創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(175)フォルクスワーゲンの広告(77)

製品の全貌を見せないで、製品を語るという、凄腕のクリエイティビティ・シリーズ---第15弾。VWビートル・キャンペーン史上では、なんと、第弾目。1959年末、世間はクリスマス気分の中に、しごく生真面目な顔つきで出稿された。

「販売の第一歩は教育」 「信念!」 「まず、サービス拠点」「教師は風格!」とお感じになったら、星マークの添付 ☆クリック→ をお忘れなく。




ゲルハルト・ベッケルがフォルクスワーゲンについて教えます。
(あるいは、フォルクスワーゲンのサービスが車におとらずよいわけを)



ゲルハルト・ベッケルは、ドイツのウルフスブルク(VW本社所在地)で講習を受けて、今は米国でフォルクスワーゲンについて教えています。多くの教師と同じうにゲルハルトは、自分の教えていることは正しいと信じています。彼は(車のよさはサービスのよさによって決まる)という、フォルクスワーゲン社の社是に心から傾倒しています。
ですから、米国の皆さん、皆さんはフォルクスワーゲン社が決めた過程をすっかり修めるまでに、みっちりと訓練された作業員によってのみサービスされていることを納得なさるでしょう。
フォルクスワーゲンのサービスは迅速です。エンジンは90分間以内に交換されます。フュエル・ポンプの取りつけなら20分間です。
フォルクスワーゲンの全ディーラーは、VWの全部品をいつでも手持ちしています。お待たせすることはありません。ほかのもので代用することもありません。
フォルクスワーゲンの部品は安くつきます。フロント・フェンダーの新品でも21ドル75セント、シリンダー・ヘッドは19ドル95セントです。
今もし、あなたがフォルクスワーゲンを買おうと思っていらっしゃるのなら、車にまけずおとらずサービスもよい---ということもお知りになって、もうかっちゃいましたね?




Gerhard Baecker teaches Volkswagen
(Or why volkswagen service is as good as the car)


Gerhard Baecker schooled in Wolfsburg, Germany, now teaches Wolkswagen in the United States. Like most teacher, Gerhard believes in what he teaches. He shares whole-heartedly the Volkswagen philosophy the car is only as good as the service it gets.
As a result, you'll find Volkswagen are serviced only by graduate mechanics trained to demanding Volkswagen standards.
Volkswagen service is fast. Your Volkswagen engine can be removed and replaced in 90 minutes. A fuel pump installed in 20.
Every authorized Volkswagen dealer has a complete inventory of VW parts on hand. There's no wait. no substitution.
Volkswagen parts are inexpensive. A new front fender is $21.75, a cylinder head $19,95.
If you've been thinking about buying the Volkswagen, isn't it nice to know service is as good as the car?


ビル・トウビン氏の略歴---40年前当時】DDBのVP兼アート・グループ・スーパバイサー。
ブルックリン生まれ。NYパーソンズ・デザイン学校に学び、ギンベル百貨店、メーシー百貨店で広告を制作。フランクリン百貨店でADをしているとき、DDBから誘われて1956年に入社。ケムストランド、ELAL、フランス観光協会、バクストン、アメリカン航空、ユティカ・クラブ(ビール)などを担当。賞はうんざりするほど得ている。
>>ビル・トウビン氏のスピーチ『あまりにも無秩序な』

ビル・トウビン氏の創造哲学】デザインの新しさは、紙面に描かれた線や点によるデザインの技巧ではなく、世界そのものの反映だと私は思います。デザインは、言葉や音楽や新しい建築物や輸送機関---美しいものやそうでないもの---政治的動乱の中からさえ、霊感を受けて生まれてこなければならないと思います。真の意味でのキャンペーンとは、そのキャンペーンが作られた時期にはどんなビジュアル・テクニックがポピュラーであろうと、そんなことには目もくれないで、アイデアをちゃんと伝えることにのみ、創造性を集中したものであると思います。



ひとりごと写真の主は、ベッケル氏ではなく、ビル・トウビン氏という、DDB広告代理店の重鎮アートディレクター---です。この広告をスクラップしてから7年後に、ニョーヨークを訪れ、それまで文通していたDDBのコピー・スーパバイザーのパーカー夫人が「ウェルカム・ホーム・パーティ」を開いてくださいました。DDBの重鎮クリエイターたちが来てくれた中に、トウビン夫妻もありました。夫人がきわめて謙虚に「chuukyuuさん。こんどもわが家にも来てね」 トウビンさんの自宅はロングアイランドにありました。招かれたのはぼくと通訳の大井孝さん、パーカー夫妻、アーロン・バーンズ氏。料理は、夫人手作りの、コンサーヴァティブ派ユダヤ教徒の家庭料理でした。食後の話題は、パーカーさんのご主人がベル電話会社のプロセッシング部長でしたから、とうぜん、電子文字とコミュニケーションになりました。40年前です。ぼくにはまったく未知の世界で、「インターネットによって新聞がなくなったら、弁当箱が包めなくなる」なんてバカな理解しかできませんでした。大井さんが覚えていてくださったら、確かめてみようとおもっています。同時通訳をしてくれた大井さんは、早大政経学部卒、コロンビア大学院、パリ大学院で政治学を研究、近著は『欧州の国際関係 1919-1946 フランス外交の視角から』(たちばな出版 12,000円)。1,200ページ、厚さ6cm、重さ1.2kgの文字通りの大著です。いま、苦労して読んでます。


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