創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法](9-3)


クリエイティビティについて、いろんな分野で活躍していらっしゃる方々と語りあいたいと、このブログを立ち上げて2年---ようやく緒についたようです。
システム建築家の方、ふしぎな写真家、IT設計家、経営学の先生、広告企画者、コピーライターなどなどが発言してくださるようになりました。曲りかけている腰をのばして、あと、ひとふんばり。


第9章 コピーの強調(9−3)

主役の登場回数

1961年1月20日号の『プリンターズ・インク』誌で、ハル・ステビンズ氏は、アレレストの、枯れ草熱の原因となる草々を集めた広告「このページのどの辺を見ると、クシャミがでますか?」を論評しました。ロサンゼルスのハル・ステピンズ代理店の社長である氏のことは、第6章の[セリソグ・ポインツ]の項で紹介ておきましたが、再度ご登場ねがったのは、その昔、氏が優秀な内科医であったという経歴から、アレレストという薬の広告に関する彼の意見を聞いてみるのもおもしろいと思ったからです。


私は、アレルギーについての一つの定義をもっている。それは「医者をして話したがらせ、患者をして聞きたがらせる」というのだ。
しかし、人間がクシャミをしたり、ぜいぜいする---このことについてはおかしい点はない。人間なら本に書いてあるだけの麻疹にもなろうし、間歓的に免疫であることもあろう。だが、ひとたび悪い風が有害な花粉を吹き飛ばすと、一刻も早い助けを求める。
これは、このPKL社が創造したファーマクラフト製薬会社の雑誌広告についての重要な前提である。


あなたはこのページのどの辺を見ると、クシャミがでますか?


というのが、目をひくヘッドライン−−− 野草を身近なものとして扱ったからというだけでなく、写真にある16種の有害植物を明確に指しているという点で---。
結論は、ホシは自分で見つけ出せ。
その上、テキスト(本文)がテキパキしていて、わかりやすく、ユーモアに富んでいる。こんな調子である−−−

【再録】


あなたはこのページのどの辺を見ると、クシャミがでますか?


草には4,000もの種類があります。雑草や木もいれたら、もっともっとの数。そのすべてが春と夏に受粉します(大きな雑草だと5時間に8億もの花粉がつくれるのです)。あなたが枯草熱にかかってしまっていらっしゃったら、もうチャンスはありません。クシャミをしていらっしゃい。さもなくば(お金があったら)大洋を航海していらっしゃい。あるいは(1ドル25セントお持ちなら) 今すぐ、アレレストが飲めます。この新しいアレルギー用錠剤は咳、クシャミ、涙、水鼻、アレルギーでかゆい目を鎮めます。アレレストはアレルギー用、アレルギー専用です。風邪用の錠剤やカプセルで、こう言いきれるものはありません。アレレストはミルウォーキーで「街がクシャミを止めた」と紹介されました。 アレレストを続けてお飲みなさい。 さて、このページを見てください。息を深く吸って--ね。もうクシャミが止まっているでしょう。24錠入り1ドル25セント 48綻入り2ドル25セント
アレルギーにはアレレスト


読者をひきずりこむこと疑いなし。この広告こそまさにスタートすべきところから、つまり、 クシーャミをする側の立場から出発している。このコピーは自家療法ということをあまりまともに出さないように、十分に配慮して書かれている。だから専門医の気分を害することもない。
ついでに、ここでのミルウォーキー云々が、別のばらしい広告をつくらせたことにも触れておこう。
街全体がクシャミを止めた! というのがストッパーである。
一読してみたまえ、諸君!


「去年の夏,ミルウォーキーはクシャミを止めた」


もし去年の夏、セントルイスに住んでいらっしゃったら---そして花粉症(枯草熱)にかかっていらっしったら---どうなさったでしょう? 300ドルかけて山へお逃げになった? あるいは大洋へ船旅に? こちらは,500ドル。さもなければ、クシャミしつづていた?
けれども、あなたがミルウォーキーに住んでいらっしゃっても---そして花粉症(枯草熱)にかかっていらっしゃっても---山だの海だのへ行ったり、クシャミをすることはなかったのです。アレレストをお飲みになったでしょうから。 1ドル25セント出して。
アレレストは、アレルギー用の新錠剤で、去年の夏、どれくらい売れるものかと、ミルウォーキーで市場テストが行なわれました。結果は驚くべし、市民はアレレストを試した、もっと欲しいと薬局へ押し寄せたのです。友人に話すと、その友人がさらに友人へ話した---というしだい。
花粉症(枯草熱)の最盛期には、ミルウォーキー中の薬局がアレレストを売りきってしまいました。「やっと私は呼吸できるようになりました」とあるご婦人がお手紙をくださったものです。

(以下は---
花粉症(枯草熱)の原因とその対症療法について、と、
アレレストを症必要としない都市と地域のリスト、なので省略)




"Last Summer Milwaukee Stopped Sneezing"

If you lived in St. Louis last summer, and you had hayfever, what did you do? You went to the mountains. $300. Or you took an ocean voyage. $500. Or you sneezed.
Ifyoulived in Milwaukee, however, and you had hayfever, you didn't have to go to the mountains, or to the ocean, or sneeze. You took Allerest. $1.25.
Allerest is a remarkable new allergy tablet that was market-tested in Mihvaukee last summer to see how well it would sell. The results were astonishing. People tried Allerest, came back for more, told their friends who told their friends; at the height of the hayfever season, druggists all over Milwaukee had run out of Allerest. "At last I'm able to breathe again," wrote one lady.


WHAT IS HAYFEVER: To understand why Allerest works, consider what hayfever is. Itis an allergy, set off by pollen. (And what is pollen? The male fertlizing agent of the flowering trees, grasses, weeds. A large ragweed plant produces about 8 billion pollen grains in 5 hours.)
Some people react'to pollen, others don't. It's a matter, in part, of heredity. If you do react, pollen attacKs the mucous membranes and histamine is released, dilating the capillaries.
The bpdy tissues respond in paroxysms of sneezing, nasal congestion, lacrimation, runny nose, itching of the eyes.
You've got hayfever, and you've got it bad.


HOW ALLEREST WORKS: Allerest treats allergic responses as close to their source as possible. Two antihistamines (Chlorpheniramine Maleate 1mg.;Methapyrilene Fumarate 5mg.) check histaminic action. A vasoconstrictor and decongestant (Phenylpropanolamine Hydrochlorid 25mg.) constricts capillaries and shrinks nasal membranes. This remarkable drug.
also quiets coughing and discourages drowsiness. Vitamin C is contained in therapeutic dosage along with calcium (as Calcium Ascorbate 37.5mg.) to strengthen capillarydefenses.
Are there doctors in the audience? You can judge the efficacy of the Allerest formula. Everything in it is directed against allergy.


NO COLD TABLET CAN WORK AS WELL.Part of Allerest's virtue is
what it doesn't have. Unlike cold and sinus.tablets, it contains no aspirin (some people are allergic to it). No Phenacetin or other analgesic. No caffeine. No barbiturates. No habit-forming drugs. There are no side effects for most people; not a yawn in a bottle.
This summer, millions of Americans will find Allerest calms the cough, the sneeze, the tears, the runny nose, the itchy eye of allergy, whether induced by pollen, dust, feathers, dogs, cats, or your wife's make up. Some pepple use cold tablets to relieve allergy; they can't work as well as Allerest.
Children can use Allerest too. One or two tablets are usually effective for hours.


ステビンズ氏の論評はこれで終わっています。そこで私は、氏に敬意を表して、ミルウォーキーのにつづくメッセージを、お目にかけることにしました。 もっとすごいヤツ。まさに全米中のクシャミを止めた---とでもいわんばかり。
この広告がそれです。


去年の夏、
Ames, Bay City, Cape Girardeau, cedar Rapids, Champaign, Charieston,
Chicago. Cincinnati, Cleveland, Columbus, Dallas Davenport, Dayton,
Des Moines, DetroIt, Evansville, Flinf, Ft.Wayne, Ft.Worth, Grand
Rapids, Harrisburg Houston, Huntington, Indianapolis, Kalamazoo,
Kansas City, Louisville, Madison, Milwaukee, Minneapolis, Omaha.
Peoria, Pittbburgh, Quincy, Rockford, Rock Island, Saginaw, St.Louis,
South Bend, Steubenville, Terre Haut, Toledo,Wheellng & Youngsfown"
のクシャミを止めました。



もし去年の夏、ニューヨークに住んでいらっしゃったら---(以下同文)


この活字のみの2点の広告の共通コピーは、うまいと思いました。が、ステピンズ氏のような医学知識がありませんから、「専門医の気分を害することもない」かどうかは知りません。
雑草の写真の広告を私がうまいと思ったのは、ヘッドラインも含めてわずか140語ばかりの文章の中に、クシャミという語を6回、アレルギーという語を5回、アレレストという銘柄名を5回も出しているコピー・テクニックです。
記憶させたいことばを、一つの広告の中に何回も出して強調するやり方は、効果的なやり方です。すなわち、コピーの強調の一手段です。


★あすは[強調の理論」の項


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