創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(437)ジェリー・デラ・フェミナ氏とのインタヴュー(9)


【用法】私は書くことに興味をもっていました。また、美術にも関心がありました。そして、書くこととアートを広告の中で行う機会がやってきたとき、その機会を利用しようとしただけなのです
「ウィリアム・バーンバック氏、広告の書き方を語る」(1)


(chuukyuu覚悟)この先達の言葉はやさしい口調だが、読めば読むほど、深まる。




デラ・フェミナ トラビサノ&パートナーズ代理店
社長当時


<<ジェリー・デラ・フェミナ氏とのインタヴュー(1)


もう一つの自薦作品


フェミナ氏「もう一つの自薦作品は、パナソニックの広告です。
私がテッド・ベイツ社に入ったばかりの頃、このアカウントをやってみようとする人が誰もいなかったのです。
彼らにしてみれば、これは関心を寄せるには小さすぎるアカウントだったのですね」


chuukyuu「これは日本の松下ですよね」


フェミナ氏「そうです」


chuukyuu「日本では大企業に属する会社ですよ」


フェミナ氏「たしかに大きな会社なのですが、米国内でのパナソニックの広告予算は十分な額ではなかったのです。
といっても70万ドルもありましたが、他に比べたら小さいものでした。
というわけで、誰もこれをやりたがらなかったものですから、それでは私が---ということになり、その新しいテレビ・セットの広告を書くことになったわけなのです。
このキャンペーンに初めて登場したのが、


臆病者なんですね、あなたは。
カラーテレビのセットが揃うというのに、みすみすそれを逃してまで、
500ドルもする役たたずの犬っていうやっこさんに
手を出そうっていうんですから


というヘッドラインの広告です。
このアカウントを扱って困ったのは、パナソニックの代表者であるイソムラ氏に、前もってこれを見せなければならないことでした。彼は、こちらに出向いて私の説明を聞くことで、やっと理解してくれたんです。
つまり、彼が、"scaredstiff" がどんな意味なのかわからないと言ったので、これは〔恐ろしく思うこと〕であると説明しました。すると彼は、"turn out to be 500dollar dog "は、いったいこの犬が何を意味しているのかさっぱりわかりません』と言って顔をしかめるので、私は、この犬という言葉の意味は、〔レモン〕なのだ、と説明したのです。
ところが、今度は〔レモン〕の意味がわからないっていうので、〔レモン〕には、悪いもの、不良品という意味もあるんですよと、さらに説明を加えたのです。
ここまできてやっと彼は納得してくれて、この広告をOKしてくれました。
この奇抜な広告のおかげで、このテレビ・セットは売り切れたと聞いています」


chuukyuu「今でもこのアカウントを扱っていらっしゃるのですか?」


フェミナ氏「いえ、テッド・ベイツ社にいた時だけです。
イソムラ氏とは1年半ばかりお付き合いしました」


>>(了)米国の広告界に革命が起きるだろう。

テレビ受像機の写真は、とうぜん、カラー写真だが、カラー・プルーフが見つからないので、モノクロ版で。



臆病者なんですね、あなたは。 
カラーテレビのセットが揃うというのに、
みすみすそれを逃してまで、
500ドルもする役たたずの犬っていうやっこさんに
手を出そうっていうんですから


オレンジ色の顔をした緑色の熊蜂・・・
輝くばかりのピンクやグレーや紫に彩られた米国旗・・・
マゼンタ色(深紅色)の草の上で、ブルーのフットボールを追いかけている淡緑色のユニフォームのニューヨーク・ジャイアンツ・チーム。
悪夢です。
そのいやな夢の中で、あなたはこう言いつづけています。「彼らがそれを完全なものにするまで待とう」と。そして、その「彼ら」は実際に、それを完全なものにしたのです。
その「彼ら」とは、パナソニックです。
私たちパナソニックがつくっている19インチ・カラーテレビは、 この分野で一流といわれる3社によってつくられている、私たちのものと同じくらいの価格の19インチ・カラーテレビと競い合って、研究所で影像テストを受けました。
その3社は、良いテレビをつくっています。
そして、私たちは、彼らに勝ったのです。
そのテストの結果、パナソニックのカラーテレビに写し出される画面が、もっとも鮮明で、もっとも望ましいものということになったのです。
私たちは一生懸命やりました。そして、そのテストの終わりに、研究室にいた人は、専門家もそうでない人も、画像の質に関して、4社のうちで、どのメーカーのものが好きかと尋ねられました。全員が、躊躇することなく、パナソニックを選んだのです。
このテストは決して、「我田引水」的なものではありませんでした。全国消費者協会によって行なわれている一連のテストの一つで、完全に公平なものでした。ここで、恐らくあなたはこう言うでしょう。 「テストの結果確かにパナソニックは、一流メーカー3社に勝っている」と、「だが待てよ、パナソニックってのはいったい何者なんだろう? 1台のカラーテレビのために、400匹以上の兎を犠牲にしなくちゃいけないとすると, どこの誰ともわからないパナソニックなんてのを信じることはできやしない」
あなたがこう言われるのは当然です。
でも考えてみてください。研究所に2,500人もの科学者とエンジニアがいる会社を信用していただけませんか?
パナソニックにはそれがいるのです。
72の工場に40,000人の技術者がいる会社を信用していただけませんか?
パナソニックにはそれだけいるのです。
120ヶ国で4,500種類もの製品を売っている会社を信用していただけませんか? 特許権をとっているデザインを14,048件も持っている会社を信用していただけませんか?
パナソニックには、そのすべてがあります。そして、ほかにももっといろいろあります。
しかし何といっても、このことが一番大切なことでしょう。すなわち、私たちの製品の重要な部品はすべて(ちっぽけなトランジスタから、大きなカラーテレビの真空管に至るまで)わが社で設計し、つくったものなのだということです。
それから、私たちは、それらの部品を組み立てて、テレビ、テープレコーダー、ラジオ、レコードプレーヤーをっくるのです。できあがったものは、確実に品質管理されたものです。そう、最初から最後まで。
つまりこういうことなのです、パナソニックでは、カラーテレビを、ただ組立てるのではなく、まさに「つくって」いるのです。
パナソニックでは緑色の熊蜂がオレンジ色の顔をしているなんてことはありません。
なぜなら、緑色の熊蜂の顔をオレンジ色にしてしまうような回路は、何百人もの検査係のOKをとることはできないからです。
あなたがもし、この場ですぐパナソニックテレビの覆いを剥ぎ取ってしまうなら、そこに、500以上の電子部品を見いだすでしょう。
世界中で一番良く売れているカラーテレビには、あなたが見るよりもずっと多く、そう、約100個以上の電子部品が含まれているのです。
そして、私たちがこれらの100個の部品をテレビに入れるのは装飾のためではありません。より多くのカラー回路をつくり出して、より完全なカラーを生み出すためのものなのです。輝くほどに明るく、鋭く、しっかりとしたカラー画像を生み出すためのものなのです。
私たちの900偏向カラーブラウン管には、世界でもっともシャープで、豊かな画面を生み出す希土類蛍光体が塗られています。
パナソニックの自動消磁回路は、いつでも、どのチャンネルでも、純粋な色をおとどけします。
その上、パナソニックのカラーテレビは、映していない時でもすてきにみえるよう努力しています。
スリムで、コンパクトで(きちんとまとまっていて)、格好のよい、丈夫な木製のキャビネットに収まっています。
私たちは、しようと思えば、今からこの世が終わるまでパナソニックのカラー・テレヒについて話すことができます。しかし、そうしてもまだ、恐らくあなたがそれを買うようにさとすことはできないでしょう。
それができるのは本当にただ一人です。
そう、あなたです。
あなたには、新しく発売されたパナソニックCT66L型カラーテレビと、世界のすべてのカラーテレビとの実際の違いを示すことができるものがあるのです。
あなたは両の目を持っていますね。その目をお使いください。
スイッチを入れて、画面を見ることを許されているお店で、5分間お過ごしください。
パナソニックのカラーテレビをよく見てください。
そして、今までにあたなが見た他のカラーテレビと比べてみてください。両の目を使うことが終わったら、さあ今度は頭を使って考えてください。パナソニック・カラーテレビを買いましょう。


>>(了)米国の広告界に革命が起きるだろう。