創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法](6-了)


M.デボー準教授 ”Effective Advertising Copy”輪読会で指導を受けていた50数年前、「学者というのは、なんとも回りくどい考え方をするものだなあ」と嘆息していました。コピーライターには、具体的な用語で語りかける習癖が身についてますからね。
その後、自分が教壇にも立つことになって「回りくどい」ではなく「抽象化能力にすぐれているのが学者なんだ」と感嘆するようになりました。もちろん、ぼくが身につけてしまっていた具体的語り口は直りません。まあ、「広告コンセプト」のクラスなので、それで押し通しました---抽象化はほかの学者先生方にまかせて。


いい返し!



『彼の襟の下の、あのすごいシワを見たかい?』
  「うん。それがどうかした?」
『襟が高すぎると、ああなる』
  「ふーん」
『売った店で、ぴったり合わせなかったんだな』
  「だろうな、ふむ」
『ぼくもバーニイズで買うようになるまでは、あれで困っていたんだよ。
あそこの仕立ては、まったく選りぬきなんだ』
  「結構だね」
『その上、76人の昔気質の寸法直し縫製職人がいてね。こいつらは完全に
合わせるってことにひどくご執心でね』
  「ぼくのテーラーもそうさ。で、何か言いたいわけ?」
『キミも、バーニイズに行かなくっちゃ、ね』
  「なぜさ?」
『ものすごいシワが、キミの背中の襟の下にあるからさ』




BACK TALK!


"See that awful wrinkle his collae?”
 "Yes. What about it?"
"Comes from the collar being too high."
 "So?"
"So they just didn't alter it properly."
 "Probably."
"I used to have the same trouble myself until
I started shopping at Barney's.
Their fitters are real lint-pickers"
 "That's nice."
"And they have 76 old-world alteration tailors
who are positively obsessive about perfect fit."
 "So's my tailior. What else is new?"
"You really ought to try Barney's."
 "Why?"
"You've got an awful wrinkle back there
under your collar."



コピー・プラットフォーム(つづき)


・共通のセリング・ボインツ

(1) 識別資料---総称的かつ銘柄上の会社名、製品名
(2) デザインとデザインの特徴
(3) 製品に含まれている特別な原料
(4) 製品の生産に使用した原料の質的レベル
(5) 長さ、幅、厚さ、面積、などの大きさ
(6) サイズ
(7) 製品の構造
(8) 製品の生産に携わった人の熟練度、経敏度、技香
(9) 生産工程
(10) 生産に採用した特別な方式
(11) 品質の均一化<品質管理の程度
(12) 製品変更や改良についてのニューズ
(13) 今までの検査ではわからなかった、かくれた品空とか、見逃している品質
(14) 色彩
(15) 型、型式、変種
(16) 晶質などの等級
(17) 質感
(18) 香り
(19) 溶解性
(20) ビタミン含有量
(2l) 使用時、運転時の製品の効率
(22) 製品テストの資料
(23) 特別な、あるいは新しい用途
(24) 競争製品の種類やブランドからの識別性
(25) 独自な特色,識別的特色
(26) 値段---正価と特価
(27) 在庫数
(28) 組み合わせ


また、製品以外のものとしては、


(1) パッケージとかラベル
(2) 契約証と保証
(3) 郵便注文、電話注文制度、ネット注文
(4) 月末払い、月賦払いなどの支払い制度
(5) 配達サービス
(6) 据えつけ、修理サービス
(7) 工場、生産設備
(8) 会社の歴史、発展、信用
(9) 生産、マーケテイングのための研究機関
(10) 経営、経営陣の手腕と経験
(11) 財務内容


と、なっています。
(注:11のネット注文はchuukyuuが追加しました)


注意しておきますが、M・デポー準教授が挙げた39の素材がいつでもセリング・ボインツとなるわけではなく、うっかり、ナマのまま放り出すと、いわゆるアドバタイザーズ・コピー・・・広告主の広告・・・になってしまうことです。
たとえば、


いい返し!」


は、コピーの形が客同士の対話形式だから、客のうける利便が強調されているわけではありません。背中にシワがよらない・-・-という利便を襟が高すぎない仕立て、76人の昔気質の寸法直し職人というセリング・ポイソツで証明しているから、アドバタイザーズ・コピーにならなかったのです。
コネチカット大学の広告学のR・スミス教授はこういっています。「トーキング・ポインツを強調するな、バイング・ボインツを強調、 つまり、 利便を強調せよ」。
トーキング・ボインツとはセリング・ボインツと似たものでしょう。


 
chuukyuuアナウンス第7章 コピーと調査は掲出ずみです
明日からは、第8章 コピーのユーモア をとりあえず置いて、第9章 コピーの強調 を掲出します。 


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