創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(291)[シーヴァス・リーガルの広告](2)

主役は瓶(製品とパッケージ)、助演はグラス(と氷)、舞台装置はホリゾントだけ---という、一人芝居に近い形で、さまざまな演技(表情と科白)で観手を酔わせる---この名優ぶりを30年近くも演出した一人が、(アートディレクター)バート・スタインハウザー氏です。楽しませてもらった分、拍手を送りたいですね。


シーヴァス・リーガルの良さがお分かりにならないのなら、余分の2ドルは無駄かも---。




If you can't taste the difference in Chivas Regal,
save the extra two dollars.


The New Yorker, February 15, 1964

『日米コピーサービス』誌[シーヴァス・リーガル特集号](1979.1.10号)の巻頭おしゃべりの昨日のつづき

酒呑み、その優雅なケチ精神、そしてDDB


「熟成12年もの」ということをウリにしているシーヴァス・リーガルは、並みのスコッチ仲間に比べると、2ドルほど高かったんですね。
何が12年ものかというと、大体ウイスキーにはモルトといってスチールポットで造ったものを25%入れて、あとは連続ポットで作った雑穀(グレン)ウイスキーを75%ぐらい混ぜて味覚などを調整する。
その25%の方のモルトウイスキーの熟成年を言っているのですね、この12年ものとは。

【chuukyuu注】29年前の知ったかぶり、ということで、ごカンベン。平身低頭。

このようなウイスキーに、酒呑みのケチな心理というものを付加していった。
別な言葉で言うと、商品に一つの人格を与えたということです。


もう半分も飲んだのか、と主人側。
まだ、半分もあるじゃない、と客。

1975.5.26 『ニューヨーカー』



To the host it's half empty.
To the guest it's half full.


”New Yorker" May 26, 1975

A/D Charles Gennarelli

C/W Larry Levenson

これが非常に際立って印象的なんですね、そんな広告手法のものは少なかったから---VWの「正直で朴訥な人格」ぐらいかなあ。
シーヴァスの有名な広告では,瓶に半分残っている写真を出して、主人の方はもう半分飲まれてしまったと思い、客の方はまだ半分も残っていじゃないか---と意欲満々とか、これは酒呑みの、内心は実にケチで、しかも見栄をはる心理をうまくついていると思うんです。

このヴァリエーションもありましてね。


こちらの瓶は半分       こちらの瓶は半分
しか残ってない       も残っている

もしこれがあなたの瓶だとなると、あなたは、
多分、半分しかのこっていないと感じる。

しかるに、友人宅を訪れて、その瓶が同じ状態だと、
あなははまだ半分も残っていると安心する。

1970.9.16『ニューヨーカー』



This bottle is       This bottle is
1/2 empty.       1/2 full.

シーヴァスが減っていくにつれて、
気前のよさも減じていきませんか?

1973.10.13『エコノミスト




Does your generosity decrease in direct proportion to your Chivas.


シーヴァスの隠し場所というものもありましたね。

ガラス張りのリキュール・キャビネットのいいとこは、
シーヴァス・リーガルを見せびらかせること。

ただし、スコッチを呑(や)る人が来ると、それは、
欠点に変わる。

1969.11.16『ニューヨーカー』




One of the nice things about a glass liquor cabinet is that it shows off your Chivas Regal.
Which, when there are Scotch drinkers around, is also one of the bad things about it.


分かるんだなあ、呑まなくっても。
酒呑みのケチというのは、本当なら広告ではタブーなはずなのに、ジャンジャン呑め---というべきところを反対に、非常にユーモラスに衝(つ)いてきたといえるでしょう。

この頃から僕はシーヴァスの広告から、広告というものは広告づくりの上では製品なり企業に人格を与えた広告がいい広告なのだ、その人格がみんなに共感できればできるほどいいのだということを学んだのですね。

友人にシーヴァス・リーガルを出さなくても、軽んじられることはないでしょう。
でも、出せば、重くみてもらえるかも知れません。

1974年11月号『フォーチュン』
1971年2月13日号『ニューヨーカー』




Your friends won't think less of you don't serve Chivas Regal.
But they may think more of you if you do.


The New Yorker, February 13, 1971

他のスコッチよりも栓を外しづらい
ように思えるのは
他のスコッチより栓を入念に
閉めているからでしょうな。

1970.2.14『ニューヨーカー』




If it seems a little bit harder to open
than your other scotches.
It's because you probably closed it a little bit tighter
than your other scotches.

明日につづく


関連記事:
>>DDBのアートディレクター---バート・スタインハウザー
>>バート・スタインハウザー インタビュー「私はいまだに、すべてに初めて挑むような気持ちでアプローチする」


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