創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法](6-4)


1960年ごろ、ニューヨークを起点として、[広告クリエイティブ革命]ともいえる変動の波が起きていました。その実情を日本へ報らせるには、日本の広告例を引くわけにはいかなかったのです。革命の現場から例をつかんでくるしかなかったのです。それがたまたま成功し、いま見ても、なんとか見るに耐える図例になっているのではないでしょうか。


土曜日、
10時18分、
デーラン発


この人はいつも、勤務時間中にバーニイズ出かけるように、やりくりしています。けれども今は6月、夏服選びのためにほんの1分間も−− 夕方でさえ時間を割くことができないほど忙しかったのです。そこで、土曜の朝、街へお出かけ。なぜ、とくにバーニイズ? この人を17番街までおびき出すものは「お値打ち」だけでしょうか? それもあります。が、この人は最良のものを選ぶためには「プレミアム」を払う主義なのです。その点についてバーニイズならご安心: 米国でもっともすぐれたブランドの洋服といわれる40銘柄の中から品選びができること−−フィットについての完全主義者であること−−当店にある数百ものスタイル、色、柄の中からあなたのサイズを選ぶにあたってはきびしいになれること−−などなどの満足感が得られます。ただいま、もっともスマートで、もっともフレッシュな夏服が2,100種以上も揃っています。バーニイズでは毎日いらっしゃるたくさんのお客さま(郊外からの多数のお客さまもふくめて)のためには、それほどの種類が必要なのです。けれども、私たちの念のいった応対ぶりからあなたは、ご自分こそただ一人の上得意とお考えになるのではないでしょうか。

注:マンハッタンに勤める中級以上のビジネスマンは、北部郊外のコネチカットとか、ウェストチェスターとか、デーラン、さらにはロング・アイランドなどに住み、列車で通勤している




THE
SATURDAY
10:18
FROM
DAERIEN


Normally he manages to get to Barney's during office hours. But here it is June and he hasn't had a minute to choose his summer suit-not even an evening. Hence the Saturday morning trip to the city. But why to Barney's in particular? Is it simply the values that lure hikm to Seventeenth Street? Hardly. In most things, he's accustomed to paying a premium for the knowledge that he's buying the best. That's what is so reassuring about Barney's: the satisfacation of clothing from 40 of the most distinguished clothing brands in America...of being an utter perfectionist about fit...of being hyper-critical in selecting

コピー・プラットフォーム


製品特質と製品利便の関係については、すでに第2章の「コピーのプラン」で、コピー・プラットフォームという用語を解説しながら、述べておきました。


コピー・プラットフォームというのは、広告の日的書・企画書にしたがって、コピーライタ-が作成しなければならない表で、製品利便を製品特質で証明した、コピ-の貸借対照表ともいいましょうか。


と説明しました。
二項目の表のうちで、読者に訴える力があるのは、製品利便であることは、いうまでもありません。
が、実際問題、コピ-ライターが、このコピー・プラットフォ-ムを作成するとき、手にしているのは、工場の設計部や、マーケテイング部からまわってきた、製品特質の一覧表であることが多いのです。
ライターは、その一覧表を手がかりにして、それらの特質を、セリング・ボインツとして使えるものと、ただたんなる特質にすぎないものとに区分けしていきます。
その過程では、実際に製品を使ってみたり、工場へ出かけて設計担当者や生産担当者と話したり、生産工程を見学するほか、販売店へ出かけて店主と話したり、一般消費者と会って現製品の不満をきいたり---といった、から語り伝えられているリア1)ズムの方法をとることもあれば、いろんな調査報告書を読み返す学究的アブローチをすることもあるわけです。どの方法に重点を置くか、それはそれぞれのライターの主義と習慣と時間の問題でしょう。たとえば、


ウェストチェスターから、パーニイズ経由で、ウォール街---


土曜、10時18分、デーラン発


などは、じつにそうした顧客がいることを店主とか、店員とかからきくなり、ライター自身が知っているなりしてできた広告でしょう。もっとも、この2つの広告はバーニイズの店の顧客階層を引きあげようという目的に沿ったものであることはいうまでもありません。

製品利便と製品特質の関係は、39番サイズの広告とほとんど変わっていません。つまり、すでにできあがったコピー・プラットフォームにしたがって、このライターはドラマを探がしたことになります。こうしたケースも意外に多いのですが、ときどき、できあがっているコピー・プラットフォ-ムを検討してみることも大切です。
客観状勢が変化している場合があるからです。
M・デポー準教授がセリング・ポイソツとなるべき素材を挙げています。この表を使って、今あなたがコピ-を書いている製品の、コピー・プラットフォ-ムを再検討してごらんになると、おもしろい結果がでましょう。


未完。明日はM.デボー準教授が作成したセリング・ポインツとなる素材一覧リスト


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