser (from 50 horsepower to 53) into the lower gears.
So you could cIimb hills easier. And acceleate quicker.
But we didn't do all this at the expense of the engine. In fact, we made the engine turn even slower. So it would last even longer.
You'll be very happy to know this speedy new Volkswagen has dual brakes as standard equipment. If the front brakes should ever fail, the rear bakes will stop you. And vicc versa.
We even put in some changes yeu can see, like retracting seat belts, recessed inside door hondles, and back up lights. They're standard, too.
And so are the letters V.O.L.K.S.W.A.G.E.N on the engine lid.
So you'll recognize lhe new bug when !t posses you.
With its new, slower engine.


C/W John Noble
A/D Roy Grace

"The NEWYORKER" 1966.10.08
"LIFE" 1966.10.15