創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(301)フランス政府観光局の広告(10)


[ニューヨーカー・アーカイブ]を参照


この広告がすすめているのは、個人旅行のコツです。旅行会社が組んでいる団体旅行では、こういう個人プレイは禁じ手です。団体旅行は言ってみれば、バイパス旅行みたいなものです。現地の住民の生活に立ち入らず、決められているコースを能率よく消化する旅です。そういう旅の時代が、米国では行く先がフランスと英国あたりにかぎって、50年前に終わりはじめていたんですね。


オグビー氏のところの守るべき条々の残りと、ぼくの当時の感想は、DDBによる作品のあとに。


ほとんどが本邦初公開・初訳です。


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フランスの人たちって、親しくなれない? とんでもない!


この次、フランスへいらっしゃる時には、ほんとうの機会を見つけるためにも、地方を旅程に組みこんでください。ブルターニュの郷土色豊かな海岸村では漁師たちが見知らぬ人たちに、朝食にペルノーをきこしめして、漁のあれこれを話したがっています[上の写真は、最近、あるアメリカ人旅行者が、1家族をそっくりカメラにおさめたものです]。
プロヴァンス地方では、カフェのテラスでアーチストが芸術のすばらしさを話すために、あなたを何時間でも引きとめるでしょう。
ドラマチックで荘重な人が多いバスク地方でさえ、地方色豊かな旅籠や教会で子どもたちをきっかけにして、家族ぐるみで友人となることができます。
そりゃあ、あわただしく風のようにパリやその近郊のスポットをお廻りになっていては、知り合いなんてできっこありませんよ。ニューヨークでだって家と職場をせわしなく往復しているだけだったら同じことでしょう。
フランスの田舎は、小じんまりしていて、のんびりしていますから、きっかけもつくりやすいといえます。
ご自分のほうからきっかけをしかけてごらんになることです。急いで帰ろうなん気持ちをお捨てください。


"The NEWYORKER" 1961.04.29




Are French people hard to get to know? No!


Next time you're in France visit the provinces where you'll get a oeal chance to find out for yourself. In the colorful coast villages of Brittany, like Douarnenez [where an American recently photographed the family above], the fishermen love to spin a tale for a stranger-over their startling breakfast of Pernod. In Provence you can always find an artist in a cafe who would love to talk the day aways with you. And even in the dramatic, dignified Basque country you can make friends with a family through the children, the church or a local inn-just as you make friends at home. Of course, it's harder to get to know people if you merely whizz in and out of busy Paris. Just as it's hard if you whizz in and out of New York. But the small, relaxed towns in France get
as big a kick out of you as you get out of them-will ; make it as tough as possible for you to ever go home.


昨日の[クリエイティビティ]のつづき---


(8).秘伝的なテーマは用心してください。
このようなテーマは、キャンペーンのスポンサーになっている国の国民を面白がらせるかもしれませんが---外国の観光客 ---お客さまはお定まりのものを見に外国にでかけるものなのです。
たとえば英国を観光したいと思っているアメリカ人は、サザビーーやアルテバラのフェスティバルよりも、ウェストミンスター寺院のほうにより大きな興味をいだいていることが調査で知られています。
また同じように、アメリカを観光したいと考えている英国人はマーサのブドー園や漬物工場よりも、マンハッタンやグランド・キャニオンのほうにより興味をいだいています。


(9).アメリカ人観光客にとって、行き先を決めるいちばん重要な要素は、面白そうな都市、美しい田舎、史跡、そして友好的な人びとです。
いちばん興味のないテーマは、スポーツと夜の生活です。
私はまた食物や料理のことを考えにいれて行き先を決めるアメリカ人やヨーロッパ人が非常に少ないことを発見してびっくりしています。
(『ある広告人の告白』 西尾・松岡共訳ダヴィッド社刊)


このオグルビー氏のルールを表面的にのみ理解しますと、絵葉書的写真に旅行案内書から孫引き的なコピーをつければいいような錯覚に陥入ります。
しかし、プリンターズ・インク誌に引用されているオグルビー氏の言葉"フランスと英国のすばらしい広告が、ほかのすべてのヨーロッパの国々に利をもたらしていることは、まぎれもない事実である。ほかの国々は、ボートの中で自分の体重をかけないようにしているだけである。たいていのヨーロッパの国々の広告は、まったくお粗末である。質においても量においてもお粗末である。フランス、英国、ギリシャはよい広告をしているが、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、スイス、スカンジナビアはひどい。これらの国の政府は適切な広告のためにもっと金を出すべき時がきている"
を基にして考えてみますと、オグルビー氏がほめたフランス政府観光局の広告は、オグルビー氏のルールをすべて破っていて、しかも私たちの興味をひきつけ、クレマン氏が"パリのカフェの広告は去年パリで開かれた第17回国際広告協会の世界会議で大賞を得た"と自慢していってよこしているとおり、すばらしいものです(注;明後日に掲示)。
この相反する事実は、広告の多面性とクリエイティビティの多様性を示すものといえます。
(後略)


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