創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

[効果的なコピー作法](2-4)


少数の常連の方々から、身にあまるほど、たくさんの★★★をいただいていますが、その30倍から50倍の方は、せっかくアクセスしてくださっても、おはげましの痕跡をお残しにならないので、不安もちょっぴり高まってきています。「やはり、45年前の思案は、もう参考にならないか」と。




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コピー・フォーマット

小さいことが理想.


私たちの小さな車は、最近では、さほどもの珍しくなくなりました。
12人以上もの大学生が押しあいへし、つめこみ競争をすることもなくなりました。
給油所の者がガソリンの注入口を訊いてうろうろすることもなくなりました。
車の外形に目を丸くされることも---ね。
じっさいのところ、私たちの小さな車はリッターあたり11km走るなんてことを信じない人も---。
そう、オイルも5クォートじゃなくて5パイントです。
ええ、不凍液もいりません。
タイヤmも64,000kmはもちます。
ですから、私たちの経済車になされば、こういったもろもろは思案の外になるのです。
あ、駐車スペースは狭くてもいけるし、車の保険更新料も少くてすむんです。修理代も安いんです。車を下取りに出して新車になさるときもお得です。
考えどころですよね。


【chuukyuu注】へッドラインは変わらず、1年後の新ボデイ・コピーAです。さらに新しいBもいずれ掲示します。




Think small.


Our little car isn't so much of a novelty any more.
A couple of dozen college kids don't try to squeeze inside it.
The guy at the gas station doesn't ask where the gas goes.
Nobody even stares at our shape.
In fact, some peop-Ie who drjyamu Ii ttle flivver don't even think 32 miles to the galIon is going any great guns.
Or using five pints of oil instead of five quarts.
Or never needing anti-freeze.
Or racking up 40,000 miles on a set of tires.
That's because once you get used to some of our economies, you don't even
think about them any more.
Except when you squeeze into a small parking spot. Or renew your small insurance.
Or pay a small re'pair bill. Or trade in your old VW for a new one.
Think it over.


コピー・プラットフォームと似たような用語に、コピー・フォーマット copy format という用語があります。
コピー・フォ-マットというのは、一貫した広告キャンペーン、またはシリーズ広告キャンペーンに関連して、そのコピー部分の外見的構造(見ばえ)を基準化しておくことです。
たとえば、フォルクスワーゲンの引例のすべて,そして、ここには引用しませんでしたが、ほかの100点近い(当時での数)広告などを詳細に見てください。

chuukyuu(注)このブログ全体に引用したビートルの作品例だけでもすでに100例を超えています。トップページ左フレームの[カテゴリー]の「DDBの広告」クリック。その中から「VWビートルの広告」を選択---でご覧になれます。


まず、ヘッドラインが総体に簡潔で、暗示的で、力強いことにお気つきでしょう。これは有名なシンプル・へッドライン「Think small(小さいことを考えよ 意訳して、小さいことが理想)」 以来、VWの基準となっている特徴です.「Think small.」や「Lemon」などと「検査同数」とではコピーライターが違うのです.
「Think small.」はかつてDDBにいたことのあるJ.ケーニグ Julian Koenig氏書いたもので、「Lemon」はケーニグ氏とR.セルドン R.Seldan氏の共作、そして「検査回数」はR.レブンソン Robert Levenson氏が担当したものです。
それにもかかわらず、似ている、ということは、そういうコピー・フォーマットができているから可能なのですね。
ヘッドラインだけではありません。ボディ・コピーの特徴的な短いセンテンス、意表をつく第1パラグラフ、実証的な展開、そして最終パラグラフのウィット---いずれも、統一されているように見えます。
つまり、コピー・フォーマットが明文化されていると見ていいでしょう。


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chuukyuu補】「Think small.」は、VWビートルのキャンペーンが立ち上げられた1959年から半年ほど経過したころ、小さな経営誌へ出稿する広告を考えていたケーニグ氏が、仕事を終えて郊外の自宅へ帰宅するためにマンハッタン中央駅から列車に乗ると、同じコンパートメントの向かいに座ったビジネスマン風の男が雑誌を折り返して読んでいた。こちら側に見えている記事のヘッドラインが、当時、米国のビジネス世界でもてはやされていた「Think big.」をあしらったものであった。
瞬間、ケーニグ氏の頭にVWの姿態と「Think small.」がひらめいたという伝説があります。
ま、クリエイターには、完全な自分時間はないという示唆かもしれません。
しかし、20世紀最高の広告がのそもそもは、小さな専門誌のための広告だったとわかると、どんな広告もおろそかにはできません。米国VW社とDDBは、その後、「Think small」のヘッドラインはそのままで、ボディ・コピーの書き出しを変えた広告を『ライフ』誌ほかに出稿,「Think big」がいいことと信じていた米国人に強烈な衝撃と反省をきっかけを与えたというのが真相なんです。『ライフ』誌などに載った変形「Think small.」はまたいつか、ご紹介します。


【chuukyuuのおすすめ】
>>クローン氏の記事スタイル・レイアウト・フォーマット


第2章を終わります。ちょっとお休みをしてから第3章を引きます。あすからは、お酒好きお待ちかね(?)のシーヴァス・リーガルのキャンペーンにします。