創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(383)キャロル・アン・ファインさんとの和気藹藹インタビュー(5)


キャロル・アン・ファイン夫人
    ウェルズ・リッチ・グリーン社 取締役副社長・コピースーパバイザー(当時)


作品が完成するたびに不満を感じる


chuukyuu 「今までおつくりになった広告の中から、とくに気に入っていらっしゃるものを2つあげてください。そして、どうしてそれらが気に入っているのか、それをつくっていらっしゃった時のエピソードといったものを聞かせてください」
ファイン夫人 「私はいつも作品を完成させるたびに、何か不服を感じています。これは誰もが持つ一般的な反省だろうと思います。 『どうしてここを、こうやってしまったのかしら。こうやったほうがよかったんじゃないかしら』といった具合に。
私は、このような自問自答はどのコピーライターもやるべきだと考えます。私はいつももっとうまくできたに違いないという後悔に似た気特をおぼえるのですから。
私のもっとも気に入っている広告のうちの一つは、ラブのコマーシャルです。
つい最近できあがり、テレビに放映するようになったものです。これは。今までに見られない新しい種類のコンセプトをもっています。
私がこの仕事を引き受けたのは2,3ヶ月前なのですが、それまでの約1月半、ラブは14歳から20歳までのいわゆるティーン・エイジャーを対象に商品広告をしてきたにもかかわらず、いっこうに売上げが伸びないという問題をかかえていました。
そこですべてを変えてみたい、つまりイメージ・チェンジすることを彼らは望んだわけで、それは対象を25歳以上、とくに25歳から30歳の女の人に重きをおいてアピールしていこうというものでした。大きな化粧品市場の中で、とくに市場占有率の高いレブロンに少しでもくい込めたらと彼らは望んだわけです。レブロンに追いつけ、レブロンにくい込め---。

[恋とラブ・スティック] カミリア・スパーヴ



12時1分、フロイドにお別れのキスをしました。
そして、 ラブ・スティックで口紅を直しました。
12時7分、フロイドにお別れのキスをしました。
そして、 ラブ・スティックで口紅を直しました。
12時19分、もう一度フロイドにお別れのキスをしました。
そして、 もう一度ラブ・スティックで口紅を直しました。
こうすれば、男の人はいつもフレッシュな甘さを感じるのではないでしょうか。
ラブ・スティックはキスしても落ちない口紅です。
それでもこうして塗り直すのは、 そうすればあなたの口唇がいつもフレッシュで、
なめらかでいられるからなのです。


製品が何であるかを明確に提示する---これがハード・セルだと私は思います。
化粧品の場合は、セックスで売り込め、これだと思います。
対象とねらった25歳から30歳の人の、しかも今日式のいわゆるフィーリングといったものはまさしくそれではないでしょうか。そういった点を考えて、私はこの商品を人びとに知ってもらうためのもっとも簡単な方法は、セックスにもとづいたものという結論を出しました。
これはとてもセクシーなコマーシャルの仲間に属しますが、かといって今までに作られているような、愚かしさをおぼえずにはいられないような、あるいは嫌気を感じさせるようなセックス・コマーシャルと同じであるとお考えいただいてはこまります。
全然違ったものなのですから。
まったく新しい分野をきり開いたものなのですから。
これからこのコマーシャルを実際に見ていただこうと思っていますが、そうしたら、このフィーリングがどんなものであるかおわかりいただけると思います。それは、私たちがキャスティングした人びとの中に、あるいはシチュエーションの中に見ていただけると思います.これはほんとうに、私のお気に入りの一つなんですよ。

私が気に入っているもうーつも、やはり、ラブのコマーシャルですが、気に入った理由は、それがとても大胆で、狂気じみたものだからです。普通のセリング・ポイントをつかんでいるにもかかわらず、それをとても新鮮なものにしているからなのです。

[ラブ・フレッシュ・レモン・クレンザー]

新鮮なレモンは肌のためにとてもいいのです。
そしていま、このレモンは肩に、 お腹に、足もつま先まで
使われるようになりました。このビン一つあればいいのです。
ラブのフレッシュ・レモン・クレンザーが
お顔のお手入れにいいのはむろんのことですが,
肩に、お腹に、足にもぜひお使いいただきたいのです。
私たちは、あなたの心をもフレッシュにすることを願っているのです。


これはつくっていてとても楽しいコマーシャルでしたし、実際それを見た人びとを「あっ」と言わせました。これを放送したのは、アメリカの西部地域だけでしたのでアメリカ人全部の反響はわからないにしても、ともかくこの大胆なコマーシャルには見た人みんなが驚嘆させられました。とても効果があったのです」


【参照】2008.03.30〜[化粧品は「ラブ」の2字] (

chuukyuuアナウンス】明日は、 [コピーライターの条件についてのファイン夫人の考え