創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(234)[VWビートルの広告](134)


誌面と画面のコラボレイション


「神工鬼斧(しんこうきふ)」


20世紀に創られた広告の中で、「最高」との栄誉を与えられている”Think small." のボディ・コピーのバリエイションを5種類、収集しています。別に意図して集めたわけではなく、調べているうちに自然に集まってきたのです。関心を抱きつづけていれば、情報は自然と集まってくる例の一つでしょう。
バリエイションができた驚天動地の経緯は、2009年1月26日クリックにすっぱ抜きました。

今日は、5種類ある”Think small"の中で、『ライフ』誌に掲載されて志ある米国人の心を打ったものを例示します。


小さいことが理想。


私たちの小さな車は、最近では、さほど物珍しくなくなりました。
12人以上もの大学生が押しあいへし、つめこみ競争をすることもなくなりました。
給油所のパート・タイマーがガソリンの注入口を訊いてうろうろすることもなくなりました。
車の外形に目を丸くされることも---ね。
じっさいのところ、私たちの小さな車はリッターあたり13.5km走るなんてことを信じない人も---。
そう、オイルも5クォートじゃなくて5パイントです。
ええ、不凍液もいりません。
タイヤも64,000kmはもちます。
てすから、私たちのエコノミィカーになされば、こういったもろもろは思案の外になるのです。
あ、駐車スペースは狭くてもいけるし、車の保険更新料も少くてすむんです。修理代も安いんです。車を下取りに出して新車になさるときもお得です。
考えどころですよね。




Think small.


Our little car isn't so much of a novelty any more.
A couple of dozen college kids don't try to squeeze inside it.
The guy at the gas station doesn't ask where the gas goes.
Nobody even stares at our shape.
In fact, some people who drive our little flivver don't even think 32 miles to the gallon is going any great guns.
Or using five pints of oil instead of five quarts.
Or never needing anti-freeze.
Or racking up 40,000 miles on a set of tires.
That's because once you get used to some of our economies, you don't even think about them any more.
Except when you squeeze into a small parking spot. Or renew your small insurance.
Or pay a small repair bill. Or trade in your old VW for a new one.
Think it over.


↓このCMに「アッ」と冷や汗がでるほど驚かなかったら、感性検査をおすすめするとか、広告クリエイターをおやめになって別の道へお進みなさいと忠告してあげたいくらい。(言わでもがなの冗談を言ってゴメンナサイ。


鑑賞したクリエイターと、見る機会を逸したクリエイターとでは、先へ行ってアイデア起爆剤の貯蔵庫に間違いなく大差がついているはず。つまり、他言無用ということ。情報を共有すべきご自分のチーム構成員へはただちにメール)。


惜しげもなく秘蔵資料を公開してはいますが、DDBからも惜しげもなく教示してもらった(もっともぼくは、いちいち、必ず、丁寧にお礼をし、その方々が来日したときには饗応を欠かさなかったけど--- )のと、広告界にまったく未練がないから。  

TV-CM(30秒) Think small. (クレジット未詳)

アナウンス? あなたなら、どんな台詞をつけますか? コメント欄へどうぞ。


参考クリック

(a)デラ・フェミナ著『真珠湾をくれたすばらしい民族から』(邦題『広告界の殺し屋たち』)からの抜粋
(b)バーンバック氏、広告の書き方を語る(6)
(c)「レイアウトを語る」ヘルムート・クローン氏 インタヴュー(その1)
(d)ジュリアン・ケーニグ氏のスピーチ(2−1)
(e)ダヴィッド・オグルビー氏とのインタヴュー(3)
(f)ジョン・ノブル氏とロイ・グレイス氏チーム・プレイを語る