創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法](10-3)

ホームページにすべきことを、ブログでやっています。
ブログは「日記」と思いこまれています。日記は、書いた当人以外は、まず、読み返しません。これは、それに逆らって、いつでも読み返す---あるいは、今日、このブログの存在に気づいたら、これまでのコンテンツに遡って読めるようにしています。
カウンターを確かめると、幸いなことに、アクセスされたほとんどの方々が、過去の記録に遡っていらっしゃいます。ありがたいことです(なにも、ぼくがお礼をいうことはないのですが---報酬を目的としてなんかいなのですから)。
休みの日には、じっくり遡って、クリエイティブに挑戦した人たちの奮闘の歴史をご賞味ください。賞味期間はないコンテンツばかりのはずです。


第10章 コピーの長さ(10-3)


忙しすぎる


電報も読めないほど忙しすぎる? あり得ませんね。
だれひとり、電報を無視しません。電報こそ、
ビジネスマンが使うことのできる、もっとも
強制約で、伝達効果の高いものです。
はっきりした反応がほしかったら、電報をおうちなさい。


(一昨日と同じ黄色い電報用紙です)

電文コピー


エスタン・ユニオン社の電文式コピーですが、広告用語で「電文コピー」といった場合は、短かいコピーのことを指します。
ですから、いくら電文のようにといっても「カネスグオクレ」式の文章のことではありません。
広告主のなかには、「なるべくコピーの量を少なくしてくれ。多いコピーは読まれないから」という人もいます。
この要求は、2つの点で誤っています。
理由の1つは、コピーの量が少なくてもすむ製品および媒体のことを知った上でなければ、少ないコピーが勝つとは限らないことです。
理由の2番めは、おもしろいコピーが、ラクに読めるようにレイアウトされてあれば、人は長いコピーでも読む。
という事実を忘れていることです。


一般的にいって、短いコピーが許されるケースというのは、M・デボーによると、


(1) その広告が、日用品に関係するとき
(2) その製品が、構造も用法も手入れも簡単なとき
(3) そのブランドに、際立った区別がないとき
(4) その製品が、些細な利便しか捷供しないとき
(5) その製品の価格が、低いとき
(6) その広告が、新聞に載るとき
(7) ラジオやテレビのコマーシャルに使うコピー
(8) そのコピーが、屋外広告に使われるとき
(9) そのコピーが、車内吊りに使われるとき
(10) そのコピーが、富やレジャー時間の多い人びとに読まれる雑誌に載るとき
(11)広告主の目的が、自社のブランドに対して好意ある態度をつくることにあるとき
(12) そのコピーが、間接的行動を目的とするとき
(13) その販売活動の大部分が、セールズマンや販売店によってなされているとき
(14) 広告主が、最大限の問いあわせを求めているとき
(15) そのコピーが、その製品の愛用者に向けて書れているとき
(16) その会社とブランドが、古い歴史をもっていて、そのブランドが愛用者の広い信用をかちえているとき
(17) そのコピーが、推論または「示唆」の手法を用いているとき


J・W ・トンプソン社のコピー・グループ・ヘッドであったJ・ラボーティ氏は、「長く書くことは短かく書く練習になる」といって、初めから短かく書こうとしないで、まず長く書けるコピーライターになれ、とすすめています。
(注:Planned and Edited by Elbrum Rochford Erench"The Copyriter's Guide" Chater 29, From the Horse's Mouth, by herself. 1956)


短かいコピ-を書くときの注意は、まず、盛りこむテーマを整理することです。
1つか2つ、3つぐらいが限度でしょう。
それから、文節を短かくすること。
できれば、記憶に残り、ふとしたときに口に出るような文句を入れておくと効果的です。
短かくするあまりに、修飾語をあまりにも少なくしすぎるとギスギスした感じになって、かえって反感を呼びがちです。
が、なににもまして重要なことは、アートディレクターとの協力でしょう----すなわち、絵とうまく結婚したコピーでなければいけません。
それには、コピーライターが「ビジュアルな目」をもっていなければなりません。
ところで、短かいコピーとは、いったいどれぐらいのコピー量のことなのか? 広告スーべスや媒体にもよりますが、
米国では一般に、36語から120語ぐらいまでのものをいい、35語以下はきわめて短かいコピーと呼びます。
エスタン・ユニオン社のものは、きわめて短いと呼べる例です。


引例をもう一度、読んでみましょう。

忙しすぎる


電報も読めないほど忙しすぎる? あり得ませんね。
だれひとり、電報を無視しません。電報こそ、
ビジネスマンが使うことのできる、もっとも
強制約で、伝達効果の高いものです。
はっきりした反応がほしかったら、電報をおうちなさい。


原文は、ヘッドドラインとも、34語です。


 明日は、長いコピーの項。


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