(314) ボルボの広告(8)
ボルボの広告キャンペーンを読んでいてつい歎声を発するのは、「へえ。日本車に採用されている、あれもあれも、最初にボルボが考えて実現したものなか」ということ。こうして広告でアナウンスしておいてくれると、追随者が、さも自慢げに広告で言えば言うほど、間が抜けてみえるんですね。まあ、多くの人は気がつかないんでしょうが。パイオニアはいつでもツライ。2番手はラクに利をかせぐ。
エド・マケイブ(Edward McCabe)氏とのインタヴュー (2)
クリエイティブ重点が今の流行だが---
chuukyuu「才能のあるコピーライターが、あなたとスカリさんとお組みになったように、よいアートディレクターと組んで小さな代理店を開くのが、最近(1960年代)のアメリカの広告界の流行のようですが---?」
マケイブ氏「そうですね。その理由は、現在、クリエイテイブな仕事に重点をおくのがはやっているからでしょう。私たちが私たちの代理店を開くことになった時にも、やっぱり同じ点に重点をおきましたね。
でも、流行っていうものは、広告界のはやりすたりだからと、私たちはずいぶんリアリスティックな気持でいましたよ。
いいえ、クリエイティブな仕事が流行であるというつもりはありません。
でも、現在、クライアントがクリエイティブな仕事に重点をおいているように、いつかはメディアに重点をおく時代がくるといtヽうことですよ。
ですから、出発するにあたって、私たちは、この両方の分野に十分強い代理店をつくるという心づもりでいました」
マケイブ氏が予言している、メディアに重点をおく時代は、どのような形でくるのでしょうか? くるとすれば、それは広告代理店誕生の形態〔第4期〕を形成するでしょうか?
今(1970)の私には、その方面の知識が少ないのではっきりはいえませんが、Y&Rのメディア部長のバー氏と話し合った時、氏はこういいました。
「1958年から広告界に新しい傾向が生まれ始めました。すなわち、サーチ&デベロップメントのグループが出てきたのです。コンピューターが使用されるようになってきて、その他の要素ともあいまって、とてもソフィストケートされた調査技術が生まれてきました。
しかし、調査の技術が進んでも,、その結果として出てくるものは、必ずしもほんとうの効果ではないのです。
ほんとうの効果というものは、消費者にどんなふうにインパクトを与えるかということなのです.。これは
数字で測ろうとしても測れるものではないのです。しかし、それのほうが重要なわけで、そういう測定をやる人間をふやさなければならなくなりました。こうした事情から、メディアマンの地位が高まり、今日のメディアマンは単にメディアを扱うのとは違って、むしろコミュニケーションズ・マンと呼ばれる人種になっていると思います」
そしてバー氏は、リサーチマン、メディアマン、コンビュータマン、テレビのプログラミングマンなどの、それぞれの分野のスペシャリストが,一つの共通の言葉で呼ばれる段階に発展していくであろうと予言していました。
本稿では、メディアマンのことを紹介するのが主旨ではありませんので、バー氏の発言の全貌については,拙編『Y&R』(ブレーン別冊)にゆずりましょう。
N.Y.ADCによる第57回(1974年)展〔One Show〕でゴールド・メダル受賞したシリーズ
Art director:Robert Reizfeld
Writer:Thomas J. Nathan
考える人々のための車をつくるには、たくさんの人形が必要です。
私たちは長年ボルボの設計を助けるため、人形を雇ってきました。
人形をシートにくくりつけた車をコンクリートに衝突させ、より安全な車をつくる方法を学びました。
こうした実験で、私たちはハイウェー・スピードでの衝撃を吸収して乗客を守るフロント・エンドを開発しました。
3.5トンの力にも平気な3支点シートベルトの完成を助けたのも人形たちです。
そして何時間もぶっとおしで人形のおしりをシートにバウンドさせて、何年もぶっとおしにゆりかごのように快適に座れるボディ・サポート・システムを考案しました。でも何から何まで人形に頼っている訳ではありません。中にはちょっとした常識でコト足りるものもあります。
どんな事にもヘッドレストは付いていますが、ボルボのはすけすけなので後方が見えます。どんな車にもワイパーは付いています。でもボルボは目にまぶしい光ったのではなく、もっと賢明なアイデアが採用されています。
鈍い黒色のワイパー。
その他、ボルボには、4輪パワー・ディスクブレーキ、スチールベルト・ラジアル、燃料噴射装置、そしてコーナーをフラットにスムーズにまわる新サスペンションが付いています。さらに、空気を新鮮にする他に足元も暖め、同時にフロントウインドーの曇りをとる万能の暖房循環装置も。ボルボはガソリン・キャップも改良しました。はめ忘れないようドアの後にホルダーが付いています。
どんなにささいな部分でも熟考されるボルボ。いろんな面を考えて、ボルボが世界で最も熟考されている車だと言っても過言ではありません。
だからボルボが考える人たちに特に人気があるのです。
ボルボを買う人の87%が大卒者。
そして残りの13%は生来賢明な人たち。
ボルボ
考える人たちの車
媒体『ニューヨーカー』誌 1974年12月14日
【chuukyuu注】このインタヴューから、39年の歳月が経ちました。世界の政治・経済の分野にも、コミュニケーションの形態にも大きな変化が起きています。後者の一つは、インターネットの発達・普及です。個人々々がメディアをもち、発信者であり受信者でもあるようになったことです。
個人々々には、企業も団体という個も含まれます。
発信の一つが、ホームページであり、ブログであり、YouTubeでしょう。
いささかおこがましい発言をお許しいただけば、このブログは、単なる日記のつもりではなく、出版と小さな個人図書館と、クリエイティブ塾をかねた、いままでになかったメディアのつもりです。
これに、日々のクリエイティブ界の情報が加わればもっとすばらしいものになるでしょう。それを加えるにはぼくは齢をとりすぎ、資金も底をつきました。若い人が加わってその部門を拡充してくだされば、いいのです。