創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

シャネルのものづくり哲学


【蛇足】きのうは、オフィスでの始業直後10分間のクリエイティブ・センス・アップ・ミーティングの日であることを忘れていて、素材を持たないで出社したので、即席で話した。


シャネルは傑出した衣装デザイナーであるばかりでなく、ものづくりの哲学を持っていた。
1920年代(?)に調香師エルネスト・ボウに香水を頼んだとき、量産が可能な合成香料による5番目の試作品を選び、ネーミングも、流行していたごたいそうな思わせぶりのをやめて、試作No.5をそのまま香水の名にして合理性を発揮。瓶形もシンプル。
また、婦人靴デザイナーのフランスソワ・ヴィヨンは、シャネル・シューズをデザインするとき、「シャネルならこう考える」と、傷つきやすいつま先とかかとを黒のコンビネーションにした。その部分が黒なら、傷つけても靴墨をぬれば目だたない。


バッグ・メーカーのゲネ社は、シャネルの名を冠したバッグの革にステッチを入れて伸びを防ぎ、どの部位の皮でも使えるようにした。
また、肩掛け用チェーンには革紐を通し、チェーンが切れても本体が落ちないように工夫した。


すなわち、ブランドは、だれでもその哲学が理解できるようにすべきである。
クライアントの企業哲学を訊いてから、広告づくりをすべきである---と結びました。

なお、シャネル本は数冊あるが、白眉はエドモンド・シャルル・ルー『シャネル』(1974 写真)邦訳あり、と付言。