創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(432)ジェリー・デラ・フェミナ氏とのインタヴュー(6)


【用法】スーパーマーケットの棚で、商品が列をつくっている町ではコンセプト・アドが育ち。スーパーマーケットの前で、人間が列をつくっている町ではコンセプトは無用に等しい。
土屋耕一『コピーライターの発想』(講談社現代新書 1984.3.20)


(chuukyuu弔辞:訃報を知らされて久しぶりに旧著をとりだし、読みかえして偲んだ。あいかわらずの華麗なレトリックで都会的な説得方。照れ屋の、一歩引いた、その引いた左足(さそく)の姿態がさまになっているんだね。長いあいだのご交誼に感謝。もう、締め切りはこないんだから、安らかに---。




デラ・フェミナ トラビサノ&パートナーズ代理店
社長当時


<<ジェリー・デラ・フェミナ氏とのインタヴュー(1)


広告を通して、もっともいいたい一つのことは何か---と自問する


chuukyuu「良い広告、良いコピーをつくるために、どんなことをなさっていますか?」


フェミナ氏「自分自身を消費者側に立たせています。
外に出れば私も消費者の一人ですから、これは簡単なことです。
そしてまず第一に自分にこう問いかけます。
『私が広告を通していいたい一つのもっとも重要なことは何か?』
七つも八つも、十もいうわけにはいきません。
もっとも大切なものは一つだけです。
それがはっきりすれば広告づくりも簡単になるというものです。
これは、私にだけいえることではありません。
ここにいるみんながそうやっているのです。


『私がやりたいのは、これなのだ。何をやったらいいのかわかった』ということになれば話は簡単です。
私がアドバイスするのは、フォーマットと基礎的なことだけ。
肝心なのは、話して聞かせたいと思うものの中で、ただ一つ、もっとも大切なものがなんであるかを見いだすことなのです。
それが見いだせたら、あとはたくさんの人と話し合ってみることです。
私たちはいつも話し合うことを忘れません。


そのいい例がここにあります。
私がまだDKG(テルハンティ・カニット&ゲラー社)にいたころ、プリティ・フィートという商品を扱ったことがあります。
プリティ・フィートというのは、女性の人が足の手入れに使うローションのようなものですが、自分たちの足をどう思っているかを聞くために3日間も代理店内を歩き回りました。
するとだれもが口をそろえたように、『私の足は醜い』『私の足なんか大嫌い』『まったく見られたもんじゃありませんよ』『見苦しいったらありゃしない』と答えたのです。
私は女の子のだれもが、自分の足をいまいましく思っていることを、いやというほど聞かされました。


こうしてできたのが、『あなたのからだで、もっとも醜いところは?』といへッドラインです。
これは、女の子ならだれでもハッとさせられるし、先を知りたいと思わせるヘッドラインだとお思いになりませんか?
『あなたの足』これが次につづく言葉です。
すると『私の足、まさしくそのとおり』という言葉が返ってくるのは、火を見るよりも明らかです。
残りのページに、足の手入れの仕方を説明すれば万事OK。
いかに話し合いが大事か、これでおわかりいただけるのではないでしょうか」


chuukyuu「あなたが信じる良い広告をつくるには、といったクリエイティブ・メソッドを、ここで働く人びとに直接教授することがありますか?」


フェミナ氏「いいえ、私が持つイメージを彼らに植えつけるような、そんな事押しつけがましいことはできません。
私には私なりのやり方がありますし、おそらく彼らも彼らなりのやり方をもっていると思います。
彼らをプロとして扱いたいですね。
もちろん、私にだって私の流儀に従う人だけを集めた代理店を持つことも可能ですが、その段階が過ぎてしまえば、私に残されるのは自己満足だけです。
彼らにしても自己を表現するチャンスがまったくなくなるわけで、ただ私のいうなりにしか書けないのですから、ものまね上手の"おうむ"に等しい人間になってしまうのです。
それぞれに自分の流儀を持っていますし、またそれは尊重されるべきものです。
彼らのライティング・スタイル、問題の解決法をぜひとも尊重してやるべきです」


>>(7)広告の第一条件は、人の注意を引くか---ということ

DKG時代のデラ・フェミナ氏の作品。
記憶では、写真部分がカラーだったが、ブルーフが見当たらない。



体で
最も醜い部分は
どこ?


即座に「足!」ってお答えになるでのでは?
みなさん、そうなんです。
体の中でいちばん魅力のないところは足だって、多くのご婦人が思いこんでいらっしゃるんです。
だから足をかくすだけであきらめていらっしゃる。
でも、今では、美しくする方法があるんですよ。
マズマズの足にするんじゃなくって、美しい足にするんです。
ですから、 「プリティ・フィート---すてきな足」って命名しました。
「すてきな足」は、表皮を除くロ-ションです。
少しずつ指先にとって、足によくすりこんでください。毎日欠かさず----。
死んで汚い表皮が、すぐにとれてきます。
ストッキングをランさせないすべすべの足に----。あなたの体のほかのところと同じくらいセクシーでソフトな足に----。
あなたが、生まれたままの愛らしさをご披露できればと切望していらっしゃるのでしたら、喜んで試供品をお送りしますよ。
ニュージャージー州ウェイン、フェアフィールド街のケムウェイ社G2係へ、すぐにお便りください。


去年日焼けさせたままの
足で、
ことしも
海辺へいらっしゃるおつもり?


去年、あなたは、足を砂の中にかくすか、体をすっぽり水につけてかくすかの、 どちらかでしたね。
まあ、 どちらにしても、ご苦心なきったはず。
でも、ことしは、ああはいきませんよ。だって、新しいビキニで海岸へご登場なさるんですものね。
新しいビーチバッグ、 ビーチコートも持ってね。トランプ遊びをしたいのなら、それも結構・・・・生まれ変わった2本の足も一緒に、ね。
ことしは、「プリティ・フィート(すてきな足)」と<ぴったりの命名をしたローションがあるんですから。
表皮を除くローションです。
少しずつ指先にとって、足によくすりこんでください。毎日欠かさず・・・・
きたなく死んだ皮膚が、すぐにとれてきます。
そして、サンダルがはけるきれいな足になります。浜辺の砂の中にかくす必要もない愛らしい足に。
(以下同文)


>>(7)広告の第一条件は、人の注意を引くか---ということ