創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(390)ユージン・ケイス氏との隔靴掻痒のインタビュー(了)


ユージン・ケイス氏
 パートナー, コー・クリエイティブ・デイレクター
 ジャック・ティンカー&パートナーズ(当時)


ジーン・ケイス氏との「隔靴掻痒」のインタヴューはこれで終わります。このあとは、実験的な広告代理店だったジャック・ティンカー&パートナーズ社を訪問した時の印象記を続けましょう。ただし、英文はなし。


コピーライターにとってのテレビと印刷の違い


chuukyuu 「あなたの代理店では、テレビ・コマーシャルと印刷媒体の両方を書かれるそうですね。でも、ライターの中には、この2つのカテゴリーのどちらか一方がより得意だということがあるのではないでしょうか? どちらか一方をやりたいという人が?」


ケイス氏 「ええ、たしかにテレビにつよい人と印刷につよい人がいます。テレビは実際にはそんなに書きません。何がよいドラマか、何がよい喜劇か、それを見分けるセンスです。実際の技術的ライティング能力ではありません。それは、テレビでは大して重要ではないのです。印刷では、よい散文(文章)を書く能力が問題です」


chuukyuu 「もし、あるライターが、この2つの分野のどちらかに弱い場合、彼の弱点を矯正するのになにか方法を講じますか?」


ケイス氏 「いいえ、弱点を矯正する方法なんて私にはわかりません」


chuukyuu 「あなたは、誰か尊敬するコピーライターがいらっしゃいますか? その人から何を学ばれましたか?」


ケイス氏 「私は、ディビッド・オグルビー氏がすばらしいと思います。彼は広告というものを道理にかなったものにしたからです。彼は、広告を、知性ある人が読むに耐えるように書き、説得力のあるものにしたのです。『ああ、また、例によって例の如しの広告か!』という代わりに、オグルビー&メーザーの創設者です」


chuukyuu 「あなたは、一般的にいって、米国の広告の将来をどうごらんになりますか?」


ケイス氏 「私は、その質問に対しては何もお答えすることがありません」


chuukyuu注】オグルビー氏に関する参考文献は、『ある広告人の告白』(西尾・松岡共訳 ダヴィッド社刊がある。ただし6刷後絶版