創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[6分間の道草](442)トミ・アンゲラーとの対話(9)


[子どもたちのための創作遊具]は、『レッド・ブック』誌の記事用に特別に創案したもののようです。依頼したほうも慧眼ですが、創ったトミも立派です。

子どもたちのための創作遊具


42丁目西220番地(つづき)-------


それからトミは、アトリエのあちこちから、まるで手品師のように作品をひっぱり出しては、「これも収録できるだろうか?」「これは?」と矢つぎ早に質問しはじめた。
それらの作品は、まだ公けにされたことのない、おびただしい量にのぼる玩具、彫刻、デッサンなどであった。
私の頭は圧倒されはじめていた。
「これじゃ、トミ・アンゲラー全集が必要だ」と悲鳴をあげて、「その前に、少し、話し合いましょう」と言った。
それまで、私たちは、あいさつと撞手以外の話し合いをしていなかったのである。



chuukyuu「あなたの心にもっとも影響を与えた人は? 本は?」
トミ「私は、とてもたくさんの本を読みます。画家の友だちよりも作家の友だちのほうが多いぐらいです。もちろん、私に影響を及ぼした本はたくさんあります。つまり。アート・フォームはただ技術的なことで、学校で学ぶこともできました。重要なのはテクニックではなく、知的コンセプトですからね。人の心を変えるものです。私に大きな影響を与えた作家は、ルイ=フェルディナン・セリーヌです、『夜の果てへの旅』など」


chuukyuu「好きな詩は?」
トミ「私の好きな詩はたくさんあって、いちいち名を挙げるのはむずかしい。その時の雰囲気で好きな詩が変わりますからね。ある雰囲気の日にはある詩が好きで、また別の日には別の気分になっていますから他の詩が好きになっている・・・・といったふうです。
そう、米国の詩人で好きなのはエドワード・E・カミングズですね。
ドイツ生まれのグンタ一・グラスのものも好きです.『ブリキの太鼓毛』なんか----『ブリキの太鼓』は小説でしたね。
フランスの古い詩人では、フランソワ・ヴィヨンからジュール・ラフオルグまでの詩が好きです」


chuukyuu「好きな画家は?」
トミ「たくさん。私の仕事に影響を与えた人がたくさんいます。フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシェンテス、イエロニムス・ボッシュ、ジョージ・グロス(この人については本をまとめています)など。これらの人が私の好きな画家で、影響を与えてくれた画家です。現代画家については分かりません」


chuukyuu「好きな音楽は?}
トミ「あらゆるタイプの音楽。ただ一つ好きになれないのが、米国のポピュラー音楽です。ウエストサイド物語みたいなの」


chuukyuu「演劇は?」
トミ「古典派が好きです.私は、劇場へは行きません。戯曲を読むのが好きです。ですから私の演劇に関しての判断は、文学的なものです。ジャン・アヌイの作品、ジャン・ポール・サルトルの戯曲、初期のテネシー・ウィリアムズのもの、それからサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』なんかが好きです。
私がほんとうに好きなのは映画なのです。いつも映画に行っています。米国の映画、全部好きです。いろんなタイプの映画が好きです。日本映画も大好き、黒沢の映画など、ね」


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