[効果的なコピー作法](5-3)
[:W80]米国VW社が本格的に活動を始めようと決意したのは1959年の春です。経営陣も一新。広告代理店にはその実績によってDDBを選びました。社長のバーンバックさんとともにスタッフが(当時)の西ドイツ、ウルフスブルク工場へ出向き、数日間にわたるオリエンテーションを受け、生産過程を見学して、このクルマについて何をいうべきかを学びました。「これは正直なクルマ」であるということを、どう伝えていったでしよう。その経過は、拙編著『クルマの広告』(ロング新書 950円:税共)をご覧ください。
第5章 コピーの流れ(3)
■シリーズ広告の[流れ]
初回に、【例21】の広告を「1分間だけご覧ください。いまは、3点のイラストレイション(写真か絵)だけをごらんください」といいました。
あなたには、今はもう、そのわけがおわかりになったでしょう。そうです、あの広告に使われた3点のイラストレイションは、別々の広告のメイン・イラストレイションとなって使われていることを暗示しておいたのです。
その使い方も、『ライフ』誌の掲載日をもとにしますと、
Why the engine in the back? | 1959.08.10号 |
Why are people buying---? | 1959.08.17号 |
Can you see the 27 changes? | 1960.10.03号 |
Why are so many people---? | 1960.03.14号 |
というふうです。Can you see--- ?をのけて、あとの3点---Why---で始まっているヘッドラインが、ケーニグ氏のコピ−ですが、そんなことより、この事実から、1,200語、8ブロックのコピーからなるWhy are people buying----?の広告が、じつは、3点の広告の集合体であることにお気づきでしょう。
集合体といっても、この広告以前にはWhy the engine---? ともう1つしか掲載されていないのですから、残りの6ブロッックは分化して、これ以後に制作されたというのが正しいいい方ですが---。
それともう一つ。この4点の広告のヘッドラインがすべて疑問形になっている点にご注目ください。疑問形であるということは、例証的な流れのテクニックであることを意味します。
第3章「コピーのテーマ」の中の、[シリーズのテーマ]で、シリーズ広告が統一的印象を与える要素には、媒体使用計画---平たくいえば出稿量と期間という、外的要因も大きく影響するので、単独原稿の場合と同じには扱えないと書きました。
そうはいっても、制作部門に関する問題が皆無というのではありません。ビジュアル面での統ー感もそのーつですし、コピーの面でのテーマの扱い方のテクニックもあります、と書きました。
そして今回は、これにもうーつ、コピーの流れのテクニックの統一というのを加えたいと思います。
ついでですから、カットに使った【例20】の広告文を紹介します。
なぜ、エンジンが後部にあるのでしょうか?
在来の車は、フロント・エンジンの力を長いドライブ・シャフトを経て後車輪に伝えます。
フォルクスワーゲンのリア・エンジンは、後車輪にじかに力を伝えて、重さと力を節約しています。
このデザインが、いちばん効果的で経済的なやり方だということを、窓ごLにVWのししっ鼻を見ながら運転していて、あなたは思いあたりましょう。リア・エンジンは、後車輪にうまく牽引力をもたらします。ほかの車がスキッドするぬかるみ、砂地、氷上、雪道でも走ります。
フォルクスワーゲンのエンジンの特長のうちで、リアにあるということは、とりたてていうほどのものではありません。たとえば、それが空冷式という点を考えてみますと、こいつはすごい利点です。夏に沸騰したり冬に凍結する水が不要、不凍液も不要、ラジエーターのごたごたもなし---です。
エンジンは、アルミニウムとマグネシウムの合金の精巧な鋳造で、すごく軽くて力があり、重さは198ポンドですが、車体を走らすにはこれで十分です。
摩擦が最小限にとどまるように設計されており、次のオイル交換時まで補給しないですむはずです。というわけで、トップ・スピード時と巡航速度時の摩擦状況が同じなのです。
あなたのVWは、時速100kmで1日中、苦もなく走りつづけます。リツターあたり正味10.6kmです(普通のガソリン---普通の運転で)。【chuukyuu注】米国VW社が広告代理店としてDDB社を指名したのは1959年5月です。キャンペーンの開始は、その年の8月3日の『ライフ』誌に掲載されたのが第1陣、これが第2陣---ということは当時、リア・エンジンが米国人になじみがきわめて薄かったということです。
Why the engine the back?
In conventional cars, a front engin turns the rear wheels through a long drive shaft. But Volkswagen's rear engine gives direct" power to the wheels, saving weight and power. It is the most defficient and economical design. It means greater visibility when driving -- you see over VW's snub nose. And the rear engine gives your rear wheels better traction. In'mud, sand, ice, snow, where other cars skid, you go.
Its location, however, is the least unusual feature of the Volkswagen engine. For one thing, it is air-cooled, on astonishing advantage when you think about it. No water to boil over in summer, or to freeze in winter. No anti-freeze needed. No radiator problems.
The engine is ingeniously cost of aluminum and magnesium alloys and is very light and powerful; undoubtedly the toughest 198 lbs. going.
It is beautifully machined for minimum friction; you will probably never need oil between changes. And so efficient that top and cruising speeds are the same.
Your VW runs at 70 mph all day without strain. You get an honest 32 miles to the gallon (regular gas---regular driving).
なぜ、多くの人びとがフォルクスワーゲンの内部をのぞきたがるのでしょう?
明日は、訳文と原文を紹介します。