創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(421)ジュリアン・ケーニグ氏のスピーチ(2−了)


【用法】このブログを1日1回服用していると、クリエイティビティが補強されます。少なくとも、センスは確実にアップします。


はじめに記したように、この2つのスピーチは、拙編著『アンチ・マジソン街の広告代理店 PKL』(『ブレーン』別冊 1967.7.20)から転載したものです。そのころ、クリエイティビティの点で、ニューヨーク---はおろか、全米でもっとも輝いていた代理店でした。広告が雑誌やテレビに出るたびに、クリエイターたちが羨望と嫉妬まじりに話題にしたものです。先行DDBの場合は、嘆声と目標でしたが---。左の写真は、PKLが手がけたコティの口紅の広告---例の[使用前→使用後]という古典的デモンストレーション技法をぬけぬけと採用した「変身」作品でした。あまりのぬけぬけぶりがかえって痛快だったので、拙著のカヴァーに採用しました。表に”AFTER" 裏に”BEFORE"をもってきたのは、一種の揶揄精神でした。
TVコマーシャルはもっと強烈でした。フィルムが見つからないので、コマ割りでお目にかけます。誇張もここまでやると、人は、いったん否定しても、いつか信じようとしてしまう、格好のサンプルです。



   パパート・ケーニグ・ロイス(PKL)社社長

   1966年4月19日 ニューヨーク広告ライターズ協会で

誠実こそ、最高の武器(4)


マチュア主義の害



私たちは、アマチュア的です。
民主的権利を誤って履行して、不法所得を得ています。
でもそのおかげで万事休すの状態にはまりこんでしまっているのです。
マチュア主義を止める代わりに、私はこの広告ライターズ協会にひとつ提案しましょう。
道理にかなったルールを寄せ集め、私たちがよりよい広告を作れるよう訓練できるリサーチ方法を先に立ってさがすのです。
コピーライター養成教室をビル・ケイシーにまかしておかないで、この協会が、この職業における初心者たちの間でプロ意識をつくりだすような本当の援助者になってくれるこ
とを私は望みます。
私のビルにそれができるなら、あなたがたのビルにだってできるはずです。
さて、これまでは長く甘美な夜、そして甘い年月の連続でした。
卒直にいって、私が今どうしてここにいるのかわかりません。
私には全知もありません。
といって、ゴスペル(福音)もありません。
楽にできる方法も持っていません。
そしてお答えすることよりも、お聞きしたいことのほうが多いのです。
私が、生存しているコピーライターの中でも最年長のコピーライターにひたすらなりたいと望んでい、次に新たなるアイデアを得られそうもないという不安をかかえてそれぞれめ広告を処理していたころの広告を10,000ばかり思い出します。
どちらの点からも私は正しかったのでしょう。
私はある代理店で数年送りましたが,ここでは私は広告をうまく完成することはできず、自己防御のために、優秀馬にどうやってハンディキャップをつけたらいいかということを学んだのです。
私がDDBで仕事を得たのは、それまでにやってきた仕事のおかげではなくて、一度も掲載されたことのないラフのおかげでした。
私はフレッド・パパートと組むために、ジョージ・ロイスとDDBを去り、広告の最上の仕事を去りました。
私は愚かだったのです。
ひと月で行きづまってしまうところでした。
私は、いつも、どの広告がいちばん人をひきつけられるか、それとも、人の注意などぜんぜんひきつけないかを推定することができます。
でも、この壇に上がっては、ケイシー・ステンゲル(元ヤンキースの監督で、でたらめや、つじつまのあてわないことばかり言ったり、したりしたのでステンゲリズムという言葉さえできたほど) と同じようになってしまいました。
私たちの代理店の信条は「誠実こそ最大の武器」です。
そして私たちには人びとを退屈させる権利があるとは思えません。
本当のことを言い、それを興味深いものにしなればなりません。
広告には神秘性などありません。
人間の方程式があるのみです。
私はここにいて、あなたがたはそちらにいらっしゃいます。
そして私はあなたがたに私の考えていることを話しています。
でも、それは、ほとんど本にする価値のないものですが。
もし私がメッセージを残すとしたら、これです。
「シンプルであればあるほどよい。形式と内容とがひとつのものであり、全く同じものになるくらいまでシンブルであれ」
私のパートナーとPKLのすべての人に、私を見識のある代表者としていまの地位につけてくださったことのお礼を言わせていただきたい。
それにもまして、今晩、私に『殿堂入り』の名誉を与えてくださった方がたに。


雑誌広告

TV−CM
声:コティから、ひとこと。
アリス・ゴーストリー:言いなよ。
:コティのクレメスティックについて、ひとこと!
アリス・ゴーストリー:コティってだれさ? クレメスティックがなによ?
声:コティがクレメスティックをつくりました。
そして、コティ・クレメスティックは、あなたをジョーイ・-ザートンのように見せてくれます。
アリス・ゴーストリー:私は、どうせ、だめだろう?
(アリス・ゴーストリーが、ジョーイ・-ザートンに変わっていく)
アリス・ゴーストリー:ありゃ、きいたよ!