(283)DDBが選んだDDB ・・・【DDB紹介[終末宣言]】(9)
やっと、新書の著作が終わりました。今日から、ふだんのスケジュールに戻ります。新著にとりかかっていた8日間のおはげまし、ありがとうございました。とても力づけになりました。ほんとうは、かかりっきりではなく、1日に4,5時間もかけなかったんです。浮いた時間はボーナスみたいなものでした。『孫子』と『甲陽軍鑑入門』(角川ソフィア文庫 小和田哲男さん)を読んでいました。さて、復活は、ジョン・ノブル氏から。それでおもったのですが、バーンバックさんを本家のやさしいおじさんのようにおもい、ボブ・ゲイジ氏やヘルムート・クローン氏を気のいい従兄、レン・シローイッツやロイ・グレイスを兄貴、同様にフィリス・ロビンソン夫人やポーラ・グリーンさんを従姉、ボブ・レブンソン氏や今日のジョン・ノブル氏が兄弟のように思えてきたとき、ほんとうに、彼らの才能まで自分のものになったとおもえるのではないかと。遠い国の人たちと見ているうちは、身につかないんじゃないかと。ジョン・ノブル氏は、これまで2回登場していてます。今日の末尾に、URLを掲出しておきますから、時間があったら再訪してみてやってください。 (写真は『特集DDBが選んだDDB』後編)
「台所に2人の婦人がいるのを目にした瞬間から、人の心はそっぽを向く」
シニアVP兼コピー・チーフ
ジョン・ノブル JOHN NOBLE
問:フォルクスワーゲン、エイビス、ソフト・ウイスキー、アタリ、モービル、そして今のブローバと、あなたの広告にはひとつの共通点があるように---
ノブル:ユーモアでしょう。ユーモアはすばらしい武器ですからね。
問:なぜですか?
ノブル:人びとが映画に求めるものと同じですよ。コマーシャルを見るのは情報を繰るだけでなく、楽しむためもあるのですから。
コマーシャルに楽しさを入れない、恐しく、シリアスなものが横行しています。しかし、1ポンドのバターを売るのに重々しくやる必要があるでしょうか?
ユーモアは好ましさを与えます。それがフォルクスワーゲンのキャンペーンの秘密でした。あの車の好ましいパーソナリティもそれで生まれました。
そしてユーモアは注意をひきます。人びとを目ざめさせます。
問:あなたはモービルのカンから小さな車がいっぱい出てくるCFを出しました。
あれはfunny one-linersからはるかに離れていますね。
ノブル:注目されるために異ったことをやろうとしたからです。これは基本的なことなんですが、驚くほど多くの人がそれを忘れています。
テレビは単調です---台所に2人の婦人がいるのを目にした瞬間から、人の心はそっぽを向いてしまうというのに。
でもシューッという音が聞こえ、缶から小さな車がゾロゾロ出てきたら、人びとは目を止め、「オィ、アレは何だ?」と言うでしょう。
注目されないような広告に数百万ドル投入するなんて、ナンセンスですよ。
問:フォルクスワーゲンは、どのくらいの間やりましたか?
ノブル:8,9年です。ひとつの製品としては長期間です。
問:最も有名な広告キャンペーンを担当するのは、どんな気分でしたか?
ノブル:初めは、その事実を思っただけでわくわくしたものです。しかししばらくすると、DDB以外ではフォルクスワーゲンをやっていることに触れたくなりました。
フォルクスワーゲン"Funeral(葬式)"
パーティでは、すばらしい小説を書いたような扱いを受けるんです。
もうたくさん、何か他の話をしましょう。
問:成功したキャンペーンを続けるのがあなたの仕事だったわけですか?
ノブル:フォルクスワーゲンをTVに紹介するのも仕事でした。誰もがすばらしいプリント広告のことは知ってましたが、当時はTVにはそんなに出てなかったのです。テレビ用全く新しいものを発明しなければなりませんでした。
にでした。有名な One liners をピックアップするだけでは足りなかったのです。
しかし私たちは、フォルクスワーゲンのフィーリング、そしてユーモアを維持することに成功しました。
問:あなたの作品は広告以外のものから影響を受けていますか?
ノブル:映画に大きな影響を受けてます。
どうとはっきりは説明できませんが。私は昔から映画に恋してきました。子供の頃から、次から次へと映画を見てもぜんぜんあきませんでした。
そして家へ帰ると、自分の部屋にこもって、演技のまねをしたもんですよ。
当時集めた印象が今、シーンや、カメラの動きに現われているんでしょう。しばらく前に作ったフォルクスワーゲンのチャーリー・チャンのコマーシャルの漫画なんかにもね。
新しいブローバのラジオ・スポットにもロッキーのようなキャラクターが出てますよ。
映画は俳優に対する尊敬の念を教えてくれましたね。スクリプトがどんなにすぐれていても---死ぬも生きるも、俳優の演技次第です。
問:あなたはある記事に、「クリエイティブ・ピープルを子供扱いするな」と書いていますが、それは26才という年で副社長になって、あなたより年上のアカウントマンたちを相手にしてきたことから出た言葉なのですか?
ノブル:それはクリエイティブ・ピープルの持っている子供らしい無邪気な自由と率直さに関係するのですが、中には子供っぽさと混同している人もいるんです。だから彼らはクリエイティブ・ピープルを「キッド」と呼んではばかりません。
でもそれは
私たちの仕事には不可欠なんです。目立つ広告を創造するには多少若く、クレージーでなければ---あるいはそう考えなければ---ならないのです。
それにユニークな広告を要求するクライアントを持つ助けにもなります。モービルはポンプの隣りに男を立たせるといったようなものは望みませんでした。とてもガッツのある会社です---上は全長から、下っ端に至るまでね。
話すガソリン---車が1台も見あたらない地球の絵といったものでもやってのけようとします。
問:ひとつのアカウントを長年やっていると、フレッシュさ、おもしろさを保つのに苦労するでしょう?
ノブル:広告のいい所は、毎日が違うということです。全社へ行って毎日同じことをするというのではありません。ここでは、私は毎日新しい方向を向いています---違うアカウントの仕事をすることもあるかもしれません。
モービルの前のコマーシャルをどうしたらしのげるか考えているかもしれません。
私は私自身、そして他の人と競い合っています---好意的なやり方でね。初めの頃は、新しい広告を持ってホールへ走り出して行き、見せびらかしたもんですよ。
「これをしのげるか?」ってね。
それにアド・マンは非常に刺激的です---一次元的でなく、楽しく、ユーモラスです。ロイ・グレースやスーザン・カルホーンとなら何時間座っていても、次から次へとおもしろい話題が出てきますよ。うまくいった結婚みたいなもんですね。
問:最近では、ラジオ・コマーシャルの仕事もなさってますね。1人で仕事するのとは違いますか?
ノブル:でも私は、ラジオでも1人ではやりません。やっぱり担当のADやプロデューサーなど、そのアカウントに通じており、 しかもいい趣味を持っている人と一緒にやった方がうまくいくからです。
広告はコミュニケーションであり、自分のために書いているのではないことを確かめたくなるものです。反応(リアクション)が欲しいんです。